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<王都拠点 編>

甘い空気

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「これで家の乗っ取り?」
「杜撰だなあ~。」

「当主不在って前提だよね?まだできてないって無能。」

キースとカナンで書類を見ている。セリには“待った”がかかったというのも、『子供の教育に悪い内容』を含む。
後で教えてくれるらしい。そう言われていくつ教えてくれるのか。

ちょっとブスッとして待つ。

「いや、これは釣りでしょ?」
「え、これ真面目にやったわけ??」

(楽しそう)

サラッとセリの髪が動いた。手入れというほどの事もしていないので、サラサラとはいかないがロードは手で遊んでいる模様。

くるっと向き直り、触り返す。
(ロードのがよっぽど綺麗な髪なのにね)

翠色が透けるように、固めの髪が綺麗。

セリ自身の髪色をあまり気に入っていない。“当主と同じ”らしいから。
この色じゃなければ、当主の後継にされなかったかもという気持ちがある。

当主の手で辺境の屋敷に預けられたとはいえ、セリが実子ではない可能性も残っている。
そう考えているセリには憂鬱な紺色の髪。単に地味な印象を助長して、更に気持ちが下降した。

(不服。)
明るい柔らかな色に憧れる気持ちもあった。ロードの反応は、そんなセリの気持ちとは別だった。

「食べちゃいたいな」

ぽつりとロードから溢された声に反応する。

“いやダメだろう”大人達はそう思ったが…
(お腹空いたのかな?)

セリは額面通りに受け取って、行動した。

机の上にお菓子はあるけど、甘い物がそこまで好きな素振りはない。お菓子をほとんど食べたのはキースだ。
セリは収納バッグになっているそこから、小腹が空いた用のナッツを出す。

「はい、あ~ん」

気軽に、小さな魔物に上げる気分でロードに差し出す。
ぱくっと吸い付くようにナッツは指から消えていった。カリカリッと食べる姿が可愛いい気がする。
体格から明らかに物足りないないと思うけど、気が紛れれば良いかな?キッチンから良い香りがしている。

「夕食まで持ちそう?」
セリがしたのは、純粋な好意だった。

「もう“餌付け”されてるぅ。」
カナンのひと言が残った。


「もう食べれるケド、どうスル?」
シュルトからの声に、早いが食事にする事にした。すぐにセリが立ち上がる。

「運べば良い?」
「ソウネ、手伝ってもらおうカシラ?」

ロードも付いてきたが、セリにくっついているだけだった。

夕食のメニューは、サラダ、野菜のゴロっと入ったスープと白パン。
(白パンだ!)

お酒の瓶も置かれ、晩餐の形。
グラウルはせねて末席に、と遠い所に座る。

やっと椅子に座れたセリ、ロードはピッタリ横に居て嬉しそうだった。

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