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報告書

15-①

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「才を伸ばす環境が必要だ。不遇でも頭角を現す者もいるがそれも、師となる者や教本があった事だろう。」

(比較対象がなければ、現状に疑問を持てない。)
竜のツガイとなったあの子は、どんな環境に居たのだろう?この雪深い厳しい土地で生きてきた様子だ。

「知っていた植物は食用の物が多い、弱い毒性のあるものは調理で毒を弱めた。この調理法は薬学的な効果も見込めるな。」

煮込むからか?と聞くのはやめ、真面目に考える。薬草に生育の違いも出る、
形や薬用の差になるため、ここで研究されている。

薬草の生息に近く、育てられないなら採取を始めた“拠点”だった。それが研究拠点となり、魔導塔に認められて拡大。若手の薬師を受け入れ、今は兵士にもその基礎を教える。

報告は終わったので酒を出し、雑談へと移行する。

「この城が建てられる前の話だ。研究のために建てられた塔のが古い、らしい。
ドワーフ達が知っていた。」

「なるほど。地下の訓練場、あの技術と魔道具の拘りはドワーフ製か。」

大ジョッキで呑める。ドワーフと呑めるはそれだけで才能であると思う。酔わないなんだろう。ドワーフの祖父に似たのか。

(ペースを乱されないようにしないとな。)

「生育、魔素が溜まりやすい。魔木の活性化、魔物を呼び込む訳だな?」
「特定はできないが…。」

慎重に言葉にするのが好感が持てる、信頼できる。

「だが、無視できない。」

私も、風を調べた。何年か前の情報も加えてみると、確実に変化があった。同じ結論を得られた。

何かがいつ来るかと当てるのは難しい。それはもう占いの領域だ。それでも、来るのであるのなら、備えておかなければ。

周囲への説得が難しくても。

「放っておくという選択肢は無い。」

大型の魔物の討伐、その後にも任務となれば気持ちがついていかないか。
目に見える危険でも無い、見えない脅威。

「それこそ、根拠が弱い。」

会議に出すが、研究結果だけで動いてくれないか。

「兵士への教育も入れようか?」
「やめとけ、寝ちまうだけだ。」

(無理矢理に詰め込んでも、意味はないか。)

「実感できるまで進んでしまったら、それはもう脅威だ。」
「ああ、初期に気づいたタイミングで調査と応急手当てをするのが基本だ」

建築物の話だろうが、共通している。“壊れてからでは遅い”

この場合、魔木の成長によって魔物の目撃が増え、凶暴化する。どんどん集まり、手に負えなくなった集合体になれば。

「我々では防ぎきれない。」

この城から逃げ出す必要さえ考えられる。それも、非戦闘員を守りながら、雪と寒さの中で移動する。

脱落者が出るだろうな。その時、助けられるか?

魔物の大量発生が起これば、逃げに徹するほどの規模になり得る。その兆候を予測できたとしたら?

(例え、起こらなかったとしても、何もしないでいられるか?)





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