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新学期

2. あの……センセ、谷垣は?

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『始業式が始まります。全生徒は体育館に整列してください。』

校内にアナウンスが流れ、生徒たちはぞろぞろと教室から出て行く。
その中でオレはずっとハヤの姿を探していた。

「よぉ!夏斗!!」

オレの背中をバシッと叩いてきたのは、中学から一緒の片岸勇次(かたぎし ゆうじ)。
高校からは弾けて、けっこうヤンチャしてるやつだ。

「どうだった?夏休み!
ヤリまくったんじゃねぇー?!」

勇次は自分の腰をガンガン振りながらオレに言ってきた。

どきっ!!!
「えっ?!」

動揺を隠せない。

「うっわ!!マジか?!
やっぱ、夏は女を解放的にするんだなぁ~」

女……   あっ!
そういえばこの夏付き合ってた子、こいつと行った合コン先で知り合ったんだった。

「ま……まぁーな。
でも、まっ、別れたんだけど……」

きょとんとした顔。

「またかよぉーーーー!!
なに?ヤリ逃げ?それともヤリ逃げられ?」

「別にどっちでもねぇーよ」

なんだか嬉しそうに聞く勇次がうっとおしくて腕を払いのけた。



咽返る熱気の中、校長の話が長い。
背の順で一番前のオレは、目の前に立つ先生に睨まれて後ろの方に居るはずのハヤの方を振り向けないでいた。
久々に着る制服のワイシャツがとても堅苦しく、始業式の後ネクタイを緩め第一ボタンを外した。

「うわっ! なに、これ……」

勇次がオレを指差して驚く。

あっ、しまった!
……なんて、あんまり思ってなかったりして。

首もとにはキスマーク、そして首輪の擦れた痕があった。

「へへっ」

オレは照れて見せた。


一瞬勇次の動きが止まったが、すぐにへらっと笑ってオレの首を絞めてきた。

「なんだよ!!
あの子と別れたなんて言ってて、ちゃっかり本命とでも上手くいったのかよ!コノヤロー!!」

だめだ、嬉しさが顔に出る。

「しかし、何してそんなハードに痕が付くんだ?SMでもしたのか!?」


ガラッ

「はい、席に着けー!」
その時勢いよくセンセイが入ってきた。


よかったー……アレ以上突っ込まれたらマジやばかった。

えっ、そういえば、ハヤ教室に帰ってない?
来てるよな……多分。

ガタガタと机が動く音を響かせ、皆席に着いた。
またも背が低いオレは一番前の席だが、今度は一番窓側なので横向きに座り教室をきょろきょろと見渡す。


全部の席が埋まっているがハヤの姿がなかった。


先生はまず俺の列から新学期最初のプリントを配る。

「あの……センセ、谷垣は?」






「ん? あいつなら一学期で退学したぞ」



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