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奇跡

3. 《隼人side》死にかけたんですよ!!

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《隼人side》

「父さん。
父さんにはしばらく仕事から離れてもらいます。

死にかけたんですよ!!
明日、バンクーバーになんて発てるわけないでしょう!!」

予定していた仕事をそのまま続けようとする父さんに、俺は強めに言った。

「何言ってる、手島がついてる。大丈夫だ」

それでもなお仕事の書類から目を逸らさず言い放つ父さんに、手島さんが近づきその書類を取り上げた。

「………奇跡……なんです。
あなたが今、ここにこうしているのは……。

もう、すこし……自覚してください」


俺は、今居るもう一人の秘書に下がるように言い、部屋から出ていくように促した。
手島さんはその扉の閉まる音を聞くと同時に崩れ落ち、父さんの膝下に蹲った。

「………友哉……」

父さんが呟いた。


手島さんが落ち着きを取り戻したころ、俺はここに来る途中の車内で父さんの秘書と電話のやり取りをしていた俺の秘書が言っていたことを思い出した。

「……何があったんですか。
ひと悶着あった会社の社長と父さんがトイレで鉢合わせになって、そこで父さんが倒れたと聞きました。
秘書の話では、その会社の秘書から連絡があって駆けつけたときにはもう父さんは瀕死の状態だったと。
その社長と何かあったんですか?」

「富士城興産だ」

手島さんがはっとした。


「富士城興産の社長と、何があったんですか!?」

「何もない。
……あんなひよっこに、この私がどうこうされるなんてありえんよ。
で、……私はそれからどうなったのかはわからないが……」

富士城興産……。名前くらいは知っている。
うわさでは社長が代替わりしてから、手広く事業を展開しているゼネコンだ。
手島さんはなぜかよく知っているそぶりだな。

「医師の診断では……突然の心肺停止。過労が原因だろうと……。
一瞬で命が奪われていたかもしれなかったんです。
倒れて、すぐの的確な処置のおかげだそうです」

「……倒れてすぐの的確な処置……か……」

なにか思い当たることでもあるのか、父さんは考え深げにそう言った。

「しかも、今のところ脳への障害も無さそうです。
それも、心停止直後から心臓マッサージなどで常に脳へ血液が送られていたからに違いないそうで、父さんを蘇生するのに尽力してくださった人に感謝しないといけないですね。
またホテルのほうへ行って、状況を聞いて………」

「浜崎夏斗だよ」


「え………」





「私を蘇生したのは、たぶん、浜崎夏斗だ」


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