僕はオモチャ

7

家族

「……え……」

驚きのあまり目を見開いた僕は、その一言だけ口から出てただただ父さんの顔を見る。
そしてゆっくり僕の斜め前に座る母さんの顔に視線を移した。

「どういうこと…、僕だけ貰われっ子……なの?」

僕は家族の中で実は孤立していたんだと思ったら急に不安が過って、そんな気持ちを察知したのか普段はおっとりしている母さんが凄い早口でしゃべり出した。

「ち…違うのよ。あのね、雅春さんと昴くんはお父さんとお父さんの前の奥さんの子どもさんで、健はお母さんから生まれたの。
それからお父さんは前の奥さんと別れてお母さんと結婚したから血は繋がってはいないけど、正真正銘ちゃんと親子だし兄弟なのよ……。
貰われっ子だなんて……」

「雅春の独立と昴もここから巣立つのを期に、健には本当のことを話そうと決めていたんだ」

父さんは真っすぐ僕を見てそう言った。

「でも…こ、これからだってお父さんは健のお父さんだし雅春さんも昴くんも健のお兄さんに違いないのよ」

僕が動揺していると感じたのか母さんは父さんの言葉に付け加えて言うと、「ねっねっ」と皆の同意を求めた。
雅ニイも昴ニイもにこやかに微笑み、慌てる母さんを落ち着かせようとしている。
父さんはうんうんと頷いていた。

僕は兄二人を見る。

「雅ニイも昴ニイも……知ってたの?」

二人は静かに頷いた。


だから雅ニイ昴ニイと僕は似ていなかったんだ……。
だから僕は……、僕は……。

この二人を兄とは違う意味で惹かれていった自分のことが今ようやく理解することができ、心配する両親をよそに僕は心のどこかで納得していた。

「うん…そうか……、そうだったんだね。
心配しないで。驚いたけど、ショックはないよ。僕が物ごころ着いた頃からお父さんはずっと僕のお父さんだし今までもこれからも変わらないから」

僕がそう言うと、両親ともホッとした顔をした。



「それとね……、皆に大事な報告があるの……。えっとね……お父さん……」

母さんが話し出したのに、モジモジしてからそのまま父さんに振る。
今度の話は兄二人も初めて聞くようで、興味深く両親を見ていた。

「ゴホンッ……、えっとな……、父さんと母さんの間に新たな命がもたらされてだな……」
「来年には生まれるの!」

「ええっっ!!!」

言い回しに諄い父さんの報告に母さんが嬉しそうに被せてきた。
僕たち兄弟は一斉に驚きの声を上げる。

「高齢出産だが、まぁ…母さんもまだ気持ちは若いから大丈夫だろうと思うし……」

「おめでとう、父さん母さん」
「おめでとう!!」

僕たち兄弟は口々にそう言った。

「ありがとう!
雅春さんも昴くんもこの家を出てしまうし、健はなんだか最近うんと大人になって……もう少しで高校生でしょう?
寂しいわって思っていたところで、諦めていたのにお父さんとの間に赤ちゃんができて本当に嬉しいの」


……そうか、もうすぐでこの家には雅ニイも昴ニイも居なくなるんだ……。

ぎゅうっと胸が締め付けられる想いになっていた。