80 / 155
応接室
2. オレの覚悟
しおりを挟む
「んん……!?」
怪訝な顔をしたのは谷垣さんだった。
「…………」
ハヤは言葉を無くしていた。
オレは着慣れないスーツの襟を正し、ネクタイのいがみを直す。
「オレはまだ、子供でした。
ハヤに会いたいと思うあまり、周りが見えていなかったんだと思います。
自分が我慢すれば、ハヤの側に居られるかもしれないなんて、今までのオレとハヤの関係までも壊してしまうところでした。
オレはオレらしく生きなきゃいけないんだって、思います。
だから、オレはハヤと別れます」
話を聞きながら谷垣さんは再度ブランデーのグラスを手に、荒々しく口に含んでいたが、そのグラスを叩きつけるようにテーブルに置いた。
「なるほど……」
「ナツ……、本気…なのか……。俺、……」
ハヤはオレのほう向き、立ち尽くす。
谷垣さんは立ち上がるとオレのほうへ足早に近づいてきた。
ぐいっとあごを持ち上げられ、間近で顔を見つめられる。
谷垣さんはオレの眼差しを見、ふっと口角を上げる。
そんな谷垣さんの表情に、オレは畳み掛けるように言い放った。
「オレ、谷垣さんがハヤの側に置きたいって思えるような立派な秘書になろうと思います!」
「……オレ、今まで、なんとなく楽しいって思うことやってきました。
それにはオレの隣にいつもハヤが居て、それが当たり前のように思ってたんです。
将来のことは二の次で、今を一緒に居られたらそれでいいって。
でも、オレは今日から、ハヤとのこれからを考えていこうと思います。
やり方は間違っていたとは思いますけど、谷垣さんが……手島さんが、長く一緒に居るためにはどうしたらいいかを考えたように。
オレは、オレらしいやり方で、オレらしい生き方でハヤの側に長く一緒に居られるために、
今はハヤと別れて、ハヤはイギリスで頑張って自分の土台を築いている間に、オレは谷垣さんに認めてもらえるような男になると決めました」
仁王立ちで自分の思いの丈を一気に話した。
わかってもらえるだろうか。
ハヤにとってもオレにとっても、辛い厳しい決断なのはわかっている。
こんな大きな一流企業の社長秘書。
そんな簡単に認めてもらえて、なれるものではない。
今のオレの学力は学年で50位前後。
必死にならないといけないのもわかっていた。
でも………。
「手島さんに、秘書の仕事についてもいろいろ教えてもらいました。
ただ、側に居たいから、秘書になろうと思ったんじゃないんです。
秘書という仕事に興味が沸いて。
それに手島さんが楽しそうだったから……。
オレも好きな人の側で、こんな仕事ができたらいいなって思ったんだ。
これがオレらしい生き方なんじゃないかって。
これがオレの……覚悟です」
怪訝な顔をしたのは谷垣さんだった。
「…………」
ハヤは言葉を無くしていた。
オレは着慣れないスーツの襟を正し、ネクタイのいがみを直す。
「オレはまだ、子供でした。
ハヤに会いたいと思うあまり、周りが見えていなかったんだと思います。
自分が我慢すれば、ハヤの側に居られるかもしれないなんて、今までのオレとハヤの関係までも壊してしまうところでした。
オレはオレらしく生きなきゃいけないんだって、思います。
だから、オレはハヤと別れます」
話を聞きながら谷垣さんは再度ブランデーのグラスを手に、荒々しく口に含んでいたが、そのグラスを叩きつけるようにテーブルに置いた。
「なるほど……」
「ナツ……、本気…なのか……。俺、……」
ハヤはオレのほう向き、立ち尽くす。
谷垣さんは立ち上がるとオレのほうへ足早に近づいてきた。
ぐいっとあごを持ち上げられ、間近で顔を見つめられる。
谷垣さんはオレの眼差しを見、ふっと口角を上げる。
そんな谷垣さんの表情に、オレは畳み掛けるように言い放った。
「オレ、谷垣さんがハヤの側に置きたいって思えるような立派な秘書になろうと思います!」
「……オレ、今まで、なんとなく楽しいって思うことやってきました。
それにはオレの隣にいつもハヤが居て、それが当たり前のように思ってたんです。
将来のことは二の次で、今を一緒に居られたらそれでいいって。
でも、オレは今日から、ハヤとのこれからを考えていこうと思います。
やり方は間違っていたとは思いますけど、谷垣さんが……手島さんが、長く一緒に居るためにはどうしたらいいかを考えたように。
オレは、オレらしいやり方で、オレらしい生き方でハヤの側に長く一緒に居られるために、
今はハヤと別れて、ハヤはイギリスで頑張って自分の土台を築いている間に、オレは谷垣さんに認めてもらえるような男になると決めました」
仁王立ちで自分の思いの丈を一気に話した。
わかってもらえるだろうか。
ハヤにとってもオレにとっても、辛い厳しい決断なのはわかっている。
こんな大きな一流企業の社長秘書。
そんな簡単に認めてもらえて、なれるものではない。
今のオレの学力は学年で50位前後。
必死にならないといけないのもわかっていた。
でも………。
「手島さんに、秘書の仕事についてもいろいろ教えてもらいました。
ただ、側に居たいから、秘書になろうと思ったんじゃないんです。
秘書という仕事に興味が沸いて。
それに手島さんが楽しそうだったから……。
オレも好きな人の側で、こんな仕事ができたらいいなって思ったんだ。
これがオレらしい生き方なんじゃないかって。
これがオレの……覚悟です」
0
お気に入りに追加
3,698
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる