【長編・完結】300歳エルフは、まだ森には帰りませんよ。 〜目まぐるしく過ぎた日々と、お茶を飲むひと時を。〜

BBやっこ

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報告書

16-①

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「ああ、こんなところに紛れ込んでいたか。」

魔法で火を出して。さっとメモを処分する。

『火魔法でやらないでくださいよ!』と文句を言われた。

外界と隔絶された城は集団での、期間限定とはいえ。城を治める上の方も一枚岩ではない。

「その事で、被害を被った子に再び災禍が訪れないように。守る」

口さがない者に根拠を突きつけ、注意を勧告を。

「暇なのか。勝手なコトを言うものヨネ」

独特の口調で喋る。商人になってからの、シツコイ誘いを断るために作った口調だったらしいが。もう癖なのだろう。

「ご苦労だった」
「これくらいなら仕事の範囲ヨ、手間賃も貰っているモノ」

メモ紙片が机に置かれる。

『情報は商人の武器』

商人が頼まれたり、狙いがあって噂を流す事もある。今回の依頼は、情報を拾ってもらった。囁く内容、伝わり方で誰がその背後に居るか見える。

“竜人に関わる話”

「ワタシは商売相手として会っているから、まあ多少は耐性があるのヨ。獣人より、感性もないカラ。」

竜人への恐怖は本能的なモノ。存在感と圧を感じとる。無視できない感覚なのは獣人は強く感じる。人族はそうでもないのだろうが。

あの冒険者の体格に圧を感じる人族も多いらしい。そこは獣人もだな。
(それにしても…嫉妬で危害を加えるのは、どの種族にもあるか。)

集団心理は目立った者に対していたぶる、上位とみた者の足を引っ張るために爪弾く。

集団で暮らし、背景の違う者が少数派しかも目立った戦果を上げた。

竜人は、どうしても目立つからな。それに、依頼として受けてくれただけだ。その分、避けになるのは当然だ。行動して結果を出した者へ、送られて物が避難をとどかないように。

「こちらで受け持つのが筋だ。動いてくれ」

情報部を動かし、城内の掌握に移る。これくらいの腹芸はこなさないとな?私にも動かせる人材がいる。フル活用してあの子を守る事が、この城を守る事にも繋がる。

子供を守れない大人で居たくないのかもな。

「『まあ、優しい方なんじゃない?』と言われそうだが、エゲツない程やり過ぎても反感を買うだけだからなあ」

「ソウネ、売られた喧嘩は高値で買い叩くワ」

こういう気性がないと、商人などやってられないだろうな。見た目は華美に、基本的な行動原理は商人だが、面倒見の良い立派な人間に育ってくれた。

感慨深い。私の手配りは終わった。

「私の方は。結果を待つだけだ。ああ、何か甘味を買うか。」

今度は何にしようか。酒を差し入れるか?商人の提案を聴きながら、珍しく晴れた空を眺めた。
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