なぜか俺は親友に監禁されている～夏休み最後の3日間～

ここから始まる

２. 《手島side》あの二人、きっと幸せになれますよ。今の私のように……

《手島side》

新千歳空港ロビーで、隼人さんから電話が入った。
プロポーズはうまくいったらしい。あのマンションで二人で住むと言っていた。
ほっと胸をなでおろす。

私の後ろでは喫煙所で最後の一本を吸う弘和さんの姿。

カラカラ…と喫煙所の扉を開け、中に居る弘和さんに声をかけた。

「そろそろ搭乗手続きに……」

「わかってる、もう一本だけ……」

くすっ、子供みたい。

咥えた新しいタバコを取り上げ、くずかごへ捨てる。

「もうダメです」

「チッ、わかったよ……」


「検査の予約は？」

「10日後になります」

「まだ大丈夫じゃないか」

「ダメです。
お医者様にはもうお止めになってくださいと以前から言われていますので。
今回の旅行で最後だとのお約束です」

「………」

弘和さんは手にしていたタバコの箱をパチンと閉め、それごとくずかごへと放り込んだ。

「約束……だったな」

私と弘和さんは搭乗口へと向かった。



私はまた、弘和さんのお屋敷に住み、弘和さんと常に共に過ごすことを決めた。
もう一秒たりとも離れたくはなかった。
これは私の我侭だ。

心停止で倒れたあの日、弘和さんの心臓に異常が見つかった。
手術をして、助かる見込みは50パーセント。
だが、弘和さんはこれにかけると言う。

旅行ももしかしたらこれが最後になるかもしれない。

自信を覗かせている一方で、やはり自分に万が一のことがあった時、隼人さんと夏斗くんのことを心配していたんだろうと思う。

「あの二人、きっと幸せになれますよ。今の私のように……」

前を早足で歩く弘和さんが突然止まった。
私の腕を掴み、トイレに駆け込むと、私のメガネを奪って激しくキスをする。

あぁ…、もう味わえないタバコの香りのキス……。


「搭乗まであとどれくらいだ」

「15分です……」

またも腕を引っ張り、一番奥の大きめの個室へと入った。