10 / 13
「タイムリミット2」
しおりを挟む
あの5回忌から、数ヶ月が経ったある秋の日。私と紗倉は、休みが重なったため街へ繰り出した。
「ちょっと肌寒くなってきたね」
ほのかに秋を感じるからっ風が吹くなか、私と紗倉の2人は住宅地を歩いていた。
「そうね、ほら紗倉寒いでしょ?コート貸すわ」
「あ、ありがとう…でも私マフラー持ってるから大丈夫だよ」
私と紗倉が何気なく道を歩いていると、向こうの方から見覚えのある人物が歩いてくる。
「ねえねえ柴乃、あれってもしかして」
「ん?なに?どこ?」
「ほら、正面。こっちに歩いてくる人だよ。」
そこにいたのは、私達のクラスの委員長でもあった菜白だった。
「あれ?もしかして菜白さん?」
紗倉が菜白に駆け寄り、声をかけた。
「あ、…その…どなたですか?」
菜白は顔を上げた。顔には黒ぶちのメガネ。髪の毛はポニーテールでまとめてある。服装は白のコートに紺のパンツ。いかにも優等生的なスタイルだ。
「あ、ごめんなさい。私高校の頃、同じクラスだった市ノ瀬 紗倉です。」
菜白は思い出した顔をした。
「あぁ…紗倉さん。そういや春にあった同窓会にも出席されてましたよね?」
「はい、柴乃と一緒に…」
「私も参加してたんです…まぁずっと受付に居たので…気づきませんよね…私の事なんて、」
菜白が再び寂しそうな顔を下げた。思わず私も話しかけた。
「そんなことない。私は覚えてた。菜白さん、やっぱり変わらないなって思ってた。今さらになって…申し訳ない…」
「いえ、こちらこそ。…立ち話も難儀なので、近くの喫茶店に入りませんか?」
私たちは駅の近くにある昔ながらの喫茶店に入った。ここには学生時代にもよく紗倉と2人で来ていた。なんだか懐かしいような寂しいようなそんな気がした。
私たちはカウンター席に座った。それぞれがカウンター内に居たマスターに飲み物を頼んで、静かに待っていた。ゆったりめの店内BGMが流れている中、口を開いたのは菜白だった。
「あの…おふたりは、どうして駅周辺に?」
紗倉は私と顔を見合せた。
「それは何となく。外に出たくなって…それで柴乃の家からここまで2人で歩いてきたんです。」
「そうだったんですね…なにか理由があるのだと思い聞いてみただけですので、お気になさらず…」
相変わらずな少し堅苦しい菜白の話し方に思わず吹き出してしまった。
「なぜ笑うんですか!柴乃さん!」
「いやwだって…菜白さんってば、話し方が学生時代から1ミリも変わってなくてwなんだか…懐かしくて…」
私はハンカチですこし出ていた涙をぬぐった。
「あ、私ちょっとトイレに行ってくるね、2人でちょっと話してて」
「分かった。気をつけなさいよ紗倉。アンタドジなんだから」
「分かってるって」
紗倉が席を外す、それを菜白が目で後を追う。
「菜白さん…」
「はい、なんでしょう」
菜白が私に振り向いた瞬間。トイレのほうからドサっと音がした。私は思わず立ち上がり急いでトイレに向かった。
「ちょっと、紗倉大丈…ッ!?」
そこにはトイレの扉の前で倒れている紗倉の姿があった。私はすぐさま駆け寄り、紗倉の上半身を持ち上げた。
「紗倉!紗倉!聞こえる?紗倉!」
私は大声で紗倉の名前を呼んだ。
「…ッ…ゴホッ!ゴホッ…柴…乃…ハハ…発作きちゃった…」
「だから厚着しなって言ったのに…アンタ…薬は?」
「家に忘れちゃった…」
「今から家に帰ったとしても、アンタが危なくなるだけ…」
私は考えた。病院だ。病院に行けば紗倉が助かる。そう考えた私は菜白さんを呼んだ。
「菜白さん!タクシーの手配をお願いします!」
「はい、わかりました!」
スマホを取り出し電話をする菜白。只事では無い様子を悟ったマスターが水とタオルを持ってきた。
「ありがとうございます。マスター」
マスターが気を利かせて、紗倉をおんぶさせて、店のソファに寝かせた。
その後、菜白が手配したタクシーの後部座席に紗倉を乗せた。私は紗倉の横に座り、菜白は助士席に座った。少し、紗倉の顔色が悪く見えた私は、紗倉に水を飲ませようとした。
「紗倉、ほら水…飲んで?」
紗倉は、少しではあるものの口を開けたので、マスターから貰った水の入ったペットボトルを開けてペットボトルの蓋に水を入れ、紗倉の口に運んだ。紗倉はゆっくりと飲み込んだ。
「大丈夫だからね、もう少しで病院に着くから、安心して、私を信じて。」
紗倉は、コクッとゆっくり首を縦に振った。
「ちょっと肌寒くなってきたね」
ほのかに秋を感じるからっ風が吹くなか、私と紗倉の2人は住宅地を歩いていた。
「そうね、ほら紗倉寒いでしょ?コート貸すわ」
「あ、ありがとう…でも私マフラー持ってるから大丈夫だよ」
私と紗倉が何気なく道を歩いていると、向こうの方から見覚えのある人物が歩いてくる。
「ねえねえ柴乃、あれってもしかして」
「ん?なに?どこ?」
「ほら、正面。こっちに歩いてくる人だよ。」
そこにいたのは、私達のクラスの委員長でもあった菜白だった。
「あれ?もしかして菜白さん?」
紗倉が菜白に駆け寄り、声をかけた。
「あ、…その…どなたですか?」
菜白は顔を上げた。顔には黒ぶちのメガネ。髪の毛はポニーテールでまとめてある。服装は白のコートに紺のパンツ。いかにも優等生的なスタイルだ。
「あ、ごめんなさい。私高校の頃、同じクラスだった市ノ瀬 紗倉です。」
菜白は思い出した顔をした。
「あぁ…紗倉さん。そういや春にあった同窓会にも出席されてましたよね?」
「はい、柴乃と一緒に…」
「私も参加してたんです…まぁずっと受付に居たので…気づきませんよね…私の事なんて、」
菜白が再び寂しそうな顔を下げた。思わず私も話しかけた。
「そんなことない。私は覚えてた。菜白さん、やっぱり変わらないなって思ってた。今さらになって…申し訳ない…」
「いえ、こちらこそ。…立ち話も難儀なので、近くの喫茶店に入りませんか?」
私たちは駅の近くにある昔ながらの喫茶店に入った。ここには学生時代にもよく紗倉と2人で来ていた。なんだか懐かしいような寂しいようなそんな気がした。
私たちはカウンター席に座った。それぞれがカウンター内に居たマスターに飲み物を頼んで、静かに待っていた。ゆったりめの店内BGMが流れている中、口を開いたのは菜白だった。
「あの…おふたりは、どうして駅周辺に?」
紗倉は私と顔を見合せた。
「それは何となく。外に出たくなって…それで柴乃の家からここまで2人で歩いてきたんです。」
「そうだったんですね…なにか理由があるのだと思い聞いてみただけですので、お気になさらず…」
相変わらずな少し堅苦しい菜白の話し方に思わず吹き出してしまった。
「なぜ笑うんですか!柴乃さん!」
「いやwだって…菜白さんってば、話し方が学生時代から1ミリも変わってなくてwなんだか…懐かしくて…」
私はハンカチですこし出ていた涙をぬぐった。
「あ、私ちょっとトイレに行ってくるね、2人でちょっと話してて」
「分かった。気をつけなさいよ紗倉。アンタドジなんだから」
「分かってるって」
紗倉が席を外す、それを菜白が目で後を追う。
「菜白さん…」
「はい、なんでしょう」
菜白が私に振り向いた瞬間。トイレのほうからドサっと音がした。私は思わず立ち上がり急いでトイレに向かった。
「ちょっと、紗倉大丈…ッ!?」
そこにはトイレの扉の前で倒れている紗倉の姿があった。私はすぐさま駆け寄り、紗倉の上半身を持ち上げた。
「紗倉!紗倉!聞こえる?紗倉!」
私は大声で紗倉の名前を呼んだ。
「…ッ…ゴホッ!ゴホッ…柴…乃…ハハ…発作きちゃった…」
「だから厚着しなって言ったのに…アンタ…薬は?」
「家に忘れちゃった…」
「今から家に帰ったとしても、アンタが危なくなるだけ…」
私は考えた。病院だ。病院に行けば紗倉が助かる。そう考えた私は菜白さんを呼んだ。
「菜白さん!タクシーの手配をお願いします!」
「はい、わかりました!」
スマホを取り出し電話をする菜白。只事では無い様子を悟ったマスターが水とタオルを持ってきた。
「ありがとうございます。マスター」
マスターが気を利かせて、紗倉をおんぶさせて、店のソファに寝かせた。
その後、菜白が手配したタクシーの後部座席に紗倉を乗せた。私は紗倉の横に座り、菜白は助士席に座った。少し、紗倉の顔色が悪く見えた私は、紗倉に水を飲ませようとした。
「紗倉、ほら水…飲んで?」
紗倉は、少しではあるものの口を開けたので、マスターから貰った水の入ったペットボトルを開けてペットボトルの蓋に水を入れ、紗倉の口に運んだ。紗倉はゆっくりと飲み込んだ。
「大丈夫だからね、もう少しで病院に着くから、安心して、私を信じて。」
紗倉は、コクッとゆっくり首を縦に振った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる