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応接室
2. オレの覚悟
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「んん……!?」
怪訝な顔をしたのは谷垣さんだった。
「…………」
ハヤは言葉を無くしていた。
オレは着慣れないスーツの襟を正し、ネクタイのいがみを直す。
「オレはまだ、子供でした。
ハヤに会いたいと思うあまり、周りが見えていなかったんだと思います。
自分が我慢すれば、ハヤの側に居られるかもしれないなんて、今までのオレとハヤの関係までも壊してしまうところでした。
オレはオレらしく生きなきゃいけないんだって、思います。
だから、オレはハヤと別れます」
話を聞きながら谷垣さんは再度ブランデーのグラスを手に、荒々しく口に含んでいたが、そのグラスを叩きつけるようにテーブルに置いた。
「なるほど……」
「ナツ……、本気…なのか……。俺、……」
ハヤはオレのほう向き、立ち尽くす。
谷垣さんは立ち上がるとオレのほうへ足早に近づいてきた。
ぐいっとあごを持ち上げられ、間近で顔を見つめられる。
谷垣さんはオレの眼差しを見、ふっと口角を上げる。
そんな谷垣さんの表情に、オレは畳み掛けるように言い放った。
「オレ、谷垣さんがハヤの側に置きたいって思えるような立派な秘書になろうと思います!」
「……オレ、今まで、なんとなく楽しいって思うことやってきました。
それにはオレの隣にいつもハヤが居て、それが当たり前のように思ってたんです。
将来のことは二の次で、今を一緒に居られたらそれでいいって。
でも、オレは今日から、ハヤとのこれからを考えていこうと思います。
やり方は間違っていたとは思いますけど、谷垣さんが……手島さんが、長く一緒に居るためにはどうしたらいいかを考えたように。
オレは、オレらしいやり方で、オレらしい生き方でハヤの側に長く一緒に居られるために、
今はハヤと別れて、ハヤはイギリスで頑張って自分の土台を築いている間に、オレは谷垣さんに認めてもらえるような男になると決めました」
仁王立ちで自分の思いの丈を一気に話した。
わかってもらえるだろうか。
ハヤにとってもオレにとっても、辛い厳しい決断なのはわかっている。
こんな大きな一流企業の社長秘書。
そんな簡単に認めてもらえて、なれるものではない。
今のオレの学力は学年で50位前後。
必死にならないといけないのもわかっていた。
でも………。
「手島さんに、秘書の仕事についてもいろいろ教えてもらいました。
ただ、側に居たいから、秘書になろうと思ったんじゃないんです。
秘書という仕事に興味が沸いて。
それに手島さんが楽しそうだったから……。
オレも好きな人の側で、こんな仕事ができたらいいなって思ったんだ。
これがオレらしい生き方なんじゃないかって。
これがオレの……覚悟です」
怪訝な顔をしたのは谷垣さんだった。
「…………」
ハヤは言葉を無くしていた。
オレは着慣れないスーツの襟を正し、ネクタイのいがみを直す。
「オレはまだ、子供でした。
ハヤに会いたいと思うあまり、周りが見えていなかったんだと思います。
自分が我慢すれば、ハヤの側に居られるかもしれないなんて、今までのオレとハヤの関係までも壊してしまうところでした。
オレはオレらしく生きなきゃいけないんだって、思います。
だから、オレはハヤと別れます」
話を聞きながら谷垣さんは再度ブランデーのグラスを手に、荒々しく口に含んでいたが、そのグラスを叩きつけるようにテーブルに置いた。
「なるほど……」
「ナツ……、本気…なのか……。俺、……」
ハヤはオレのほう向き、立ち尽くす。
谷垣さんは立ち上がるとオレのほうへ足早に近づいてきた。
ぐいっとあごを持ち上げられ、間近で顔を見つめられる。
谷垣さんはオレの眼差しを見、ふっと口角を上げる。
そんな谷垣さんの表情に、オレは畳み掛けるように言い放った。
「オレ、谷垣さんがハヤの側に置きたいって思えるような立派な秘書になろうと思います!」
「……オレ、今まで、なんとなく楽しいって思うことやってきました。
それにはオレの隣にいつもハヤが居て、それが当たり前のように思ってたんです。
将来のことは二の次で、今を一緒に居られたらそれでいいって。
でも、オレは今日から、ハヤとのこれからを考えていこうと思います。
やり方は間違っていたとは思いますけど、谷垣さんが……手島さんが、長く一緒に居るためにはどうしたらいいかを考えたように。
オレは、オレらしいやり方で、オレらしい生き方でハヤの側に長く一緒に居られるために、
今はハヤと別れて、ハヤはイギリスで頑張って自分の土台を築いている間に、オレは谷垣さんに認めてもらえるような男になると決めました」
仁王立ちで自分の思いの丈を一気に話した。
わかってもらえるだろうか。
ハヤにとってもオレにとっても、辛い厳しい決断なのはわかっている。
こんな大きな一流企業の社長秘書。
そんな簡単に認めてもらえて、なれるものではない。
今のオレの学力は学年で50位前後。
必死にならないといけないのもわかっていた。
でも………。
「手島さんに、秘書の仕事についてもいろいろ教えてもらいました。
ただ、側に居たいから、秘書になろうと思ったんじゃないんです。
秘書という仕事に興味が沸いて。
それに手島さんが楽しそうだったから……。
オレも好きな人の側で、こんな仕事ができたらいいなって思ったんだ。
これがオレらしい生き方なんじゃないかって。
これがオレの……覚悟です」
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