【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ

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<王都拠点 編>

その裏で

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快適なテントの中寄り添って眠った。存外疲れていたようで、いつもの早朝に起きた筈が。

「まだ寝てていいぞ」

甘い言葉に、抗えきれなかった。数時間後…
「もう起こしても良いだろう?昼食わねえと腹減るってぇ~」

テントの外からの声。
まだ夢心地のセリは、優しく起こされる憧れがある。モフっとした毛皮にペロリと舐められて。
離れ難くて、身を寄せた先。まだ温かさを手放せない。

ようやく起きたセリが、二度寝して起きたのが昼だった。
「寝過ごしちゃった。」

どうしよう?と泣きそうだった。2人がかりで宥められてキッチンへ。
「よく寝られた?」

「寝過ぎた」

気落ちしたセリとは対照的に、ロードは機嫌が良いらしい。番と2人っきりの効果か。


「今日の予定は、アノお屋敷でお話しネ」

ヴェーネン家の屋敷で話し合う予定が昼過ぎに入っていた。グラウルが様子を見に行き、馬車を寄越してくれる手筈だという。

「食事にしまショ」

ロードとすごく密着。せっせと食事をセリの口に運んでくれる。
「ちゃんと食べてね?」

ロードも食べていない筈だ。カナンの耳に尻尾がぴょこっと動くのに気を取られながら、満腹。
美味しい紅茶を皆んなでお茶している。

「贅沢。」
ほうと満足なため息のセリ。
味も、二度寝も、この時間もだ。きっと記憶に残る思い出になる。
セリなりに、今後の変化を受け止めるつもりだった。


「セリの希望はある?」
「根本的な解決に、当主が見つからないとと思ってる。」

「死んでねーの?」
「チョッとっカナン!」

父親の事を聞くにも、直球過ぎだ。

「さあ?ガグラウルもガイサスだって、生きてるって信じているのか。確証しり何かあるってことしか、教えてもらってない。」

「セリは会いたいか?」

「会ったたら水浸しに、したいくらいには。」

感動の再会にはならなそうだ。そして、愛情もなさそう。

「12歳でも見つかっていなかったし。」
「その根拠は?」

嘘を許さない、見透かせる瞳を思わせるキース。


「死ぬ12歳までの記憶があるってだけ。その後、抱っこされた赤ちゃんだった。」


端的で、嘘ならもっと付け足す。セリにとっての事実なのだろうと思う。
側のロードが、不安定になったので落ち着かせた。


“番が死ぬと聞けば、こうなるのか”


ロードは実力者だ、暴れられたら堪らない。セリの健やかさが、王都の平和につながると分かった。


やはり、セリを『竜の翼』に引き入れる。
これはロードの番が見つかった際の申し合わせていた決定事項だった。


竜人の玉として守られるため。そこで何をするかは本人の自由だろう。
それに協力と、竜人の暴走を止める役目を担ってもらう。

“代償と思うかは、本人次第。”

その交渉はキースが立つが、内容を詰めるのはシュルトだ。
「これから楽しくなりそうだね?」


セリはこれから何が決められるかわかっていないが、悪い事にはならないだろう。
これからの問題が解決されるとは想像もできなかった。

ただ、予定より早く辺境に帰れると決まった瞬間だった。
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