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報告書

15-②

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ツガイの子供の知識。
体の動き、狩りの能力、あの子の知っていた事。


それに少し安堵する。
「あの子に厳しいだけではなかった。生き残って欲しいと手を教えを託した者もいた。」

愛されることを知っている。竜人のツガイとして、重い愛を受け入れる定めになってしまった。

(その点は、周りのフォローが必要だな。)

「北か。」
「直接の調査で見たが、風、川の影響も考えられる。」

あの子の知っていた植物、その採取ポイントからの予測を地図に記した。かなり北だ。過去確認した事がある町とも遠い。

「新しく村や町ができたとは、考え難いなあ。」

あちらにとっては、敵対国らしい。細々と住民同士で、人族も獣人も交易をしていた話はある。“人族至上主義”が台頭して、その均衡が崩れたのが昨今だ。

「打ち捨てられた建物は確認したが、避難場所として使われているだけのようだった。」

危険な森。木々と雪で隠れる、魔物も潜伏して襲ってくるのだ。それらを掻い潜るには、支援物資と休める拠点は必須。

「もし魔木が育っているのなら、特定は難しい。絞り込みの精度もこれ以上のデータは無いな」

風の記録、以前の報告をひっくり返して探した。古株の兵士から話を聞き出しても良い案は思いつかない。

「拠点があれば、調査もできるんだが」

地図を指でなぞる。
「どの場所なら、調査の拠点にできる?」」
「川沿いの仮設の拠点より北、もっと北は…。

この国で、北の土地は人族と衝突がある。戦力の違いもあり、小競り合いになっている。あちらの国は人族至上主義を掲げ出してから、もっと酷くなった。

獣人国は、向こうのちょっかいを防いでいる形だ。
(子供も巻き込んでいるのは許し難いがな)

教会で育って、冒険者になろうとしていたらしい。あの子が強制(断れないならそうだ)で連れていかれた場所。
「北の砦」

「あの子が居たと言っている場所か?」
「川を沿って下れば、移動も短縮できる。」

その場所の発見から始めるしかないか。

この作戦に、戦闘力は必須だ。また再び、大型の魔物が出たとしても撤退を選べるように。精鋭を。

「竜人に着いて行ける者は何人いるだろうか?」

それに、ここの守りを疎かにするわけにもいかない。まず依頼を受理してもらえるかも分からない。

なぜなら、大事なツガイを置いて城を出るなど考えないだろう。

それなら、交渉の持ってき方次第だろうか?あの子の居る城に、危険が及ぶとしたら。確実に竜人は動く。

「少々卑怯だが、行動してもらわねばならないな」

それをするのも私の役目だった。
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