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第一章~出逢い~

鴉の導き

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昔見た絵画で、西洋の貴族達が大きな食堂で豪華な食事をしていて、食堂は煌びやかな装飾が施されていた。
”いつか、こんな空間で私も食事がしてみたい”
なんて幼きながら抱いた願望をいとは思い出していた。

(こ、この状況は……)

横並びのテーブルには豪華な食事────
部屋全体には西洋風の煌びやかな装飾───
まさしく、幼い頃の願望が現実になっているのだ。

(お、美味しそうな野菜や…スープ…お肉にパン……。そういえばご飯食べてなかったなぁ……)

然し、いとは緊張で体が上手く動かず、グラスに注がれた水をちびちび飲むのが精一杯だった。横目で何も気にせずにムシャムシャと食べているあきらに少しの苛立ちを覚える。

(もう…、あきらったら……1人でご飯食べて……!)

いと、本当に心から感謝致します。」

「ワシらと天道てんどうの呪縛を解いてくれて、ありがとう」

先程まで可愛らしい妖精のような姿をしていた、天道てんどうの王と王女は、呪いが解け、元の姿へ戻った。高貴な気品溢れる佇まいに、いとは更に恐縮してしまった。

「ぜ、全然私は何もしてなくて……。天道てんどうが、自分で呪縛を解いたんです。」

自然と零れた、少し恥ずかしい台詞に、頬を赤らめる。向かいに座っていた天道てんどうは、ワインをひと口───上品に飲んだ。
先程まで大人びた青年へと姿を変えていたのに、あっという間に元の可愛らしい少年の姿へと戻ってしまった。

(力を使う時だけ、大人びた姿に変身出来るって……、なんて羨ましいのっ!)


「いえ……、いとが居てくれたから、私の呪縛は解かれた」

「まあっ……、それはの力という物で?」

「ブーーーッッッ!!!げほっ!!……ゴホッゴホッ!!」

「あ、あきら!!……だ、大丈夫!?」

「だ……大丈夫じゃ……───ねぇ!!!」

「ホッホッホッ!”じぇらしぃ”か?、若造よ」

「まあまあ、そうなの?若造よっ」

「ばっっっっっ!!!、ちっげぇよ!!!」

(ジェラシー……=嫉妬!!?)

「お、おいいと!、飯食わねぇのか?」

「へっ!?」

「食わねぇなら……オレが貰って───」

「た、食べます!!!」

ぐっぎゅるる~~~

(ひいぃぃぃ?!何故このタイミングでお腹が鳴るの!!?)

シン……────と、場が静まり返った。穴があったら入りたいと、全身紅潮させたいとは俯く。

「ふ……ふふ───」

小さく声を漏らしたのは、ワインを一気飲みし、頬を紅潮させた天道てんどうだった。

「あははは、可愛い音っ」

「へ」

「可愛すぎて……食べちゃいたいなぁ~……食べて良いかな?」

「す、すみません!!!、めちゃくちゃキャラ変わってるのですが!?」

天道てんどうの酒癖にも困ったものですね……。」

「酒を飲むと、精神年齢5歲くらいの変態になるんじゃ……」

「いやいやそんな神妙な面持ちで言われても!!!」

いと……、ん~~~っ」

いつの間にか目の前には端正な顔立ち。天道てんどうの顔が段々と迫り、後数cmで唇が触れてしまいそうだった。

「ひいぃぃぃ!?」

「でえぇぇぇい!!!させるかあああ!!!」

ぶちゅううううっっっ!!!─────

天道てんどうの唇はいとではなく……

「あ……あきら……」

「ぎゃああああああああ!!?」


あきらの悲痛な叫び声が王宮内に響いた










太世たいせ鴉天狗からすてんぐ奉行所にて───

この國では、罪人を引っ捕える者達を鴉天狗と呼んでいる。
その鴉天狗の長である、天狗長てんぐちょうは天狗の仮面を身に付け、その下に仕えるからすと呼ばれる者達は黒い衣服を身に付けるのが掟である。

カン…ッ───カンッ─────

天狗長てんぐちょうは鴉の羽根が付いた木の杖を地面を使って打ち鳴らし、鴉達に集合をかけた。

からす達よ……、太陽が消えかかっている事は存じているな?。」

天狗長てんぐちょう。本日の巡回時に、この國に、アマテラス様の依代となる娘っ子が召喚されたと噂が広まっとるじゃ……」

「それは……誠か」

「オラはこの耳で聞いたけろ」

1人のからすの噂に周りはざわつき始める。然し、天狗長てんぐちょうは表情1つ変えずに
「それは”偽物”であろう。」

そう言った。

「え、で、でも……、神婆しんば様がそう言ってたって────」

「───私の言う事が……嘘と言いたいのか?」

「い、いや……そういう訳では……」

天狗長てんぐちょうの威圧感に誰もが恐れている中────

「───じゃあ、天狗長てんぐちょうの言ってる事が、本当って証拠はあるんスか?」

1人だけ───恐れない鴉が居た。

「………ダルマ・アマラスか───」

「……あんた───…本物の天狗長てんぐちょうッスか?」

ダルマ・アマラスと呼ばれた鴉の1人の少年は、天狗長てんぐちょうを睨み付けた。

「お、おい!!ダルマ!?」

「なに言ってんださ!?」

「あのお方は正真正銘、天狗長てんぐちょうじゃけろ!?」

カァカァと鳴くように、他の鴉達は慌ててダルマの口を塞ごうとする。

「お前ら分かんないスか!?、天狗長てんぐちょうは、あの神婆ばばあの言う事は絶対信じてたッス!!───それなのに……」

「ほお……、この私が”偽物”と、お前は言いたいのか。」

「……だと言ったら?」

「なら────お前を鴉天狗からすてんぐから追放する。」

「………」

「ちょ、ちょっと待ってけろ!!天狗長てんぐちょう!!」

「ダルマは鴉天狗からすてんぐにとって、必要不可欠な存在じゃ!」

「そうじゃ!!…───唯一、月下げっかに対抗出来るのは……」

「あー、もう良いッスよ───」

「ダルマ……!」

「……必ず、本物の天狗長てんぐちょうを見つけてやるッス…。」

「ダ、ダルマ!!─────」

走り去るダルマを、鴉達は見ている事しか出来なかった。

「……正義を宿した太陽の眼……───ダルマ……、お前は、依代と共に死ぬ────」

天狗長てんぐちょうは口角を上げ、その場から姿をくらました。












「んー!、いいお天気だね……───って…あ、あきら?……天道てんどう…………、だ……大丈夫?」


あれから一夜明けて、いと達は次の人神にんじんに逢いに行く為、王が用意してくれた馬に乗り、森林を彷徨っていた。
勿論───いとに土地勘があるわけない。
頼りになるのは、この國に住む、あきら天道てんどうだが……

「……うっ……ぷ」

「おええええええ……」

(…さっきからこれだもんな……。まあ……、”キス”……しちゃってたからね……)

思い出しただけでも中々濃厚なシチュエーションだった。

カァ……!カァ……!──────

(カラス?……)

空を見上げると、無数のカラスが飛んでいた。

「なんだか……不気味かも……」

「鴉が多い……と言う事は、この近辺で鴉天狗が巡回をしているのだろう。」

「鴉天狗?」

「分かりやすく言うと、民が平和に暮らせるように巡回をし───罪人を捕らえて、罰を与える者達。」

(お巡りさんみたいな人達って事かな?)

まだ少し顔は青ざめていたが天道てんどう人神にんじんの手がかりとなる地図を取り出した。すると、地図には神眼しんがんと浮かんでいた。

神眼しんがん……」

「神様の眼?…」

バサッ!バサッ!────

「カアッ────」

一羽の鴉が地図の上にとまる。
すると鴉は────
「”人神にんじん”を捜しておるのか?」

人の言葉を喋った。
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