【完結済み】番(つがい)と言われましたが、冒険者として精進してます。

BBやっこ

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II-a 王都に向う旅

ロードへの認識

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セリにとってロードはどういう位置付けか?

ロードに意識がいかなかったのは、
つがいという聞き慣れない表現だったからだ。

セリは、“お手が付いた”という認識だった。

ちょっと気に入って支援をしてくれるが、飽きたら忘れるだろう。と
本気にとっていなかったが正しい。
これは貴族の感覚からきている。

両親との関わりも薄く、メイドの井戸端会議を聴いていて思考が育った。
そして受けた教育は、“女は家の道具”。
この言葉に、嫡男もだろうと自分も道具だと思っていた。

嫁、夫婦というものが、
お話、空想、幻想。
“自分の現実じゃない”と無意識に分けていた。

よくて、
愛人みたいなもの

そう意識されていたのだとロードが知ったら大変だっただろう。
おそらく、出立できていなかったとだけ記しておく。


「よ、嫁?おおお、女??これが!」
気づかない馬鹿はいるのね。
リリーはカウンター内で安全に喧騒を見ていた。

セリは、まるっきり自分のことを秘密にしているわけじゃなかった。
あの顔だし、体格も男にしては細身。察する者、確信のある者もいた。

嫁かあ。セリの反応が気になったので
すすすっと表情が見える角度に移動した。



セリはここに来て1番感情が出ていた。表情を察せないように
貴族の嗜みが身についていたのに…。

カァっと頬が熱くなる。
激しく動揺していた。リリーが言う、女の子の顔。
(ヨメ・・夜目?………お嫁さん。)思考がそれだけに集約され、慌てた。
周囲の警戒を忘れていても、安全圏内にいる。そのせいもあって、心の余裕を得ていた

のには気づかない。それどころじゃない。これって??


その変化にポカンとした男どもとは反対に、

「女のなり損ないなんてほっといて~、わたしとお…」

女側は好機と捉えた。女の武器が使える相手と判断して、
ロードの腕に手をかけようとしたところで、止まった。

凍ったように
蒼白で固まった表情と体。

ヒュオっと冷気を感じられたのは、気のせいではない。
そんな温度とは関係なく、腕の中の人物は冷静になろうとしていた。

冷気の発生源は甘くつがい、いや嫁を瞳に入れていた。
ちゃんとセリの表情が他に見られないよう、すでに抱き込んでいる。

とりあえず堪能し終わったのか、周りの置物が目障りだったのか。
サッサと移動してギルドを出ていった。
何事もなかったように。

後には、動かない2組の冒険者が突っ立っていたのだが。



番の排除をしようなんて、終わったな。カナンは、
ギルドを出るとき
チラリと2組の冒険者を見た。

後片付けは職員がやってくれるだろう。
こちらは手を出していないし、勧誘も自由。もちろん断るのも。

流石にここで存在を消すのは止めるが、あの殺気は“身が凍る”ほどだ。
体が恐怖を覚えた。
あいつらが目の前に現れる事もないだろう。


獣人にとっては常識なんだが
これほどまでに突っかかってくるとはな。

男どもの方に1人、獣人のやつがいて最初の方から固まってたが。
ロードの冷気、番への危害は死につながるってわかってたようだ。

最後の方、足がガクガクだった。
他はわかっていないな。オレもだろうか?

“番を冒険させる”

同じ獣人だと簡単だと思えることが、
思わぬところで違うものだと分かった。


ロードの過保護具合が、セリの危険につながる可能性。
そこら辺をシュルトと話してみないとな~と思考を巡らせていた。



(可愛いいワ)
ロードの後ろ姿を透かすように、セリのことを考えた。

感情が出ないタイプという認識を変えようと思った。
上手く感情が出せないのだ。

制御しているのが貴族を彷彿としたが
もっと子どもらしい感情が埋もれていた。

その一端を見て彼女の魅力を見た。


“磨き甲斐のある女の子”

この高ランク冒険者が出資者として素材の持ち込み、オーダーもするだろう。
高級素材、珍品、番が気に入ったもの。

そうやって番のものを集める竜人は多い。
収集癖と呼ばれる金に糸目をつけないタイプの買い物。

その逆もあって、気に入らないものの消去もあると聞くけど。
ワタシは、何をしようかしラ?

職人の技術、新しい物の情報、セリの好み
と色々あるだけ貴重な経験ができるだろう。利益にもなりそうだ。

それらをセリのためにあつらえる。
それを見た、聞いた人間が買いたい、作りたいと言い出すだろう。

そうなる確信があった。商人としての嗅覚に近い。
自分の手で良いものを伝えられる。ロードならセリのために使いたいと言えば、
ダンジョンボスの素材も狩ってきそうだ。

色々作ったり試したりできそうな幅が広がる。


楽しくなりそうなことにルンルンだった。

ロードがセリを抱えているので、ここから距離がある商業ギルドへ
サクサク歩いて向かった。
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