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葬儀が終わり弔問客も帰って行った。

居間には当主と、その子供が2人。
そして、後釜におさまった女。

当主は、子供達に言葉をかけているが彼らは視線が合うことはなかった。
哀しみに襲われるも、仕事は無くならない。

当主が休むように言葉をかけ、自身は執務室へ行った。

残った子供達と女。メイドも残る。
静かな空気を破ったのは女だ。


「怨んでかまわない」

ぽつりとこぼしたのは本音で、彼女の息子に聞かせる言葉。
妹は幼く、首を傾ける。

兄の方は何か言葉を紡ごうとしたが、発せられる事はなかった。


女の置かれた状況も難しかった。
国で見染められ、この国まで来た。

相手には正妻がいる。自分は第二夫人とされるようだったが
彼女は承諾しなかった。

貴族女性として、自身が正妻ならと折れる者もいるが
異国の女を自身と並べる事に拒絶をした。

淑女の、家の教育として。誇りとして。

結婚で子供もできた。
愛を求めた事はないが、他の女が家に入る。

それが嫌だった。

せめて、自国の貴族女性なら?

そう悩むも、受け入れる事はない。
このままだと私が追い出されるのか?子供達は。

そもそも、私が出て行かねばならないのか。

プライドが許さなかった。
そして、自害を選ぶくらいには。

もう、感情がこれから先に起こる事をうけいれたくなかったのだろう。
自身で命を絶つほどに

「じゃあ私の得た物を全て譲れば良かったの?あの方はそんな施し、つっぱねたわよ」

女は母の気性を一番、理解していた。
その黒衣は哀しげだったと記憶に残る。


時は過ぎる、彼女は第二の母として籍を入れ弟が生まれる事になる。


ただ、この人を母と呼ぶ事はない。
それだけが、生母に手向けられる事だった。


家はというと貴族としてうまくやっている。
これくらいの複雑さは、よくある事だ。


気持ちの整理は一応、兄妹共についているのだった。
生まれてきた弟には、思うところはない。
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