【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ

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長い走馬灯のひとつで終わるのだろうか?それにしては雨も、腕の感触もあった。人の表情までわかる。
今も、まだ夢なら覚めていない。

会った記憶もなかった当主が、赤ん坊を置いて消えた。

(この後、消息がつかめなくなるのか。)
記憶もなければ、接点もなかった。絵姿を覚えているだけの人に愛着など湧かない。
まあこの後どうなるかなんて知らん。良い大人なんだから。


とにかく赤ん坊になったと想定すると…
(人生のやり直し、か。…どこが悪かったのかなあ。)

12年、周囲に守られて成長できたのに。16歳の成人にもなれなかったなあ。そこまで行けば、ちょっとは落ち着いた領地運営ができたのに。


(なんで…あの人を必死に探していたんだろう。最初は連絡がつかなくなったオジサマが心配して。
それと、当主だから。)

補佐でできない事もあるし、未成年の代理程度だと、何をしようとするにも不利だった!
「バブゥ、ばばばっ!(うるさいやつほど仕事しなーい!)」
「あら、今日は元気ねえ。」


乳母が抱っこしてくれる、それに少し興奮が落ち着いた。

私の記憶にある頃からオジサマは、当主を探すのに相当な尽力をしていた。
最初は身柄を捕まえようとして。消息が絶たれたのに気づき、何かあったのだと確信していた。


『死んだんじゃないの?』

過去、そうオジサマに聞いても、明確な返事はなかった。子供扱いで聞けない部分だったのかと詳しくは聞いていない。ともかく、死んでいない前提で必死に探していた。

それにしても…(もう眠い!)怪我した時のように、多くの睡眠が必要なのだろうか?

赤ん坊の身体は寝て、お腹が空いて。満足したのに泣いていたが落ち着いた。
「あーう、うんう…。(眠いよー。)」
「良い子ね~。おネムかしら。」

寝かしつけのままに瞼が下りる。私、赤ちゃん。人肌恋しい年齢だったか。
赤ん坊は眠りに落ちていったけど大人達の会話があった。


「セリュートと名付けられた子ですが、女の子です。」
(セリュートって、どちらかと言うと男名だね。呼びやすいいからセリと呼ばれますよー。)


私の人生最初の事は周囲から聞いていた。ここまでの大筋は、生前聞いていた通りだった。
『振り返ると赤児の時に、辺境に送られてきて後継者の名前をつけられた。』

(実際に見られるとは思わないけどね!)

「辺境を守る役目を担う後継者だ。男ならば鍛えることも考えたが。」


オジサマの懸念はわかる。兵士を率いて指揮する事を求められているから。
腕っ節より、命令を受け取りやすい男子、戦える人物を求める。

(12歳の女の子に指示を受けたい兵士はいないよねー。)

私は結局、魔力を鍛えてこの家のお家芸とも言える調査を担当していた。付け焼き刃で、ないよりマシ程度の
魔導具の修理、ほぼ独学。屋敷の図書室にあった専門書と悪筆のメモと格闘してなんとか使えるまでにした。


幼い当主代理への視線は優しいものもあったけど
“当主の子じゃないだろ”って言葉もあった。

(それはどうでも良いけど。)

あんな人との血の繋がりなんていらん!問題はこのままだと将来、オジサマが崖っぷちになる。私が死んだ後、確実に親類が穴を埋めた。…希望的観測で意外となんとかなってるかも。


「後継者です。教育を施すべきかと。」
「反対です!どこの子ともわからないのにっ」


(確かにー。ご当主さまは断定されてはいませんでしたぁ)


そうだよねー。結局死ぬ12歳まで本当の母親は現れなかった。
偽物はやってきたけど。時間を盗られたその分、ふんだくってお帰りいただいたから。


(さっきから反対派な…この人誰だっけ?)

小さい時にいた?逆に記憶にある頃にはいない。


「ふぎゃあっ!ふぎゃああっー(あーもう、嫌だあああ!!)」

当主が、元凶だな。文句言わないと気が済まないわー!
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