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2-①

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「世界の事を知りたい」

その思いを秘めて冒険者になり、各地を旅した。
ダンジョンに潜り、種族の伝承に触れ、[世界]を感じた。

仲間との別れ、突然の報せ。世界へと還るのを何回、見送った事か。
その度に強くなっていった問い。“この世界とは何だ?”

ダンジョンの宝、妖精と精霊の繋がり。転移陣と技術(スキル)、魔法使い。
繋がる世界と接している、どんな形なのか変化していき誰も全体像が掴めない。

それこそ、神でなければ分からないだろう。

そんな疑問を別の角度から、考える者と会った。[隠者]との接点を持つ若い才能。

“かつてあった魔術士とは違うモノ”

<妖精の使う魔素>、<精霊の術>は人には理解しきれない。けど近づける、覚えている・伝わっている技があれば…

『僕は実現させたい未来がある』

その力強い瞳を見て、(私は何のためにここに居るのだろう?)と強く思った。

旅の途中、私が産まれた森にも帰った。

そこから知った、“世界”の成り立ちと“天上人”と言われる存在。
エルフにもそうなった者がいる、という事実が記録されていた。

確実になれるものではないが、近いところに居る。知る事ができるのだから。
『目指しても良いし、巡る存在へと還るのを選ぶのも良い。』

“500歳を過ぎたエルフが、何処へと行くのか?”幼い頃にはぐらかされた謎の答えだった。
あまりにも長寿なエルフが、生に飽きてしまう話は聴いていた。

“その先”
(私はまだ、答えを持っていない。)
そこに到達できるかも、分からない。

500歳は遠いな。その折り返しの年齢(250歳)だったか、弟と会ったよ。
元気に森を巡っている。

何でも、親からの『嫁を取れ』口撃に、『精霊石を取ってくるから口出しするな!』と喧嘩したらしい。

やはり、ヤンチャな性格はそのままだった。

少し協力をして、情報を提供すると酒を土産に持ってきた。こう言う事ができる歳になったんだなと、感慨深い。

照れ臭いようで、向かい合って黙って酒を飲んだ。あの時間は貴重な物だった。確か、この出来事を両親への手紙で自慢した記憶がある。

私も忘れないうちに酒を持って帰郷しようとした。結局、酒を送っただけになったが。

「どうやってエルフの住む森に酒を送ったんだ?」

「冒険者を雇って、森に行ってもらった。」
「それは、難儀な依頼だな。」

「良い経験だったと言っていたから、問題ないだろう。森との相性も良く、滞在も楽しめたらしい。
『いつまでもいてくれ』と言われて、結局、長居したと言っていたな。」

薬草の研究が捗ったらしい。
「今度、研究結果を読もうとして、どこにしまっただろうか?」

もう一度取り寄せた方が、早く読める気がする。



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