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手島さん

2. ……そうか、これも「覚悟」のひとつなのか。

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「イ……イギリス!?」

しゃべっていくうち意外とおしゃべりな手島さんから、衝撃の事実がつきつけられた。

「隼人さんが10歳の頃から決まっていたことです」

その時、静かに手島さんの胸ポケットから携帯電話のバイブ音が聞こえた。

ビクッ!!
はぁー……やだよ、この音。

気にし過ぎなオレ。

素早く手島さんは電話に出る。

「はい、意識は戻りました。はい、大丈夫です」

どうも電話の相手は谷垣さんのようだ。

「どうしますか?」

手早く用件だけを話して、電話を切るとオレに向かってそう言い放った。

「社長が、ご自宅に浜崎さんを連れて来なさいとおっしゃってます」

その手島さんの言葉には含みが混じっていた。


……そうか、これも「覚悟」のひとつなのか。


ハヤがイギリスにいるとわかった今、すぐにオレだけでどうにかして会うことは不可能だ。
まだまだ、ハヤのことがわかっていなかった自分に苛立ちを憶えながら、ここで引き下がるわけにはいかないと腹をくくった。

「いきます」

それは、谷垣さんの認識では、オレがハヤの性奴隷になる事を承諾したってことになる。
わかっている。
でももう何があっても、オレはハヤを追いかけるんだ。



すでに迎えの車がマンションの下に停まっていた。
やたら長い車だ。

運転手が白い手袋で屋根に頭をぶつけないようにガードしながら俺を車内に誘導する。
後に続いて手島さんも乗り込んだ。

前は運転席との仕切りがあり、完全に個室状態だった。

「……あのマンションが自宅じゃなかったんですか?」

「いえ、あそこは隼人さんが小学校を転校したいとおっしゃった時、学区内であるあの場所に社長が用意したものになります。
それ以来、隼人さんはあそこで一人で住んでいらっしゃいました。」

えっ!?一人で!?

確かにあのマンションでハヤの両親に会った事はなかった。
他にも部屋はあったが、ハヤの部屋はリビングダイニングに隣接していてバスルームもトイレも近かったため、他の部屋は勝手に両親の部屋だと思い込み、開けた事はなかった。
それに、小、中学生が一人暮らししているなんて誰も思わない。

「とはいっても社長の監視下のもとででしたけど」

あー……通販で買った「大人のオモチャ」の内容まで把握していたんだからな……。

ちょっときちがいじみた行動に、オレの価値観を当てはめてもダメなんだと悟った。


でも、その転校した頃にはもうイギリス行きは決まっていたってことだよな……。

さっき谷垣さんが言った言葉がよぎった。

『なかなか駆引きの上手いやつでね。
わたしがやれと言った事をこなし、その代わり自分の希望も言うようになった。』

「それってイギリス行きと引き換えだったってこと?」

「…………」

んだよ!今まただんまりかよ。




「後悔……しませんか?」

不意に手島さんから言ってきた。



「手島さんは後悔してんのか?」

彼の立場がいまいちわからなかったオレは、その言葉の意味をよく考えもしなかった。

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