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報告書

9-③

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「[討伐報告]、やっと書き上がった!」

お疲れ様でしたと、お茶を出された。

「自身で討伐に行った方がこれほど疲れなかっただろうな。」

こんな軽口が言えるのも、件の魔物の討伐がなされたからだ。長期戦だった。

山のように会議をこなしても、魔物は消えてくれない。まず最初に書くべきは、魔物の特定だ。

“大型の猫型の魔物”

「これは間違いは無いのか」

「この爪、当て嵌まるのは他に居ません。特に、大きな個体です。」
「何故こんなところに?」

戸惑う気持ちも分かる。もっと南に住む魔物、この地には発見例が少ない。

(何かキッカケでこの地にやて来てしまったか)


「川向こうで、戦闘の痕跡があったと報告が来たが、大型の魔物かは判断できない。この辺りに生息する魔物という可能性も排除できないからだ。」

想定に魔物が近いて来ていないことを祈るばかりの雰囲気だ。

「最悪だ」

血の跡が多かったのも予想が付く、“獲物をもて遊んだ”。逃げる獲物を、悠々と狩ったのだろう。

「コイツなあ、足跡で分かりそうなものじゃないか?」

「我々調査隊が現地に着いた時には、雪で形跡が殆ど消えておりました。それに加えて、この魔物は木の上から襲いかかったのでしょう。足跡の痕跡は消え、鹿の魔物のもののみ発見できたのだと思います。」


「ご苦労だった。」報告が終わり、対応策を会議で考える。

「あっちは機動力がある。」
「こちらは雪で足を取られるが、木々を利用して上から攻撃してくるか」

「団体でいれば、散り散りに撹乱されるだろうなあ」

(決定打も思いつかんな。)

「火属性、刃を通さない毛皮。いまある魔導具では致命傷までかんか。」

一騎当千、大物でスッパリが理想の討伐方法だ。団体での討伐が強みの軍では、勝機が掴めない。

それは会議にでているお歴々にも分かっているだろう。

「考えられるのは、魔物避けの設置で城に近づかせない事でしょうか?」
「興味を惹かせない事を重視した方良いでしょう。?

「更に、爆薬や状態異常を狙った薬の用意を進めるのはいかがでしょうか?」

定石で無理なら、絡め手。薬師が集まる場所ならではの手段だ。それに魔物の事も正確に分かったら対応も取れる。

「それほど移動もしないだろう。狙われれば、執着するように追いかけてくる。肉に飢えた狩人を相手にするのか。分が悪い。」

魔物の方は、逃げにも転じられる地の利がある。

緊迫した会議だが、分かった事も多かった。特に、鳥の魔物のように城壁を越えてくるタイプである分、籠城は有効だ。

「我々はこの城の者を守るのが最大の役目だ!」

そのために、準備は抜かり無く行われた。
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