上 下
14 / 67

5-①

しおりを挟む
「そうか、こっちに入れておいたのか。」

探し物を朝から始めて陽が傾いた頃。やっと!目当ての本を掘り出した。これは、何処へも“出さない”。扱いにする、予定だ。

『人が知るには、世界は広すぎて理解には時間が足りない。』

そう書いたのは、エルフから天上人となった方の手記だった。<世界>の創造から、管理運用。こう書くと、城での組織運用など頭に思い描くが。

『<世界>の構造と歴史で言えば、その移り変わりに目を向ける必要があるだろう。
今を生き、次に繋ぐために。

この<世界>と精霊は、100年ほどの一生で伝達ミスがある。』

 「いつの時代も、か 」

勝者が歴史を記していけば、伝える部分を選ぶからな。それを修正していたら作業が終わらないだろうな。

エルフという種族の視点として、手記と歴史を残している。我々が見た歴史、その事実として。

「これは、国によっては“隠したい事”なのだろうが。」

国が興り、廃れる事があっても我々は傍観者であった。関わりを持つ者もいるが、個人としてだ。その時に命を落としても、報復や関わりは最低限のする。

不文律、掟と言えるものだろうか。森の主、篭り人と揶揄される種族故か。

その土地に住む精霊との記録も貴重な財産だ。彼らにとって、移ろう世界は景色のようなのかもしれない。

<魔素の巡りを感じ、循環する世界のその一部である事。>

そのひと時だけの交流を楽しみ、思い返し、忘れていくのだろう。

記憶を持っていられるのは、ヒトの一生分だけだ。記録であるなら、次へと渡す事ができる。自身の体験ではなくても、共鳴するものがある。私はそう信じている。

<世界>を識るには、天上人の存在が不可欠だろうか。世界を渡り歩ける旅する者でも無い限り、関わり合う事も無い存在。

(それでも確かに、居る。私は合間見えた事がある。)

私が会ったのは<世界>、知識の探究をする者。

姿を見た事はないが、交流のある方もいる。おそらくと言うが十中八九、そうだろう確信があった。

代替わり、人ではないのか?
元は人、エルフ、精霊だったのかも知れない。

何十年、何百年を遡れば理解できるのか?
そもそも、理解が及ぶ存在なのだろうか。

どう知ろうとするか?世界を形どるモノ、同じくするモノ。

それぞれが、異なる方法で<世界>に近づこうとしている。真に迫ろうと。


かつて崩壊した<塔>
天まで届き、地を掘り進めた。

何故かわかっていないが、崩壊をキッカケに分かれてしまったと伝え聞く。

ダンジョンが<世界>の記憶に留めていると言う。
そのカケラを集めて、理解しようとする者。

魔術だった頃まで遡り、新たな魔法を求める者。

探究者、冒険者はいつの時代も旅に出る。
新たな<世界>を望むのも<愚か者>と呼ばれる者は歩みを進めるのだ。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

まだまだ遊んでいたいので婚約破棄らしいです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:77

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:842

婚前交渉は命懸け

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:52

【完結】あなたは知らなくていいのです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:17,742pt お気に入り:3,803

愛していたのは私だけ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:41,032pt お気に入り:388

加護であり呪いのようで

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:6

本当に醜いのはあなたの方では?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:247

処理中です...