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番外編1
15.その姿はまさしく家族そのものだった
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病院の特別室。
廊下の装飾から明らかに一般病棟とは違う空間の一室の扉を開けると、何人もの白衣を着た医師と看護師が大きなベッドに寝かされた谷垣さんを取り囲んでいて、手島さんが手を握り寄り添っていた。
そんな手島さんの肩にハヤが手を置いてようやくオレ達に気づいた手島さんは、思わず立ち上がり何度も頭を下げながら自分が座っていた谷垣さんの横の場所をハヤに譲ろうと後ずさる。
その手をハヤは握り引き戻すと、また同じ所へ手島さんを誘導し座らせた。
ハヤの顔を見上げる手島さんの顔はやつれ涙でぐしゃぐしゃになっていたが、それでも安堵と落ち着きを含んでいた。
座り直した手島さんとその後ろに立ったハヤが酸素マスクを付けたまだ意識の戻らない谷垣さんの顔を覗き込む。
その姿はまさしく家族そのものだった。
「バイタルは安定しています。もうすぐ意識も戻られると思いますので」
医師の一人がそう言った時、手島さんが「あぁっ」と声をあげた。
すっと目を開ける谷垣さんをオレも含めて3人が覗き込む。
谷垣さんは天上を見る視線からゆっくりオレ達を見、一瞬優しい穏やかな表情をしたかと思うと、急にぎろっとにらみだし、口をパクパクさせた。
「仕事は終わらせました。今はもう深夜です」
そうハヤが話しかけると、またすっと目を閉じた。
「もう心配はいりません」
そう言うと数人の医師は退出し、わずかな人数の看護師だけが残った。
手島さんはぽろぽろ涙を流し、少し手は動くのか何度も谷垣さんは手島さんの手を握り返していた。
ハヤは俺の手を引き部屋を出る。そっと扉を閉めると突然ハヤに抱きしめられた。
その大きな体は震えていた。
本当は不安で心配で押しつぶされそうだったんだ。
オレはその背中に手を回しゆっくりさすった。
「今、ここにナツが居てくれて、ありがとう。
俺の側に居てくれて、ありがとう。
…本当に…、
愛してる…愛してる…」
「…うん、…うん」
オレは頷くしかできなかったけど、オレも今ハヤの側に居られたこと、本当によかったと思った。
「俺たちもう帰ります。後よろしくお願いします」
落ち着きを取り戻し病室内に戻ったハヤが手島さんにそう声をかけた。
「え、もうですか?」
「俺が居たって父さんを怒らせてしまうだけでしょうし…。手島さんももう休んでください」
広い廊下まで見送りに出てきた手島さんに「もうここで」とオレが手で合図をすると、扉の前でお辞儀をする手島さんを背に、オレ達は病院を出た。
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その大きな体は震えていた。
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広い廊下まで見送りに出てきた手島さんに「もうここで」とオレが手で合図をすると、扉の前でお辞儀をする手島さんを背に、オレ達は病院を出た。
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