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I 育った町で冒険者
1日目
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早朝、ゴトゴトと音を立てて馬が進む。
冒険者パーティ『竜の翼』一行は、馬車の中で朝食を食べていた。
セリも朝食を頂いていた。
ある男の膝の上で。
「ほら飲め」とロードが飲み物を渡してくる
セリが受け取るも手を離さないので、そのまま飲んだ。
ロードがセリに、ふにゃりというように笑いかけた。
「ふやけきってる…。」と引き気味に言ったのはキース。
「まあネェ~」と含みを持たせてジト目で黙ったのはシュルトだった。
グスタフは馬車を操っている。
後ろを警戒していたカナンが話に加わってきた。
「まだまだマシな方だぜぇー、番っていうのは溺愛するもんだからな!」と楽しそうに言った。
「溺愛って何?」と膝の上からセリが聞いた。
キョトンといった風情だ。少々の間があってから3人は端的に返答した。
「溺れるくらい愛す?」
「べったり離れない重いヤツ」
「・・構い倒される」
キース、シュルト、カナンの解答だ。
疑問符がついてよくわかっていないキース。
何が重いのか遠い目のシュルト。
初めて真顔なカナンだった。
そんな答えを聞いてもわかっていないセリだった。
原因は、恋愛のれの字も関わっていないからだ。
単独の冒険者としてスキを見せない生活
恋愛にうつつを抜かすなんてなり様もなく、
恋愛とは、空想上の関わりないものと認識されていたのだ。
「溺愛でも足りないな。」とロードが言ってセリの頬にキスした。
そうした行動もセリにとっては挨拶の延長ぐらいの認識。
思いに隔たりがあるのが周りにもわかってきた。
ーー
馬車内には少し間延びした空気があったが、外は朝日が明るく出てきていた。
馬車を結界の中に置き、気を引き締めて森のダンジョンへ入っていく。
暗くなっていく洞窟に「ライト」とキースが魔法を使った。
ライトの魔法で丸い光源が宙に浮いた。
光源が揺らがず、明るいので先見するのに助かる。
魔力も消費するから、レベルが低いと長く持たないのだが。
そんな心配はいらないようだ。
「ボクの魔法なんだから。」と言っていた。
セリが案内と斥候で先に立つ。
覚えているトラップと予兆を見逃さず
よく来ている道を進んだ。
魔物はスライムが横道から出ただけで
カナンが処理してくれる。
1、2、3階層。順調に最短距離を進んだ。
危なげない様子にスピードを上げることにする。
4、5、6階と虫の魔物と戦闘になったが、
一刀両断。
頭をしっかり潰して(復活するため)
サクサクと進む。
役割、無駄のない動きと連携は心地よいほどだった。
レベルと経験の差を歴然と感じる。
素材は特にいらないのでドロップ品は落ちたままだ。
『虫の魔物は金にならない』と言われるほど需要が少ない。
「セリ、疲れてないか?」とロードが声をかける。
セリは大丈夫の意味で、首を縦に振る。
ライトの魔法で見やすく、カナンが魔物の接近を察知して知らせてくれる。
後ろはひとかたまりで油断なく移動するので
気が散らない。案内人として気を配る必要性が少ないと、
斥候として前に集中できた。
そのおかげで、疲れていない。
「よし、行くか!」と再び進み、
7、8、9階層を進み、10階層のボス部屋に来た。
昼を大幅に過ぎた頃だろうか。
予定より早くボス部屋にたどり着いた。
小休憩をいれ、ささっと食事をした。
ハーブ水が
冷えていて美味しい。と感動していると
「これ回復効果が少しあるから備えてあるのヨ」とシュルトが教えてくれる
「ポーションほどじゃないけど、便利な点もあるよね、これ」キースも気に入っている様子。
「食事に合うもんなぁ」とカナンが相槌を打った。
「気に入ったか?起きた時に飲めるように備えてあるのと同じものだ。」と嬉しそうに言う。
喉が痛い朝にロードの部屋で飲んだものだと思い出してちょっと複雑な気分になった。
・・その前のことは思い出さない。
補給が終わり、ボス部屋へ
「俺とグスタフで行くか。
コクリとグスタフが頷き、魔道具から弓を出した。アーチャーなのかな。
ロードがいつのまにか出した大剣の感触を確かめている。
「オシ!サクッと終わらすか。」
との言葉通り2人で仕留めた。
オスメスを大剣でなぎ払い、子たちが出る前に
弓で額部分を撃ち抜いて絶命させた。
卵がぐしゃりと嫌な音がしたが、燃やすのが定石のため
素早く、収納していた使用済みの料理用油で燃やすらしい。捨てそびれてたって。
宝箱を確認して
麻痺消し薬(低級)を手に入れて、
ダンジョンのフィールドへ降りていった。
ーーー
斥候の交代だ。
盾を持つカナンの後ろ。セリはその後ろを一歩下がってついていく。
11、12と順調に進んだが、
13階層で
レンガの色の配置が違うと気づき、歩みを一旦、止めた。
覚え書きをめくって確認する
「最短距離があいている。」
運が良い。
「飛び矢の罠に注意すれば、予定のルートより速くいける」
そちらにルートを変えた。
矢の罠は予想された箇所でカナンが盾で防ぐ。
再起動しないうちに進んだ。
14層から少しずつ休みも入れ、地図の通りに進んだ。
思った以上に早く20階のボス部屋前まで着いた。
最速記録だなと考えて
もう夜だろう時刻で
ボス部屋の前で食事をして休むことになった。
明日は、ボスの攻略からだ。
冒険者パーティ『竜の翼』一行は、馬車の中で朝食を食べていた。
セリも朝食を頂いていた。
ある男の膝の上で。
「ほら飲め」とロードが飲み物を渡してくる
セリが受け取るも手を離さないので、そのまま飲んだ。
ロードがセリに、ふにゃりというように笑いかけた。
「ふやけきってる…。」と引き気味に言ったのはキース。
「まあネェ~」と含みを持たせてジト目で黙ったのはシュルトだった。
グスタフは馬車を操っている。
後ろを警戒していたカナンが話に加わってきた。
「まだまだマシな方だぜぇー、番っていうのは溺愛するもんだからな!」と楽しそうに言った。
「溺愛って何?」と膝の上からセリが聞いた。
キョトンといった風情だ。少々の間があってから3人は端的に返答した。
「溺れるくらい愛す?」
「べったり離れない重いヤツ」
「・・構い倒される」
キース、シュルト、カナンの解答だ。
疑問符がついてよくわかっていないキース。
何が重いのか遠い目のシュルト。
初めて真顔なカナンだった。
そんな答えを聞いてもわかっていないセリだった。
原因は、恋愛のれの字も関わっていないからだ。
単独の冒険者としてスキを見せない生活
恋愛にうつつを抜かすなんてなり様もなく、
恋愛とは、空想上の関わりないものと認識されていたのだ。
「溺愛でも足りないな。」とロードが言ってセリの頬にキスした。
そうした行動もセリにとっては挨拶の延長ぐらいの認識。
思いに隔たりがあるのが周りにもわかってきた。
ーー
馬車内には少し間延びした空気があったが、外は朝日が明るく出てきていた。
馬車を結界の中に置き、気を引き締めて森のダンジョンへ入っていく。
暗くなっていく洞窟に「ライト」とキースが魔法を使った。
ライトの魔法で丸い光源が宙に浮いた。
光源が揺らがず、明るいので先見するのに助かる。
魔力も消費するから、レベルが低いと長く持たないのだが。
そんな心配はいらないようだ。
「ボクの魔法なんだから。」と言っていた。
セリが案内と斥候で先に立つ。
覚えているトラップと予兆を見逃さず
よく来ている道を進んだ。
魔物はスライムが横道から出ただけで
カナンが処理してくれる。
1、2、3階層。順調に最短距離を進んだ。
危なげない様子にスピードを上げることにする。
4、5、6階と虫の魔物と戦闘になったが、
一刀両断。
頭をしっかり潰して(復活するため)
サクサクと進む。
役割、無駄のない動きと連携は心地よいほどだった。
レベルと経験の差を歴然と感じる。
素材は特にいらないのでドロップ品は落ちたままだ。
『虫の魔物は金にならない』と言われるほど需要が少ない。
「セリ、疲れてないか?」とロードが声をかける。
セリは大丈夫の意味で、首を縦に振る。
ライトの魔法で見やすく、カナンが魔物の接近を察知して知らせてくれる。
後ろはひとかたまりで油断なく移動するので
気が散らない。案内人として気を配る必要性が少ないと、
斥候として前に集中できた。
そのおかげで、疲れていない。
「よし、行くか!」と再び進み、
7、8、9階層を進み、10階層のボス部屋に来た。
昼を大幅に過ぎた頃だろうか。
予定より早くボス部屋にたどり着いた。
小休憩をいれ、ささっと食事をした。
ハーブ水が
冷えていて美味しい。と感動していると
「これ回復効果が少しあるから備えてあるのヨ」とシュルトが教えてくれる
「ポーションほどじゃないけど、便利な点もあるよね、これ」キースも気に入っている様子。
「食事に合うもんなぁ」とカナンが相槌を打った。
「気に入ったか?起きた時に飲めるように備えてあるのと同じものだ。」と嬉しそうに言う。
喉が痛い朝にロードの部屋で飲んだものだと思い出してちょっと複雑な気分になった。
・・その前のことは思い出さない。
補給が終わり、ボス部屋へ
「俺とグスタフで行くか。
コクリとグスタフが頷き、魔道具から弓を出した。アーチャーなのかな。
ロードがいつのまにか出した大剣の感触を確かめている。
「オシ!サクッと終わらすか。」
との言葉通り2人で仕留めた。
オスメスを大剣でなぎ払い、子たちが出る前に
弓で額部分を撃ち抜いて絶命させた。
卵がぐしゃりと嫌な音がしたが、燃やすのが定石のため
素早く、収納していた使用済みの料理用油で燃やすらしい。捨てそびれてたって。
宝箱を確認して
麻痺消し薬(低級)を手に入れて、
ダンジョンのフィールドへ降りていった。
ーーー
斥候の交代だ。
盾を持つカナンの後ろ。セリはその後ろを一歩下がってついていく。
11、12と順調に進んだが、
13階層で
レンガの色の配置が違うと気づき、歩みを一旦、止めた。
覚え書きをめくって確認する
「最短距離があいている。」
運が良い。
「飛び矢の罠に注意すれば、予定のルートより速くいける」
そちらにルートを変えた。
矢の罠は予想された箇所でカナンが盾で防ぐ。
再起動しないうちに進んだ。
14層から少しずつ休みも入れ、地図の通りに進んだ。
思った以上に早く20階のボス部屋前まで着いた。
最速記録だなと考えて
もう夜だろう時刻で
ボス部屋の前で食事をして休むことになった。
明日は、ボスの攻略からだ。
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