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最後のそして始まりの……
1. 10年。 ずっと傍に居たいと思い続けてきた。
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「そんな、冗談……。
谷垣さんもまさか、本当にそんな馬鹿げたことをするなんて……
思ってもみなかった……だけだよ……」
谷垣さんが病室で言ったという言葉を聞き、冗談で言って引っ込みがつかなくなってしまった谷垣さんを想像してみた。
オレは、真っ直ぐオレのほうを見るハヤに目を会わせられなくて、下ろされることのないハヤの右手を眺める。
じわじわと鼓動が高鳴り、嗚咽が漏れそうになるのを我慢する。
「知っているだろ。」
ハヤは静かに呟く。
ああ、知っている……。
どんどん鼓動が早くなり、自然と涙が溢れ出す。
唇が震え、下唇を噛む。
「父さんは、約束したことは絶対に守る。
それは逆を言えば、
『確信を得たことしか約束しない』
ということ」
オレはそこで初めてハヤの顔を見た。
冗談を言って引っ込みがつかなくなった谷垣さんなんて、どうしても想像がつかなかった。
「父さんがナツを認めた。
それは確かなことだよ」
ハヤはもう一度、強く右手をオレに差し出した。
「それとも、もう再就職先が決まってる?」
オレは涙で前が見えないくらいになっていた。
何度もハヤの顔と、差し出された手を見比べ、零れる涙を手の甲でぬぐった。
そして、ゆっくり右手を出した。
ぼやけた視界の中、探り当てるかのように掴んだハヤの右手は大きく温かく力強い。
そして、愛おしさが込み上げてくる。
その手を勢いよく引っ張られ、そのままオレはハヤに強く抱きしめられていた。
「……うぅぅ……オレ、、、オ…レ……」
「……ナ…ツ……」
ゆっくり顔を上げる。
潤んだ瞳のハヤの顔が思いのほか近くにある事に、心臓が跳ね上がった。
10年。
ずっと傍に居たいと思い続けてきた。
遠い存在に、もうこの手を掴めないんじゃないかと考えたこともあった。
たどり着いたんだ……。
もう、この温もりを離さなくて……いいんだ。
「オレ……」
もう一度そう呟いたとき、弾けたようにハヤがオレの顔を大きな手で被い、圧し掛かりながら激しくキスをしてきた。
「んっぁ!!」
差し込まれた湿った柔らかい舌が、オレの舌を捕らえ、嘗め回し、敏感な先の部分を刺激する。
ぬちゅっ、くちゅ、ちゅっ、ちゅ……
口角から零れる唾液もそのまま、唇は何度も角度を変えて重なり、味わいつくす。
ようやく開放されたとき、もうオレの全身はハヤをもっと感じたくて疼きだしていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
お互い荒い息になり、顔が火照る。
大人になったハヤ。
スーツもかっこよく着こなし、少しカールした色の薄い髪はおでこにかかって下ろされていて、その奥の一重の目は、優しさに鋭さが加わり、一層妖艶な光を放っている。
「触れたかった……。
ナツの唇に……。
髪も……。
それから、首筋……」
震える声でそう言うと、顎を掴んでいた大きな手はオレの髪を優しく触り、首筋をなぞる。
そしてオレのスーツの上着をするっと脱がすと、確認するかのようにシャツの上から肩を撫で、もう一度ゆっくりオレを抱きしめた。
「覚悟して。
もう……離さないよ」
胸がはちきれそうに切なさが込み上げて、オレもハヤの広い背中に腕を回した。
谷垣さんもまさか、本当にそんな馬鹿げたことをするなんて……
思ってもみなかった……だけだよ……」
谷垣さんが病室で言ったという言葉を聞き、冗談で言って引っ込みがつかなくなってしまった谷垣さんを想像してみた。
オレは、真っ直ぐオレのほうを見るハヤに目を会わせられなくて、下ろされることのないハヤの右手を眺める。
じわじわと鼓動が高鳴り、嗚咽が漏れそうになるのを我慢する。
「知っているだろ。」
ハヤは静かに呟く。
ああ、知っている……。
どんどん鼓動が早くなり、自然と涙が溢れ出す。
唇が震え、下唇を噛む。
「父さんは、約束したことは絶対に守る。
それは逆を言えば、
『確信を得たことしか約束しない』
ということ」
オレはそこで初めてハヤの顔を見た。
冗談を言って引っ込みがつかなくなった谷垣さんなんて、どうしても想像がつかなかった。
「父さんがナツを認めた。
それは確かなことだよ」
ハヤはもう一度、強く右手をオレに差し出した。
「それとも、もう再就職先が決まってる?」
オレは涙で前が見えないくらいになっていた。
何度もハヤの顔と、差し出された手を見比べ、零れる涙を手の甲でぬぐった。
そして、ゆっくり右手を出した。
ぼやけた視界の中、探り当てるかのように掴んだハヤの右手は大きく温かく力強い。
そして、愛おしさが込み上げてくる。
その手を勢いよく引っ張られ、そのままオレはハヤに強く抱きしめられていた。
「……うぅぅ……オレ、、、オ…レ……」
「……ナ…ツ……」
ゆっくり顔を上げる。
潤んだ瞳のハヤの顔が思いのほか近くにある事に、心臓が跳ね上がった。
10年。
ずっと傍に居たいと思い続けてきた。
遠い存在に、もうこの手を掴めないんじゃないかと考えたこともあった。
たどり着いたんだ……。
もう、この温もりを離さなくて……いいんだ。
「オレ……」
もう一度そう呟いたとき、弾けたようにハヤがオレの顔を大きな手で被い、圧し掛かりながら激しくキスをしてきた。
「んっぁ!!」
差し込まれた湿った柔らかい舌が、オレの舌を捕らえ、嘗め回し、敏感な先の部分を刺激する。
ぬちゅっ、くちゅ、ちゅっ、ちゅ……
口角から零れる唾液もそのまま、唇は何度も角度を変えて重なり、味わいつくす。
ようやく開放されたとき、もうオレの全身はハヤをもっと感じたくて疼きだしていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
お互い荒い息になり、顔が火照る。
大人になったハヤ。
スーツもかっこよく着こなし、少しカールした色の薄い髪はおでこにかかって下ろされていて、その奥の一重の目は、優しさに鋭さが加わり、一層妖艶な光を放っている。
「触れたかった……。
ナツの唇に……。
髪も……。
それから、首筋……」
震える声でそう言うと、顎を掴んでいた大きな手はオレの髪を優しく触り、首筋をなぞる。
そしてオレのスーツの上着をするっと脱がすと、確認するかのようにシャツの上から肩を撫で、もう一度ゆっくりオレを抱きしめた。
「覚悟して。
もう……離さないよ」
胸がはちきれそうに切なさが込み上げて、オレもハヤの広い背中に腕を回した。
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