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アンジェリン

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私の名前はアンジェリン。貴族の一員として、礼儀作法と美を磨いてきた。

幼い頃から。
その幼い時から、顔を合わせるあの男。

いわゆる幼馴染の間柄で、学園でも一緒だった。

家格も同じく、派閥も一緒となると
会わない時を数える方が早いかもしれない。


初めて会ったのは、特筆することもない。
お母様と行った初めてのお茶会。

目一杯オシャレをして、ワクワクして庭を眺めた。

「アンジェリン・クイニーです。」
練習した通り、上手に礼をして挨拶できた。

母も褒めてくれるだろう。

それが終われば、甘いお菓子を食べてお友達を作るのがお茶会の倣いだ。

女の子はそれぞれオシャレに着飾り
照れながら、人見知りを引っ込めて話しかける。


今も仲良く、お茶会に行く友人達だ。


例の男の初めて会ったときの印象は、あまりない。
目が合わず、ぼそりと名前を言ったようだったけど

婦人が捕捉して名前がわかったくらい社交性が高いとは思えなかった。
今では見る影もないわよね?

そんな切っても切れない、切りたい縁の男と
縁談が持ち上がるという、危機的状況にある。


私の勧めていた縁談が、向こうの落ち度により破談になるそうで。
「慰謝料しっかり貰っておいて!!」

仲人のおじ様に叫ぶしかできなかった。
怒るくるったって、私の時間は帰ってこない。

もう結婚間近という関係性が知れ渡り破談。
残っている男にマシな選択肢があると思っているのか?
せめて結婚した後の方が…。

まあ面倒だろうけど、行き遅れたよりマシかもと思う。

いや、修羅場のキャットファイトは気が進まない。
お相手の女性は、元婚約の子供を身篭っていると話していると聞いたが。

本当かも、どうでもいい。
『大人なんだから、ちゃんとしろ!』としか、声はかけられない。

それでまあ、絶賛お相手探しているが。

貴族社会でこの時期まで相手がいないと言うのは、問題アリである証というか。
だいたいが、売れ残り。


そんな男の中から選べとは、どんな罰ゲームなの?

問題がどんな問題か?問題児か。
もう訳わからない。


私の結婚は、暗礁に乗り上げたか?
いいや、これはもう動くしかない。

情報収集と狙いを定め、突き進むのみ。

国内ではなく海外の男を狙うとか
女好き噂の御仁には近づかず、その天敵と言われる女性に助力を願う。

「私、必死なんです!」と素直に泣きつけば、助けてくださる女性達ばかりだった。
日頃の行いって大事ですよね?
もちろんお礼はしっかりした。できる範囲なので、情報や領地の美容品を貯金で購入し渡した。

そんな中で、浮上したあいつの名前。

あの幼い頃から、名前を聞くだけ。
お茶会で顔を合わせても少し話す程度の関係性だった。


イエンツは幼馴染。

その男が婚約者候補に上がった日には、どうすればいいのよ?
明日のお茶会で会うと決まったが、

なかなかその夜は寝付けなかった。
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