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帝国から

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メイドの寮に荷物を置きに戻ろうとしていた私だけど、ローランド様のお家、公爵家の方へ馬車は向かった。

お仕事が山積みで、それに加え消えない噂の対処もある。
実家に帰った時にもこの問題のために従者が出かけていたそうだ。

ご一緒にはローランド様、ではなくミカエラ様だった。
ついメイドの動きをしたくなるが
「ダーメよ?」

たしなめられ、御令嬢のように振る舞うことになった。
(メイドの癖ってこわい。)

動いてしまいそうなのを前もって止めている状況。

ミカエラ様が気づかせて下さるので、なんとか御令嬢然として座ってられた。
ちゃんと、エスコートして馬車から降ろして貰い、お義母様がお迎えくださった。

「お帰りなさい。マァ!ミカエラも益々美しくなって。」

親戚の子で気も合う仲とは聞いていたけど。揃った2人を見るのは初めて?

「さあ。戦闘準備よ!」
「ええ、帝国風も少し入れません?」

そのお二人からの目線で、私がターゲットと分かった。

そうしてこうして。磨かれ、飾られてマナーも一通りチェックが終わった私は数日後。
マライヤはお茶会の席についていた。


「アクセサリーが手違いでなくって。前倒しで早めに王国に来てしまったの。」

元公爵令嬢というべきなのかもしれないが、その姿は堂々と王国風のお茶会に馴染んでいる
(流石だ。)

私は今回のホスト役を担っている。準備した場所は王太子様のお持ちのお庭だ。
この場所で、王太子の許可を得て話しているという意味がある。


招待したのはイザベラ様、アイナ様にナナミ様。
ミカエラ様の隣に私が侍り、御令嬢を一同に眺められる位置にいた。


情報収集もバッチリで迎撃態勢だ。


アイナ様との話題は帝国の話。そこから小手調べ。
「帝国では、妙な噂が出回っているようで」

「そう。王国では偽サファイアが売っているって話でしょう?」ミカエラ様が仕掛けた。

「まさか信じたのですか?」
食い気味のイザベラ様の言葉は、少し非難する声が混じった気がする。

「いいえ。ですが噂が消えないからには行動しなければ。
どうすれば良いと思いますか?」

小首を傾げる姿は、可愛いらしいが。内容は相手を試すもの。
ミカエラ様のコワイところ。

「次期王妃が決まれば収まるでしょう。」取り合わない態度を見せるのは、イザベラ様。

「出処が気になるなー。そんな噂流して何の利益があるんだろう?」
アイナ様は商人らしい視点だ。

「ナナミ様は?」意見を促す私。
「私も噂は聞いています。一度、国同士の対話が必要かと思います。」


「ええ。そう進言しておきますわ。」
次期王妃の器に相応しいか、ね?
と聞こえそうないいように、ミカエラ様の言なら聞くような態度だ。
御令嬢方の警戒度が上がったように見える。


「王太子、フィンはどうするかしらねえ。」馴れ馴れしく言う。(態とだ。)

「帝国に行くとはいえ、王太子様を愛称で呼ぶのはお控えになったら?」

場がしばし、静寂になるがフォローが入った。

「厳しいなあ。帝国では女の強さも必要だから水が合うんじゃないかな。」
「あら、残念。海の民なら女傑になるわ」

招待客の皆様で会話になっているけど、イザベラ様は少し攻撃的かな。
このタイミングでミカエラ様が仕掛けた。

「ふふっねえ。貴女達、フィンのことは好き?」


動揺したのは、イザベラ様だ。


「ふふっふほんとに良い女ね。」
「うわあ、これが経験の差かあ。」
楽しそうなナナミ様と尊敬の目のアイナ様。

「今の、揺さぶり?」
いつもの御令嬢の仮面が少しズレている、イザベラ様だ。

「そう。惚れた方の負けね。」


ミカエラ様が勝った。ついでとばかりに続く。
「2人は、今後のこと考えているの?」

イザベラ様の回復を待つ意味で、話を振っている。


「私は王太子様と面会を許された商人として帝国に行くつもりです。元々の未来設計でしたので」

アイナ様は王妃という席には興味がなかった模様ですね。

「私は海の民として守る者達がいます。王都に来て民を治める道には行けません。」
(社交モードで来ていたのぁ。王太子様との交流を得てナナミ様は帰るつもりだった。)


イザベラ様はもう少し
「もう一つ。コレはお持ち?」

ミカエラ様が取り出した物。
アイナ様がたじろいだのを私は、見逃さなかった。
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