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5-③

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世界を巡る

冒険者として巡った世界は、広かった。

転移陣の存在は『世界が重なり合って隣り合うも、届かない位置にある。』
その道を作るのは妖精、精霊だ。

『ダンジョンにある宝箱というのは妖精の悪戯の延長線上である』という説もあった。実際に設置しているところを見た事例はないんだがな。

ダンジョンの不思議は全て解明される日がくるんだろうか?

魔力によって、転移魔法はあるがその運用方法は国が扱う。

界を渡るには、魔力の行き先が届かないらしい。今のところ不可能だ。

「ダンジョンの階層ならよく使うんだけどな。」

魔力の強度、質も関係して転移魔法を使える者は数人しかいない。それも大きな魔石を補助に使うなどして成功させている。

失敗したら?体が弾かれる、大きな魔力の塊が竜巻にように散って行く。

まあまあ危険だが、魔法として扱える分だけ危険は他の属性と同じだ。稀少性は段違いだが。

妖精族とは違う属性魔法を操る種族、竜人
獣人の中でも特異な2種族のもう一つ、狂乱をもたらす狼獣人

歴史上でも事件を起こしている種族の求める者。番<ツガイ>

妖精族も“一目惚れの相手”と訳してしまうが、それよりも強く衝動的に一緒に居たい相手らしい。


『獣達“原初の感覚”とは?』という説明があったが、それを証明する方法はない。
その分、出版された『竜人の花嫁』という本は、衝撃だったことだろう。

他所の種族、その生活ぶりを花嫁となった女性の視点から描かれている。
彼女は、“故郷に居る友人知人への手紙のように書いたらしい”と書き添えられていたな。

竜人の若い男、まだ番<ツガイ>を得ていない者に手習いを教えたらしい。

その情報は、未だ教本のように使われていると噂が流れていた。
行商から、ある翁の情報網だろう。

耳聡い事だ。

“エルフより長い耳を持っているのでは無いか”と言われるだけある。

情報が商品とはいえ、研究に関することを持ち込んでくる
もちつ持たれつの間柄は、いつからの事だったっけな。

(冒険者の時からだと~)

「アクレイオス様!」
「ああ、どうした?」

仕事の書類が溜まっている。
どうして書類というのは溜まるのか。

「ふぅ」

研究の論文に囲まれ、本を読んでいる方が良いかもな。

「あと少ししたら、研究の方に戻るか~」

それが何年後かという詳しい話には、10年、20年?50年後かもなとやはり私もエルフである。森に居た頃よりかはセカセカと暮らしていると思うのだが。


なかなかに、目まぐるしい暮らしに魔法も錆びつきそうだなと思った。

鍛錬するにしても、この書類を処理しなければ。

「灰にするなら速いのにな」
「やめてくださいね?」

ギルド職員に、真面目に怒られてしまった。

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