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報告書

15-③

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「危険か」
退避も考える。見えないから余計に、疑念を持たれるだろうな。

(どう伝わるのか?)

研究者とともにもう1人を巻き込み、思案する。私の悩みに明快な答えを出したのは、紅茶を飲んでいる貴人であった。

「出てみれば?兵士の、“実際に見た報告”を無視しないでしょ」
「確かに、そうだろうな。」

騎士、兵士も上からの命令系統を重視する。報告内容が、自身の仲間からもたらされたものであれば信におけるか。

雪中の行軍と勇足への抑えられる者を選出する。できれば竜人と他の選出メンバーに敵愾心が無い者が望ましい。

「問題は加減だな」

撤退準備に乗せ、上の者を集めて他の手段も進めたい。

「私は会議に。」
「即時、薬師を集めてほしい。薬剤の散布で魔木に対抗できる可能性を探りたい。」

「分かった緊急招集をしよう。」
魔木が成長すれば、魔物の暴走を起こす。その規模は、昔にここら辺一帯を飲み込んだと伝えられる『全てを飲み込んだ大波』であったとしたら。

(この城も、生き残れない。)
地下へ逃げても、食糧が持つか?飲み込まれるほどの雪に、支援はいつ届くだろうか。助けられるまで、耐えられるか。かなり“分の悪い賭け”になってしまう。

危機を知ったからには、即急に動く。

残る騎士・兵士からは不満が出るだろう。だがそれに構っていられない。
全てを救う事になるからだ。その力を持っていると確信できるメンバーを選んだ。

小さな子供を戦いの地となる危険へ送りてしまう自身の嫌悪は酷いが、最大限の選択だった。同じ事が起こっても、今回と同じ決定をした。

最善の手段。そして、最大の結果に導いてくれた。

北の砦を拠点に据えられ、初期の段階で魔木を発見した。
試薬であったが、対処できる方法を持っていた。
現場に居た少数メンバーによって、処理が完了した。

『結果、<極北の城>では危険を感じる事なく、魔木による魔物の暴走の序盤で閉幕したのだった。』

まだ、私への危機が終わってないがなあ。

研究者としてのまとめ、騎士と兵士を動かした行動履歴。その妥当性。
今後の対応策と危機の察知による緊急避難方法。嫌になる程、書類が待っている!

「まだまだあるぞぉ~」

平和の代償としては、とても良い結末だ。文句無い。その流れで、緊急事態を回避できた証拠に私の仕事は山盛りになった。それも巡り合わせ、か。


「そうだ、食事に行こう。」

最近、よく行く竜人の部屋で集まって美味い飯と酒、愚痴を吐いて研究の話をしよう。今の私の憩いの場にもなっている。

(子供達も可愛いし、オット!こう言うと嫌がるんだったな?)

うまい酒を飲み交わせ、癒されることにしよう。それくらい許してくれ。
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