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“売り言葉に、買い言葉”とはよく言ったものだ。

隣で腕を掴まれながら(組まされながら)、知った街を幼馴染の女と歩く。

両方、フリーで付き合う相手はいない。だが組み合わせとしては奇妙だと俺は思う。


従者をケムに巻いて、2人で街に繰り出しているこの状況。

俺は何度目かのため息を吐いた。
未婚の令嬢と2人っきりで行動なんてあり得ない事だ。


従者がついて当たり前なところを、この女…

『大丈夫よ、イエンツだもの』で済ませやがった!

何で従者もソレで引くんだ??
結婚しててもついて来るもんじゃないのか?!

そりゃ地元で馴染みの場所しか行かないって約束して…オイッ!
(流れを自分の有利に進めるって女の特技か?怖いねえ。)

何が怖いって…
ただのデートで済むとは思えない。
だって、アンジェリン・クイニーなんだぞ?


敵に回しちゃならねえと本能が言うんだが腰が引けてる。

周囲には恋人同士の男女に見えているだろうが、
俺にとっては連行中と何が違うんだ?

グイグイと進む先
真昼間から令嬢が行く場所じゃないトコロが思い浮かぶ。


そうと言うのも

『スカートの中に、興味すらないのね?』

あの日の記憶を刺激する言葉。
「イエンツ」

ズボンから下着ごと下げられ、見られた記憶。
を思い出しながら、

「行くわよ、イエンツ」

(これは現実か?)
女に引っ張られ連れ込み宿に、入って行った。



部屋の中にはベッド
まだ明るい外の光が窓から見える

部屋に入って茶でも…とはならない
さっき飲んだもんな

「さあ!」
堂々とベッドの上に座って偉そうにする女。



「あのな、食われる側だって自覚してるか?」

「アラアラ、まだ手を出してこない男が何を言っているのかしら。」


苦笑
ベッドに座っている女の前で立っている俺に。

近づいて女の頬に触れる。見上げている角度の顔を見下ろす形になっている。

「挑発的な顔が似合うな。」
綺麗だと思う言葉さえ、素直に出ない。

羞恥と混乱のあの頃とは違う。

視線が俺のムスコの位置に下がり、またしてもその中まで暴かれる。

「まあ!」
そのひと言を発した後、じっくり見やがって。


「あらあら、まあまあ。」

成長したモノが、顔を出していた。

とんでもなく
危険な据え膳があったもんだ。

顔を上げさせ、唇に吸い寄せられるようにキスする

フルーツティの香り甘い味。
さっき飲んだせいだ甘いのはケーキか?

記憶にはなかった甘く柔らかい感触

ベッドに女は身を預け、そのスカートを捲る。

白いペチコートは、ベッドのシーツより上等な布地で。

余裕な顔の女を覗き見え
俺は、中身を脱がしにかかった。

スラリと女らしい曲線の足
絹の下着に手をかけ、焦らす。

このまま食いつくのは癪だ。

腰まわり、胸を揉み、女の匂いが増す
ドレスを脱がすのはひと苦労だが、楽しくもある。

「あっ…」
鼻にかかる甘えた声に満足し
睦合いを楽しんだ。



ごちそうさま


と帰るには、まだ日は傾いていなかった。


(これからどうしようかな)

そう思うも、とうに選択肢など然程ないと知ってはいた。





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