【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ

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この日から、水魔法の訓練は、庭の植物に向けられた。
紅茶2杯分の量の水球をポンポン出しては、植物の水やりに使う。

とても怪しい赤ん坊だけど、お爺ちゃんはニコニコ見守っている。

座っているだけじゃなく、強面な弟子さんに指示を出して、赤ん坊のお守りもしている。
(とっても働き者だね!)

その弟子さんは、赤ん坊が恐いらしい。全然子供に慣れていない。
近づくのも恐ろしいと言う顔だけど、貴方の顔のが恐いですって言ってやりたい。

冒険者活動していたけど、旅暮らしに馴染めず手に職を得るためここに来たらしい。

辺境なのは問題ないし、魔物にも対処できるが人前に出るのは相手が怖がり職を得るのは大変だったと
お爺ちゃんが根気よく聞き役になっていた。話す方も苦手で、やっと分かった話の全容だった。


まとめると、不器用。対人方面において損しているけど、手先は器用で順調に庭師になりつつある。
お爺ちゃんの後をしっかり継いでいてくれた記憶があるので、心配はしていない。


「あぶあ~」

赤ん坊の声が上げるとビクついている姿は頼りない。噛まないんだから、そんなビビらないでよ。

(慣れてるくれたら、抱っこしてもらって高い視線を手に入れる算段なのに。)

上手く意思を通じられるようになったら、交渉しよう。
そんな私は寝返りをうっています!成長だなあ。どこでかって?


外で。当然、泥だらけ。
庭師の2人は笑っているけど…


「またなのおおぉっ!!」
若いメイドが悲鳴をあげますよー。最近は日常です。

赤ん坊に文句を言っても無駄でーす。
弟子さんから洗濯草をふんだくり、洗濯してます。

(赤ん坊はすぐ成長するからって服が少ないから、頑張ってねー。)

成長著しいけど、名前を覚えるのも怪しい。
記憶がぼんやりする。寝てばかりだからかと思ったけど、他にも死ぬ前の記憶も?

寝た後は、12歳の記憶が全て吹っ飛んで消えてしまうんじゃないかと…怖い。

赤ん坊に戻っているこの状況が不自然な事だと理解はできる。でも、今できている事がふっとできなくなる瞬間が
来るのでは?


「うっ……うえっ!」


私の存在は、不安定だ。消えてしまっても気付かれないほどに。


「うあーんっ、うっふぐっ」

赤ん坊が泣いてる。それが自分なのかさえ、実感がわかない。


「泣いてますね。」

ビクッとして、声が止まった。目の前には知っている頃より、若い執事。じっと見つめ合う。
「わかりませんね。弱いし、役に立たない存在なんて。知りたくもない。」


興味がないように、のぞいていた顔は離れ遠ざかっていった。


(全然、興味ないんだね。)


彼との接点は、当主の関係者であるかどうかだ。
性格は淡々としている。仕事ができるが親しい関係には踏み込まない。仕事人。


その印象そのまま、執事は若く小さくなっている。
距離には気づいていた。だって、私じゃなくても


『辺境伯の後継者であれば、同じ対応をした』…筈だ。


そこに男女の差を持ってこないだけマシな考え方だったけど。
味方であるとは断言できない、そんな冷え切った間柄。

(変わっていないらしい。)


今後、どうなるかを想像する。赤ん坊の私には具体的に思い起こすのが難しいようだけど…
後継者として見る周囲。メイドの仕事を手伝うようになる幼児期。貴族教育が始まり、魔物狩りへ
行く。そのうち魔導具を直して使う事で、優良な人材扱いをされる女の跡継ぎは不安だと親類が押しかける。


実に、面倒な人生だった。今2歳くらいだし10年間そうなのか。


(今回はやだなあ。)

親類と言って乗り込んできた人達も、仕事サボってたんだよねえ。辺境までご苦労様っていうか。
交流のなかった家で好き勝手するって心臓に毛が生えてたんだから、魔物くらい怖かがらなくて良いのに。

魔物の目の前に出て行って貰えば良かった。
勝手に人を集めて、人の飲み物に毒を入れるのは得意なんでしょ?
(あ、心が荒んできた。)


発散するに限る。庭か白い壁に向かって水魔法で掬い上げた汚れた塊を浮かせる。

(どろんこくらえ!)

仮想の敵に向けて投げた。
自身にも多少喰らったが、悔いはない。
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