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別れのとき

1. 決意も新たに、オレとハヤの人生が動き出した

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「君の覚悟は私にはどうでもいい。だが、隼人の右腕になるというのなら、頑張ってみたまえ。
能力のあるものには、私は惜しみなくその立場をあたえよう。

ただ、君とのことを認めたわけじゃない」

応接室で谷垣さんはオレにそう言い捨てた。
そして次にハヤのほうへ目をやる。

「私は今でも手島とのことはこれでよかったと思うし、隼人、お前がこれからどう気持ちを変えられるのかだな。
私は一度この手から手島を遠ざけた。蔑み、奴隷として扱うことで、冷静になれた部分があった。
お前がどのようにイギリスで頑張れるか、気持ちをしっかり持てるか。
執着しない心で共に歩んでいけるのか。
答えを見つけていかなくてはいけない」

ハヤは考え深げに、父の谷垣さんを見つめていた。




「夏斗くん……」

応接室を出ようとすると、初めて谷垣さんに親しげに名前を呼ばれたのであわてて振り返った。

「手島は、楽しそうに秘書の仕事の事を語っていたのか?」

「はい、とっても……」

「そうか………」

言葉を詰まられた様子で一度俺から視線を逸らし、扉を開けハヤを廊下へ誘導する手島さんのほうを見た。
その目は愛おしさで溢れていた。

「あのマンションを手島にやろうと思う。
君は好きに行くといい」

「え………」

それは手島さんに直接秘書としてのノウハウを学んでもいいということだろうか。

「はい!」

オレは元気よく返事をした。




「それじゃぁ、夏斗くん、また……」

「はい」

オレは手島さんにそう声をかけられ振り返った。


洋館の前、あの大きな車が止まっている。
運転手が白い手袋をして前に手を組み、オレとハヤが乗り込むのを待っていた。

オレは制服に着替えた。
あのスーツは手島さんに預かってもらうことにした。

「まぁ、それ着るころには、もしかしたらもっと背が伸びていて着れなくなってるかもしれないけどね」

なんて言うと、ハヤがくくくっと声を殺して笑ったので、蹴り倒してやったけど。


まだ、オレにはあんな高価なスーツを着る資格はない。
これから秘書として、沢山の知識を入れ、ノウハウを学び、経験をする中で、オレはどこまでできるのかやってみてから、またあれに袖を通せたらと思う。


決意も新たに、オレとハヤの人生が動き出したんだ。



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