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<竜の翼 編>
涙
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“化かし合い”なんてものにはならない、私が力不足だし、そんな戯れはいらないだろう。
「なんで“3年後まで”なの?」
誰にも言っていなかった事を、ここで溢す気になった。“今なら”とそう思ったから…
「12歳で死んだから?」
つい疑問系になる。部屋の呼吸が止まった気がした。
長い沈黙になると思ったけど、後ろからの手に振り向くと…
ポロポロ涙を溢して、泣いている人がいた。
ロードが泣いてる。泣かせた?!慌てるセリは、右を見て左を見た。
(泣かせてしまった、どうすれば?)
「え、泣くの?」
呟いた男ともう一方は、固まっていた。カナンもシュルトも助けてくれそうにない。
とりあえず、手持ちのハンカチでロードの涙を拭いた。
「…セリ、せりっ?」
確認するようにセリに手を触れ、ぎゅっと抱きしめて存在を確かめた。
(罪悪感が。)
大人の男性を泣かせてしまって、セリがオロオロする。
「へえ、竜人を泣かせるんだ?」
貴人は麗しい微笑みを浮かべて言う。
泣く事もあるだろうとセリは思うが、よしよしとセリはロードを宥めるのは止めない。
慌てふためいていても。
「フフッ面白そう?」
それでも優雅にお茶を飲んだ貴人の、興味を引いたらしいけど。それどころではない状況と向き合う。
「泣かないで?」
抱きしめ返したものの、セリもちょっとつられて泣きそうなくらい困った。凄く哀しそうだったから。
「ロードって泣けるのネ」
「まー、番が死んだって聞けば、わかる気も…」
“するらしい。”
私はわからないよ?それよりも否定が、嘘だと言われると思った。かなり荒唐無稽な自覚はある。
「少し話そうか?」
ちょっと落ち着いたロードから、貴人に向き直った。
「精霊の愛子、ね?アクレイオスの判断があるなら疑いようはないけど、魔物の氾濫の事は?」
「記憶通りなら起こる。虫の魔物の状態異常で戦線が維持できなくなって、王都にも被害が出た。」
「その記憶では、結局どうなって抑えたの?」
「詳しくはわからない。王都の凄腕の人達に依頼を出して防いだって聞いた。」
「ふーん?」
「森の一部を焼き払ったって。後、広範囲魔法と氷の魔法で、鱗粉を飛び散らせずに討伐したって話を…」
「広範囲の魔法」
「氷?」
シュルトとカナンで視線を交わしている。
心当たりがあるのだろうか。
「詳しくはないってのが、あり得そうだね?」
それっぽさがある。
精霊の愛子が告げる予言は、日々変わる。けど、大きく外れない。
「魔物に氾濫は来そうだね?よい情報だ。」
さて、この貴人は私をどう判断するのだろう?
「なんで“3年後まで”なの?」
誰にも言っていなかった事を、ここで溢す気になった。“今なら”とそう思ったから…
「12歳で死んだから?」
つい疑問系になる。部屋の呼吸が止まった気がした。
長い沈黙になると思ったけど、後ろからの手に振り向くと…
ポロポロ涙を溢して、泣いている人がいた。
ロードが泣いてる。泣かせた?!慌てるセリは、右を見て左を見た。
(泣かせてしまった、どうすれば?)
「え、泣くの?」
呟いた男ともう一方は、固まっていた。カナンもシュルトも助けてくれそうにない。
とりあえず、手持ちのハンカチでロードの涙を拭いた。
「…セリ、せりっ?」
確認するようにセリに手を触れ、ぎゅっと抱きしめて存在を確かめた。
(罪悪感が。)
大人の男性を泣かせてしまって、セリがオロオロする。
「へえ、竜人を泣かせるんだ?」
貴人は麗しい微笑みを浮かべて言う。
泣く事もあるだろうとセリは思うが、よしよしとセリはロードを宥めるのは止めない。
慌てふためいていても。
「フフッ面白そう?」
それでも優雅にお茶を飲んだ貴人の、興味を引いたらしいけど。それどころではない状況と向き合う。
「泣かないで?」
抱きしめ返したものの、セリもちょっとつられて泣きそうなくらい困った。凄く哀しそうだったから。
「ロードって泣けるのネ」
「まー、番が死んだって聞けば、わかる気も…」
“するらしい。”
私はわからないよ?それよりも否定が、嘘だと言われると思った。かなり荒唐無稽な自覚はある。
「少し話そうか?」
ちょっと落ち着いたロードから、貴人に向き直った。
「精霊の愛子、ね?アクレイオスの判断があるなら疑いようはないけど、魔物の氾濫の事は?」
「記憶通りなら起こる。虫の魔物の状態異常で戦線が維持できなくなって、王都にも被害が出た。」
「その記憶では、結局どうなって抑えたの?」
「詳しくはわからない。王都の凄腕の人達に依頼を出して防いだって聞いた。」
「ふーん?」
「森の一部を焼き払ったって。後、広範囲魔法と氷の魔法で、鱗粉を飛び散らせずに討伐したって話を…」
「広範囲の魔法」
「氷?」
シュルトとカナンで視線を交わしている。
心当たりがあるのだろうか。
「詳しくはないってのが、あり得そうだね?」
それっぽさがある。
精霊の愛子が告げる予言は、日々変わる。けど、大きく外れない。
「魔物に氾濫は来そうだね?よい情報だ。」
さて、この貴人は私をどう判断するのだろう?
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