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蜘蛛の糸
1. こりゃぁ高値で売れそうだな……
しおりを挟む僕はいつものように朝食を終え、準備をし、あの透けていないシャツ一枚でジミーさんを待っていた。
すると、部屋の鍵が開き、燕尾服のサングラスをした男が三人入ってきた。
「!!!!!」
僕は驚いた。
もう、どこかへ連れて行かれるの!?
ベッドへよじ登り、壁際まで逃げた。
が、その三人は落ち着いた様子で、引き出しのいろんな道具を出し並べていく。
そして大きな一人用のソファーのような椅子も運び込まれ設置していた。
足を置く台まで付いていて、一人用にしては大掛かりだ。
それからカートに乗せられていたものは注射器やメスなど、さながら手術の準備のような光景。
以前ジミーさんが持ってきたブジーも置いてある。
「……なに、するん…ですか……?」
一人の色黒の男が僕のほうを見てにやにやして言った。
「ちゃーんと出来上がってるか、完成度を見るんだよ」
完成度……。
もうジミーさんは来ないのか?
せめて、別れの言葉を言いたかった。
僕の知っている人はいつも突然の別れとなる。
次会えるのかわからない状態で、僕の目の前から消えるんだ。
だったらもう何も見えないほうがいい。
信じる人も、縋る人もいないなら、そのほうがこれから楽なのかもしれない。
この身をただ投じさえすればいいだけのこと。
僕はかけていたメガネを外し、そっとサイドテーブルに置いた。
涙がぽろぽろと零れた。
「ふっ…、こりゃぁ高値で売れそうだな……」
サングラスの男の誰かが呟いた。
サングラスの男たちは何かを待っているようだった。
僕はベッドの壁際の隅で三角すわりをし、小さく震えていた。
がやがやと、何人かの人が入ってくるのがぼやっと見え、一人の男性が近づいてくる。
顔が間近まできて、弘和さんのお父さんとわかった。
「ふふっん。色気が出てきたな。
そう思わないか?弘和……」
えっ?!
弘和さんも居るの?!
……見ないで!こんな僕を……もう見ないで……。
会いたかった、つい昨日までは……。
でも、どうせすぐお別れだ。
次は本当に会えない。
だから、せめて弘和さんの中の僕は、あの車の中の弘和さんだけの僕であってほしいんだ。
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