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第一章~出逢い~

トコトノカジリ

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「さあ、どうしますか?人神にんじん…依代様…」

「ぐ………クソ……!!!」


(っ…どうしたら、良いの?)

『おやおや、大変面白い事になってるねぇ~』

「ん……?」

声のする方を振り返る─────が、誰も居らず。

「あ、あれ……?」

『おや、依代ちゃん、僕の声が聞こえるんだねぇ』

「声」はクスクスと笑う。いとはこの声に聞き覚えがあった。

(この……声って───鴉に襲われた時に……)

『だいせいかーい!』

(ひい!?心の声に反応した!!)

『君を鴉から助けたのは僕だよんっ』

その「声」は少し高く、特徴のある語尾を付けながら喋る。

(貴方が………!!───その節はありがとうございました)

「……貴女……さっきから誰にお辞儀をしているのですか?───」

「はっ……!!───い、いや……その───」

『依代ちゃん、イガルクに決闘を申し込んでみなよ』

「ええ!?む、無理ですよ!!!───」

「……この状況で頭が逝かれてしまいましたか。」

『あはは笑 頭が逝かれただってぇ~、酷いねぇ~』

「!怒(だ、誰のせいですか!!泣)」

『……でも、イガルクに勝てば形勢逆転だ。君の持つレイピアは、アマテラスの力が宿っている。相手は神だ────人間が一度決めて、誓った言葉に偽りがなければ…それを受け容れる。それに──君は、そのレイピアを持つ事によって、神と同等の力を得ている。』

(で、でも……!私……、倒せる自信なんて……)

『自信はねぇ~…持つものじゃなくて、自然と身に付いてたりするもんなんだよねぇ~───だから、やるだけやってみたらどうかねぇ~』

(自然と……身に付く────……ん?、って…なんでアマテラスさんの事知ってるんですか!?)

「声」に問い掛けるも、反応が無かった。

(ええーー!?嘘でしょーー!!………でも───)

自分に出来る事と言ったら……────
いとは背負っていたレイピアを抜き取る。

「ほお……、そんな物で私に対抗すると?───そんな事をすれば天狗長てんぐちょうの身体は傷付きますよ?」

チャキ……──────
レイピアの先端がキラッと光る。

「天狗長さんは……………傷付けない……殺させない」

「……何ですって?」

いと…お前───」

「イガルクさん、1体1で勝負しましょう。……貴方が勝ったら、私は死にます。でも、私が勝ったら、皆を解放して、此処から退いてもらいます!!」

「……その言葉に偽りは……なさそうですね────ククク…!良いでしょう!!」

イガルクは天狗長の身体から光を放たせ、天狗長の身体から青黒い玉の様な物が浮かび上がり、そのまま人の姿へと変える

「な………、う……嘘でしょ……」

「うふふ、貴女は非常に愚かで面白い人間ですね……───貴女の"姿"で、私は貴女を殺します」

いとの姿に変えたイガルク。
もぬけの殻状態の天狗長の身体は地面にへと倒れた。

「師匠!!!」

「タイムリミットは10分と言ったところでしょう………。しかし、私を倒さなければ……天狗長は死にます。……ククク、貴女に助けられますかねぇ……?───依代様」

「……大丈夫────自信は……自然と身に付くもの」

いとは目を閉じて、胸に手を当てた。

「ッ…いと!お前じゃ無理ッス!!……、とてもじゃないけど、お前が……倒せるなんて……」

「ダルマさん…───いえ、火輪かりんさん!、私を信じて下さい。私が必ず……助けます。」

「…!……」

「イガルクさん、勝負です!!」

「ふふふ……!!余裕をかませるのも今のうちですよ!!!」

イガルクは掌から先端がかなり鋭くできた氷柱を生み出した。そのままいとに襲いかかる──────

「ぐっ…………、クソ!……いと!!!」

「無茶だ……、いと1人で…太刀打ち出来る相手ではない……!」

あきら天道てんどうが身悶える中、2人の脳内に「声」が響いた

『奴は、『火』に弱いよねぇ……。あきらちゃんなら、奴を倒す事は出来るんじゃないかな?。天道てんどうちゃんは奴の動きを封じ込めるんだ。そしたら……────』

「……!、この声……」

「……私にも聞こえた────まさか……」



キィンッ!!─────────
剣の交わる音が響き渡った

「ほら、ほらほら……5分経ちましたよ?」

「う……くっ……!!」

(だ……駄目………、全く隙がない…!。レイピアで受け止めるだけで精一杯……!)

「アマテラス様の力を扱うにはまだ早すぎたのですよ……」

「……うっ!」

「大人しく私に降伏しなさい!……ツクヨミ様の為に─────」

「嫌……です!!」

キィンッ!!!!

「……!?、私の氷柱を跳ね返した…ですと?」

「やった……!!、跳ね返せた!!」

「小娘が!!!……」

大量の氷柱がいとに向かって降り注ぐ。

「そ、それってありなのーーーーー!?」

いとは避け切れそうになく、そのまま動けずに固まっていると─────

電光石火・冠菊でんこうせっか・かむろぎく!!!!』

ピシャンッ!!!!!!バンッ!!!!!!

大量の氷柱に花火が打ち上がった。氷柱は粉々に砕け散り、氷の雨が降る。

「……私の氷柱を粉々にするとは……」

「……」

「卑怯ですね……、1体1ではなかったのですか?」

「嗚呼、1体1ッスよ。戦うのは俺じゃない、いとだ。でも…仲間がピンチな時は助けるのは当たり前ッス」

「か、火輪かりんさん……!」

いと、お前がお師匠を救えるなら……───頼む……、助けてくれ。」

カァ…と、微かにレイピアが光る。

「だから、俺はお前を応援するッスよ?───お前なら、あんな氷柱馬鹿…倒せるッスよ!」

ニカっと笑う火輪かりん

「は……はい!!!」

負けない──────
今こそ立ち向かわねばと……自分の弱さに決着をつける時だ─────

「はぁっ!!」

キィンッ!!!─────

「っ……!?力が強くなっている……」

「負けない……、絶対負けない!!。私は……あなたに勝つ!!」

「……!今度こそ粉々にしてくれる!!」

今度は巨大な氷柱を生み出し、それはいとの心臓を狙った─────すると

 十言神呪とことのかじり……』

「とことの…かじり?」

『"アマテラスオオミカミ"……と唱えるのです。御神体が三つ……この場に揃っていれば……、イガルクを倒せる力はあるでしょう』

「あなたは……────」

『……刻が来た時……きっと─────』

美しい「声」────それは、女性とも男性とも表せないような中性的な雰囲気を持っていた。

「……!、"アマテラスオオミカミ!!"」

カァァァァッ!!!!!──────

「な、何!!?」

燃えるような炎がレイピアから放たれ、そのまま氷柱と共にイガルクの腹部に貫通した。

「ぐっ!!!あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!?」

「ッ!────向日葵薔薇狙撃者サンローズスナイパー!!」

天道てんどうの矢がイガルクを捕える

「ば……馬鹿な!!!、貴様らは月下げっかに───」

「…火輪かりんが砕いた、貴様の氷柱に自ら当たりに行って自滅した…。恨むなら自分を恨め……─────今だ!!あきら!!!」

炎華琰蹴ほむらかえんげり!!!」


ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ーーーーーー!!!と、悲痛な叫び声を上げ、炎に焼かれていくイガルク。

「た……倒した……の?」

イガルクの焼かれた身体から、青黒い玉が現れた。

「……なかなかやるようですね……。しかし、次はこうはいきませんよ!!……、必ず…殺してやる!!」

そのまま玉は消えてしまった


「やった………私、倒したの?」

「ええ───紛れもない、貴女様が打ち破ったのです。」

振り返ると、血を流した鴉を抱きかかえた、今度こそ正真正銘の天狗長が立っていた。

「お……師匠……」

「ダルマ─────」

「は、はい!!」

「迎えじゃ……───依代様は、お前を必要としている。行け───刻が来たのじゃ」

「っ………お師匠……!」

「依代様に尽くし、この世界に……太陽を……永久に照らせ────」

火輪かりんの眼には涙が浮かんでいた。朝露のように美しく──────

火輪かりんさん……」

いと火輪かりんの思いを悟り、胸を痛めた。
共に過ごし、生きてきた師との別れは
彼にとって何よりも辛いものであろう。

(ごめんなさい……)

太陽が昇る──────
いつの間にか夜が明けていた。

いと!!」

あきら!!天道てんどう!!……無事で良かっ─────」

「……ッ……馬鹿野郎!!」

「あ……きら……」

力強く抱き締められ、全身が紅潮していくのが分かる。同時に安心感を覚え、そのまま睡魔に襲われた。

(なんだか……少し、疲れちゃった…)



『よく頑張ったねぇ、依代ちゃんっ』


「ゆっくり、おやすみ……」と、囁く声は、そよ風のようにいとを癒した。
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