キャロット・コンプレックス

田中まぐろ

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第一章~出逢い~

月神襲撃

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いと。高天原から此処までの道のり、大変御苦労であったな。ワラから、全て話は聞いている────」

私達は謁見の間に案内され、王子様は玉座に腰を下ろした。

(改めて見ると…王子様……本当に綺麗…)

「改めて……私は、サン・カネッラ・アマノラス第二王子。そして、御神体の名は神髪しんはつ 。神名しんめいは───天道てんどうだ。」

天道てんどう…さん」

「そんなに畏まらなくてもい。」

(どんな仕草しても美しい!!!)

「宴には参加させて頂く───と、言いたい所だが……。私は、外に出ようとすればする程、…体の力が入らなくなるのだ。」

「ど、どうして…」

「私にも原因は分からない……。15の歳を迎えた瞬間からだった。國の首都である太世たいせに足を運ぶ事さえ叶わなかった。この王宮内と庭園でしか、私は…」

「王子様……」

「────甘ったれてんじゃねぇよ」

「あ、あきらさん!?」

「お前、まだに縛られてんのかよ?。」

(過去……?)


「それは……お互い様だろう。それに…───…父上と母上が先日……」

ぴょこぴょこ!

『そこの若造!、我が息子になんて口の利き方をするんだっ』

(ん?)

ぴょこぴょこ

『まあまあ、パパ。あきらちゃんも悪気はないとは思いますよ』

(え……なんか……、皇子様の両肩に…妖精みたいなのが見える……)

口振りからして、皇子の父と母────
つまり、王と王女だ。可愛らしい姿にいとは困惑してしまった。

「父上……母上……、あれ程大人しくしていろと……」

天道てんどうの父ちゃん、母ちゃん!?なんつー姿に……」

「え、えええええ!?」

お、お父さんとお母さん!?。

『まあ、可愛らしい娘さんだこと。貴女が、アマテラス様の依代様?』

ンショッ……と動くミニチュアサイズの皇子様のお母さん!?は、皇子様の肩から、ふわふわとゆっくり私の掌まで移動をしてきた。

「は、初め…まして」

『初めまして。ワタシはこの國の王女。天道てんどうの母です。』

『因みに───ワシは、パパじゃ。』

いつの間にかお父さんまでもが、私の掌に移動していた。

「あ、朝日いとと、申します…!」

いと、この様な姿な事をお許し下さい。ワタシとパパは、ツクヨミによってこの様な姿に変えられてしまいました……。』

「ツクヨミに……!?」

『この呪縛はかなり強力での……、ちょっとやそっとじゃ、解けない仕組みになっておる。天道てんどうが外に出る事が叶わないのも恐らく……』

「どうしてこんな事を……。何か方法はないんでしょうか…?」

『ツクヨミ以外に、この呪縛を解く方法は残念ながらないのだ……。』

『ツクヨミがこの呪いをかけたのは、太陽を永遠の闇に閉じ込める為……───かつて、アマテラス様がそうされたように……』

(どうして……、ツクヨミはこんなに太陽を……。いくら、天照大御神が…人間を好きになったからって……)

「し、失礼します!!!、王宮内に賊が侵入しました!!!」

慌てて入ってきた衛兵の1人に、周りの者達はざわつき始める。

「賊だと?、守衛達はどうしたのだ!」

皇子が玉座から立ち上がると、一気に空気が張り詰める。すると、慌てて入ってきた衛兵の後ろに謎の黒い影が─────

「みぃーつけた……」

ザシュッ……と、何かを貫く音

ポタ────ポタ……

「ふん、人間の血は不味くて仕方ありませんわ……。やっぱり、でないと」

バタリと倒れた衛兵の背中には、剣が刺さっていた。

「い、いやあああ!!!……」

いと!、落ち着け!」

あきらに抱き寄せられ、いとの体は震えが収まらなかった。

いと……?。では、そこの小娘が」

黒い影は月明かりに似た光を放ち、黒い影から髪を二つに結った女の姿へと形を変える。
すると、王と王女は青ざめた表情を浮かべ

『つ……月神の一族!!』

「おほほほほほほ!!!、この國の王と王女ではありませんか……。なんとも無様な姿ですこと……。」

「貴様、何者だ!?」

「アタシの名は、コヨルシャウキ。ツクヨミ様に仕える、月神の一族の1人さ。そこの小娘の命と背中の神器は、頂戴させて頂くよ!」

「…ッ、おい、天道てんどう!!、いとと父ちゃんと母ちゃんを連れて逃げろ!!」

「な、何を言ってるんだ!!お前1人に何が───」

「オレが護ってみせんだよ。てめぇよりかは使えるだろ。…良いから早く行け!!」

「あ、あきらさん…!!!」

いと、心配すんな。オレが、護ってやるから」

いとの頭に軽く手を乗せるあきら。手を肩まで滑らせ、天道てんどうの元に思い切り突き飛ばした。

「あ……!!」

「王子、此方へ!。避難扉のロックを解除致しました。」

玉座が横にスライドし、地下へと続く階段が現れた。

「!……いと!!」

アダンに誘導されながら、天道てんどうは思い切りいとの腕を引っ張る。

「あ…あきらぁぁーーーーっ!!!」

眼に涙を浮かべ、思い切り叫ぶ少女の声を耳にしながらあきらは喜びを噛み締める。

「アンタ……、何をそんなにニヤついているんですの?」

「そりゃあ……、ちょっと気になる女の子から、呼び捨てにされたんだぜ?。」

手脚から炎を発動させ、あきらは笑みを浮かべる

「それが、どれ程の力になるか……───あんた、知ってるか?」

「なら、その力と呼べる愛を……ズタズタに斬り裂いて差し上げますわ!!!」
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