11 / 200
I 育った町で冒険者
帰還
しおりを挟む
夜だ。
だが、ギルドは煌々と明るい。
冒険者となって教会に帰っていたと思っていたが、
いつの間にか、ギルドの明かりをみても帰ってきたという気持ちになる。
依頼の終了の報告にカウンターへ行けば、
ギルドマスターの部屋に呼ばれた。
ー
「セリ!」
ギルドマスターに様子を伺われる。
冒険者登録をした当初から世話になっている人だ。
あまり会うことはないが、気にかけてくれる大人。
信用できる人だ。
「只今帰りました。」と丁寧にこたえた。
報告だけで終わると思ったのだが、何か用があったのか?
ギルドマスターはちらりとロードに目を向ける。
「依頼は終了だな?」(目線:もう終わったんなら、帰れ)
トラブルがあったから心配させたようだ。
そういえば、この部屋から拉致されたんだった。
依頼はちゃんとしてきましたよ?
とじっと見つめたら、頭を撫でられた。
まだ自分は子ども扱いなのだろうか。
と思わなくもないが。
ギルドマスターは見た目が実年齢より相当若いらしく、自分と同じ年頃のひ孫がいるって
噂がリリー(ギルドの採取カウンター職員)からの情報であった。
と思い返しているとロードが話し出す。
「いや。セリを『竜の翼」に勧誘したい」
「「‼︎?」」
セリは言葉が出なかった。
どこから勧誘なんて言葉が出たのか。
レベル差も能力も桁違いな自分を入れる利点が出てこない。
「理由を聞いても?」とギルドマスターが問う。
ギルドで勧誘は自由だが、レベル差があればパーティへの評価に関わる場合がある。
・・とは表向き。
セリをどうする気だ?と保護者の心持ちで訪ねた。
「うちに欲しいからだ。
セリ、来い。」
ものすごく、シンプルな言葉だった。
何か聞かなければと思考が焦る。
一緒に来ていたシュルトが口を出す。
「ロード。もう少し説明しなさい。
セリ。うちの勧誘は、ロードの決定が大きいの。もう一つはパーティに参加して、
依頼を受けるってところかしら。あなたは両方、クリアしてる。」
パーティの決定の方法はそれぞれだと思うが、『竜の翼』はリーダーの決定が大きいのか。
「自分はDランク。ダンジョンの攻略の経験も『森のダンジョン』だけ。
他のメンバーが認めないと思う」
思いついた第三者目線だと、お荷物が必要か?いらないと思う。
「問題ない。皆、了承してる」
「!?
いつの間にそんな話に?」とセリが言えば、考える素振りで
「会った最初から、だな」とロードが軽く言った。
シュルトが言葉を継いで、
「補足すると、前から宣言してたのよ。“番と冒険したい”ってね」
番認定
一目惚れされたと、犬に噛まれたくらいに(正確には肉食獣に比喩的に食べられたけど)
思えばいいと、受け入れていたのだが。
ここでソレを出すか。
なんて言って良いかわかなかった。
混乱するまま思考を巡らせていると。
「あー、話の途中で悪いが、セリ。」ギルドマスターが話はじめる。
「悪い知らせがある」と言い聞かせるように言う。
逃げ出したい気分になったが、正解だった。
「アチラに動きがあった。早くこの町を
出た方が良い。」
聞きたくなかった言葉だった。
ーーー
動揺が出てしまったかもしれない。
小さい頃の教育で
ポーカーフェイスを植え付けられている。
それでも、何年か経っても
表情はなかなか動かなかった。
それでも、心のうちを透かし見られないよう
振舞ってきたと自負している。
恐れている。
心の底から。
冒険者として死ぬと想像するより、
怖いものとして認識しているようだった。
今、自分はどんな顔をしているだろうか?
ギルドマスターは静かに待っている。
「・・出て行きます。ここを」
酷くつっかえたような、つなぎ合わせた言葉が落ちた。
ここを追い出されるんじゃない。
アチラに動きがあれば、出て行くと決めていたんだ。
それが、来ただけだ。
と頭の中で説得しても
気持ちがついてきていない。
呼吸が浅い気がする。
鼻がツンとして目が潤う。
グッと奥歯を噛み締めた。
早くしないと。
と、自分が返答していない方へ目を向けた。
出て行くのに1人は難しい。
だが、そうそう手を取って良いのだろうか。
出自を話す必要性が出てくる。
その降りかかる火の粉が迷惑でしかないだろう。
自分は不安な顔をしているかもしれない。
彼らにバレるだろうか。
迷子になったような、泣きそうな心持ちを。
「俺はセリを離すつもりはない」
と頰に触れた手は、剣だこで硬い冒険者の手。
「……一緒に連れてって。」と掠れた声に
自分を番だと言う男は、笑った。
町を出て冒険の旅へ
育った町で冒険者の終わり
だが、ギルドは煌々と明るい。
冒険者となって教会に帰っていたと思っていたが、
いつの間にか、ギルドの明かりをみても帰ってきたという気持ちになる。
依頼の終了の報告にカウンターへ行けば、
ギルドマスターの部屋に呼ばれた。
ー
「セリ!」
ギルドマスターに様子を伺われる。
冒険者登録をした当初から世話になっている人だ。
あまり会うことはないが、気にかけてくれる大人。
信用できる人だ。
「只今帰りました。」と丁寧にこたえた。
報告だけで終わると思ったのだが、何か用があったのか?
ギルドマスターはちらりとロードに目を向ける。
「依頼は終了だな?」(目線:もう終わったんなら、帰れ)
トラブルがあったから心配させたようだ。
そういえば、この部屋から拉致されたんだった。
依頼はちゃんとしてきましたよ?
とじっと見つめたら、頭を撫でられた。
まだ自分は子ども扱いなのだろうか。
と思わなくもないが。
ギルドマスターは見た目が実年齢より相当若いらしく、自分と同じ年頃のひ孫がいるって
噂がリリー(ギルドの採取カウンター職員)からの情報であった。
と思い返しているとロードが話し出す。
「いや。セリを『竜の翼」に勧誘したい」
「「‼︎?」」
セリは言葉が出なかった。
どこから勧誘なんて言葉が出たのか。
レベル差も能力も桁違いな自分を入れる利点が出てこない。
「理由を聞いても?」とギルドマスターが問う。
ギルドで勧誘は自由だが、レベル差があればパーティへの評価に関わる場合がある。
・・とは表向き。
セリをどうする気だ?と保護者の心持ちで訪ねた。
「うちに欲しいからだ。
セリ、来い。」
ものすごく、シンプルな言葉だった。
何か聞かなければと思考が焦る。
一緒に来ていたシュルトが口を出す。
「ロード。もう少し説明しなさい。
セリ。うちの勧誘は、ロードの決定が大きいの。もう一つはパーティに参加して、
依頼を受けるってところかしら。あなたは両方、クリアしてる。」
パーティの決定の方法はそれぞれだと思うが、『竜の翼』はリーダーの決定が大きいのか。
「自分はDランク。ダンジョンの攻略の経験も『森のダンジョン』だけ。
他のメンバーが認めないと思う」
思いついた第三者目線だと、お荷物が必要か?いらないと思う。
「問題ない。皆、了承してる」
「!?
いつの間にそんな話に?」とセリが言えば、考える素振りで
「会った最初から、だな」とロードが軽く言った。
シュルトが言葉を継いで、
「補足すると、前から宣言してたのよ。“番と冒険したい”ってね」
番認定
一目惚れされたと、犬に噛まれたくらいに(正確には肉食獣に比喩的に食べられたけど)
思えばいいと、受け入れていたのだが。
ここでソレを出すか。
なんて言って良いかわかなかった。
混乱するまま思考を巡らせていると。
「あー、話の途中で悪いが、セリ。」ギルドマスターが話はじめる。
「悪い知らせがある」と言い聞かせるように言う。
逃げ出したい気分になったが、正解だった。
「アチラに動きがあった。早くこの町を
出た方が良い。」
聞きたくなかった言葉だった。
ーーー
動揺が出てしまったかもしれない。
小さい頃の教育で
ポーカーフェイスを植え付けられている。
それでも、何年か経っても
表情はなかなか動かなかった。
それでも、心のうちを透かし見られないよう
振舞ってきたと自負している。
恐れている。
心の底から。
冒険者として死ぬと想像するより、
怖いものとして認識しているようだった。
今、自分はどんな顔をしているだろうか?
ギルドマスターは静かに待っている。
「・・出て行きます。ここを」
酷くつっかえたような、つなぎ合わせた言葉が落ちた。
ここを追い出されるんじゃない。
アチラに動きがあれば、出て行くと決めていたんだ。
それが、来ただけだ。
と頭の中で説得しても
気持ちがついてきていない。
呼吸が浅い気がする。
鼻がツンとして目が潤う。
グッと奥歯を噛み締めた。
早くしないと。
と、自分が返答していない方へ目を向けた。
出て行くのに1人は難しい。
だが、そうそう手を取って良いのだろうか。
出自を話す必要性が出てくる。
その降りかかる火の粉が迷惑でしかないだろう。
自分は不安な顔をしているかもしれない。
彼らにバレるだろうか。
迷子になったような、泣きそうな心持ちを。
「俺はセリを離すつもりはない」
と頰に触れた手は、剣だこで硬い冒険者の手。
「……一緒に連れてって。」と掠れた声に
自分を番だと言う男は、笑った。
町を出て冒険の旅へ
育った町で冒険者の終わり
13
お気に入りに追加
642
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる