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新章

2-①

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「呼吸はできていますから。この条件下、肺が水で満たされている状況で活動的になっていますが、酸欠は起こしていません。」
機械類が映り、ネズミは元気に足を動かしている。満たされたグラスの中では泳げる範囲はないが、立ち泳ぎのように足は水中を掻いている。ネズミが水中で過ごす、少々不思議な光景だけど、何故この動画を見せられているのか?

「これが、私とどう関係するんですか?」

再び、書類に視線が戻される。座席がリクライニングシートのように倒せるらしいが、ゲーミングチェアのように背を包み込んでいた。

「このカプセルに入り、眠りについた後です。ポーション液でカプセルが満たされ、生命維持されつつ体の保護が行われるのです。」

寝顔を見られる事になるなと至極どうでも良い事が頭を掠める。それよりも、だ。
私は、このネズミにように水中でもがくことになるんだろうか?安全ですと言葉にされても、すごく不安になった。

「以前見ていただいた通り、何十人もの職員があちらの世界へダイブしています。」
ゲームの世界へ行く、ダイブ、飛び込むと言っているらしい。

思い出すのは無数のカプセルが並べられている光景。全てに人が入っていたなら、うちの社内の全員が入れるくらいかな。ああ、今はもう異動したんだった。とにかく、カプセルホテルなら十分に広く大人数の収容ができる部類だ。

「意識のダイブをした後で、水が満たされる事になるので特殊な訓練は必要ありませんし、健康診断も医療的な支援をスムーズにするためのものです。」
私がする事は受け身に指示に従っていけな良いらしい。正直、どう気持ちを持っていって良いか分からない。

「海外旅行へ行くと思って気楽にしてください。」
ああ、不安が顔に出ているかな。
「私、少し疲れやすい体質で。」

「そうですか、医師免許を持ったカウンセラーもおります。この後、面会を申請するのでそこで相談してください。」
専門家もいるのか。私は、環境がガラッと変わるとストレスが強く出てしまう。精神的な疲れは分かりずらくって無理をしてしまうけど。今の変化はまだ振り幅は大きくないと思いつつ不安だ。

相談できるなら、しておこうかな。メンタルクリニックの通院した時期もあった。専門家に無理だと判断されれば、この話も無くなるだろうし。

まあ、任せてしまおうと少し投げやりな気もする決意をして。私はここの施設を案内される。今のところ、どんな暮らしぶりになるか想像がつかなかった。
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