【長編・完結】300歳エルフは、まだ森には帰りませんよ。 〜目まぐるしく過ぎた日々と、お茶を飲むひと時を。〜

BBやっこ

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報告書

17-②

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「ありがとう、お茶のおかげでよく眠れたよ」

年相応の子供の笑顔で、嬉しそうにした。

「可愛いな」
「あんま近づくな。」

頭を撫でて褒めていたら(良い年齢だった筈!)竜人に掻っ攫われてしまった。

「挨拶くらいさせなさい。ふぅ、いつもこんな調子か?」

近くの狼獣人の護衛は、どうしようもないという風に頷いた。私は獣人のツガイの起こした問題は知っているが、その理解はできない。

(エルフでは、見合い婚が一般的だからな。)

エルフは少なく、相手を見つけに行っても寿命が合わず死別。その後また結婚する者もいる。長寿のエルフだからある感覚なんだろうか?独身を貫くという決心も、時間と共に風化する。その良し悪しは論じても無意味だ。

「ツガイに他の男が近づくと、喧嘩になるとは訊くが。こうもベッタリだと、交流もできないな?」

少し離すこともしないと、子供の成長に悪そうだ。

「しかしすぐ離すのも、竜人側の反動が怖いな。」
(どうするか。様子見と、少しずつ試すしかないか)

考え込んでいると、商人から声をかけられた。

「ドウイウ方針なの?」
「色んな経験をさせてやりたい。」

子供の方より、竜人の面倒を見なければならないのかもな、と認識を改めた。

(まあ贅沢な悩みだ。)
城はここのところ、平穏だ。雪が溶けるような陽射しの日も多くなった。
この城を出る日もそう遠くない。そうなれば、任期を終える。

ただ、緩やかな変化は起きていた。

「竜人が研究者と話?意外だな。ツガイのためなら何でも頑張れるらしい。」
微笑ましいという言葉を口にはしなかった。

あの年頃を素直に褒めると、嫌がるからな。経験済みだ。どうも年齢の感覚というのが分からないが、男の方がシャイな事も多いらしい。

「褒めて可愛い年齢は、すぐ過ぎてしまうなあ」
「裏がないなら、多少良いんじゃない?」

そう言ったかつての教え子を久しぶりに褒めるも、なおざりな返事だった。褒めるのは、不評のようだ。

「若いなあ」
「エルフにとっては全員、子供扱いなんだね?」

やれやれと言う仕草も、背伸びしているように感じる。

「老齢と感じる年齢ッテ、どの程度ナノ?」
「400歳くらいか?ドワーフは仕事の自信で大きくなるが。」

「桁が違う。」
ツガイの子供が、驚いて固まっている。色んな反応が見れるようになったな
体重も健康的に増えている。

仕事を終えて、成長に感謝して酒を飲む。

そうだ、甘味を増やそう。ツガイの子供が喜べば、竜人も喜ぶ。ただ、贈り物の邪魔をしないような品選びをしないとな。

どちらにしろ、商人を通すから、被らないようにできるだろう。
機嫌良く食事も進んだ、私はこれからもよく夕食に来るようになる。
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