上 下
22 / 25
 二十話

 お隣りの性事情 一

しおりを挟む
 閻魔大王は、勢いよく羅天を振り返り怒鳴った。

「羅天! 夜鬼丸! お前たちは、いつから親密になったのだ。羅瑠璃にまで悪影響ではないか。どいつもこいつも色ボケしおって」

 夜鬼丸は首をすくめながら答えた。

「そんな……親密などではありません」

 閻魔大王は、怒りが収まらないのか夜鬼丸に詰め寄る。

「では、なぜ羅天のことを呼び捨てにした? お前は私の秘書だ。真面目に仕事をしていたら天界に行く時間などないはずだ」

 その問いに、夜鬼丸は歯切れ悪く答える。

「そ、それは……子供の時に……閻魔大王様からお叱りを受けた折に……羅天様が」

 頬を赤らめる夜鬼丸を見て、閻魔大王はさらに声を張り上げた。

「夜鬼丸! お前、羅天に好意を寄せているのか?」

 夜鬼丸は何も答えず俯いてしまう。

 閻魔大王は一つ咳払いをした。

「あれは、お前が子供だったから言ったのだ。いいか? お前は私の秘書だ。変な気を起こすんじゃないぞ!」

 閻魔大王の説教が終わると、夜鬼丸は深く頭を下げた。

 すると、口元は微笑んでいるが、閻魔大王を鋭く睨みつけながら天照大御神こと羅天は言う。

「兄上、そこまで。夜鬼丸を責めるでない。仮に、夜鬼丸が余に好意を寄せて何が悪い? 部下の色恋まで口を挟むなど、器量が知れるというもの」

「なにぃ⁉︎」

 閻魔大王は両腕を組み険しい表情で言い返す。

「それは……ならば弟、羅天よ。夜鬼丸のことは最後まで責任を持てるのか? 遊びは許さないぞ。私にとって夜鬼丸も家族同然であり、お前と同じく弟のようなものだ」

「もちろん、責任は取る。だがのう兄上。夜鬼丸は余の妻になるかもしれぬ男。新しい秘書をそろそろ探すがいい」

 閻魔大王と天照大御神の間に、激しい火花が散った。

「ふん! 夜鬼丸は永遠に私の秘書だ」

 天照大御神も負けじと返す。

「いや、余は妻に仕事などさせる気はない。余の帰りだけを待つ。それが妻の役目」

「何を言うか! 夜鬼丸は秘書だけではなく地獄の番人もやっているのだぞ? それを簡単に手放すわけがなかろう」

 二人のやり取りを聞いていた、夜鬼丸は「あぁ……まただ……」と、頭を抱え込んだ。

 天照大御神は腰に手を当てて、ふんぞり返る。

「夜鬼丸の代わりは、空狐にやらせてはどうだろう? あの子は閻魔殿の秘書見習いだろう? 丁度良いではないか」

「ならん! 空狐は、まだ子供だ。幼いあの子に地獄の仕事など任せられん! 逆に亡者共に振り回されてしまう」

 天照大御神は呆れた様子でため息を吐いた。

「子供子供って兄上、誰もが成長する。いつまでも同じでは成長できぬ」

「そんなことはない。夜鬼丸は今まで通り私の秘書だ! それに今、どんな状況だと思っているんだ? 阿修羅王が人界にまで手を出している。はっきり言って、悠長に夜鬼丸とお前の色恋の話まで聞いている暇はない」

「兄上は、わからず屋だのう。余は疲れた室に戻る……夜鬼丸、着いて来るのだ。お仕置きの時間だ」

 夜鬼丸の手を取って、天照大御神は部屋を後にした。

 閻魔大王は苦虫を嚙み潰したような顔をしながら、二人の背中を見送っていた。


 ──その頃、颯太と羅瑠璃は閻魔殿の五階の廊下を歩いていた。

「ここが僕の部屋だ。で、隣が叔父さんが泊まる客室だぞ」

 そう言って、羅瑠璃はドアを開けた。

 中に入った颯太は驚きの声を上げる。

「うわぁ~凄い部屋だな」

 羅瑠璃も部屋の中に入る。

「気に入ったか?  僕の好みで集めた家具は全部、白を基調にしてるんだ。カーテンやテーブルクロスはママの趣味。レースが沢山ついていて可愛いだろ?」

 部屋の中には至る所にクッションや枕などが置かれていた。

 羅瑠璃は部屋の窓を開ける。

 窓の外に見える景色は、紅の空、燃え盛る炎の海が映し出されていた。

「わぁ……真っ赤だ」

 颯太は興味深そうに景色を眺めた。

 羅瑠璃は笑顔で説明を続ける。

「あの炎は、地のエリアから燃え上がっているんだぞ」

 颯太はさらに質問する。

「地のエリア?」

「冥界の下、つまり地のエリアは四つの界に分かれているんだ。冥界の真下はママの出身、妖鬼界。ここは、とっても楽しいぞ! 三途横丁があって、色んな屋台が並んでる。いつも賑やかで、美味しい食べ物もいっぱいあるし、ゲームやショーが毎日行われてるんだ」

「へぇ~楽しそう。行ってみたいなぁ~」

 羅瑠璃は颯太の肩に手を置き、顔を近づける。

「じゃあ、明日、一緒に行こう!」

 颯太は驚きの声を上げた。

「明日? ……なぁ、羅瑠璃。冥界の空は紅いだろ。冥界の人はどうやって時間を知るんだ? いつが朝とか夜とか」

 羅瑠璃は首を傾げた。

「う~ん。時間がくればお腹も空くし眠くもなるぞ」

「そ、そうか……でも、時間や日付を知る方法は?」

「あるよ。蝋燭! それぞれの界の生命体は灯火で管理されているんだ。冥界の空の色は変わらないけど、蝋燭の火は色が変わる。だから時間や日付もわかるぞ」

「あぁ、なるほど。命の灯火って言うもんな。人生は時間か……。それで残りの界は?」

 羅瑠璃は人差し指を顎に当て考える。

「えっとね……残りの界は特殊で、妖鬼界の下が地獄界と畜生界。一番下が修羅界かな。僕の遊び場は妖鬼界か、叔父さんが住んでいる天界だから、他の界は詳しくないんだ」

 その時、隣の部屋から怪しげな声が響いてきた。

「あぁん……い、痛っ……くぅ……」

 羅瑠璃は隣を隔てる壁まで近づくと耳を壁に押し当てた。

 そして、壁の向こうから聞こえる声に耳を済ませる。

 颯太も羅瑠璃の隣で壁に耳を当てた。

「あぁ……ん、くぅ……」

 隣の部屋から聞こえる声は、徐々に大きくなっている。

 聞き覚えのある声……颯太は両手で口元を隠す。

「この声は……夜鬼丸さん⁉︎」

 羅瑠璃は平然と言う。

「あ~叔父さんが夜鬼丸をお仕置きしてるんじゃない」

 颯太は壁から離れると後退りをした。

「一体、この人達は何してるんだよ!」

 信じられないといった表情の颯太を見て、羅瑠璃は笑う。

「覗いてみる? 僕の部屋と叔父さんが居る部屋はバルコニーで繋がっているから窓から見えるぞ」

 内心、覗きたくてたまらない颯太だが首を横に振る。

「い、いいよ……だってプライバシーが……」

「何を言ってるんだ。僕らの時だって叔父さんは見てたと思うぞ。自由に姿を消せたり、瞬間移動できるから。それに、叔父さんは冥界では性に寛大な神様だぞ」

「そ、そうなの……天界はモラルとかないのか?」

 自分が知っている神様のイメージが崩れ、颯太は残念そうな顔をしている。

 颯太を見て羅瑠璃は笑った。

「ハハハ! 何か問題? 人間だって、そういうの好きだろ? いいから覗いてみるぞ。叔父さん、喜ぶかもしれない」

「喜ぶかな?」

 羅瑠璃は颯太の手を取りバルコニーに出た。

 そして、隣の部屋の窓をそっと開けると中を覗き込んだ。

「あっ! 颯太、見てみろ。夜鬼丸の真っ赤っかなお尻が丸見えだ」

 夜鬼丸は、四つん這いになって尻を突き出している。

 その背後には天照大御神が立っており、夜鬼丸の尻の孔に何かを激しく出し入れしていた。

「あっ! あぁぁっ……こ、これ以上は……もぅ……羅……天」

 羅瑠璃は小声で颯太に話しかける。

「あれは、天界人のみ扱える叔父さん愛用の聖なる杖だぞ。へぇ~ああいう使い方も出来るのか!」

 夜鬼丸は身体を痙攣させ、顔をベッドに突っ伏している。

 天照大御神は尻から聖なる杖を引き抜くと、今度は自身の屹立した男根を取り出す。

「夜鬼丸、もう降参か? そんなんではお仕置きにならんぞ。むしろ、喜んでおるな? お前の秘蕾から、とろとろの蜜が垂れておるではないか。まったく、みっともないのう」

 天照大御神は夜鬼丸を仰向けに寝かせると、自分の屹立した男根の上にゆっくりと夜鬼丸を落とした。

「あぁっ。はぁ……はぁ……はぁ……」

 二人は同時に息遣いを荒くする。

 颯太と羅瑠璃は目を輝かせながら釘付けに。

「な? 凄いだろ?」と、羅瑠璃は颯太に同意を求める。

 颯太も興奮気味に頷いた。

「す、凄いな……。夜鬼丸さん、大丈夫かな……痛そうだけど。胸をあんなに噛まれたら取れちゃいそう」

 羅瑠璃は自慢げに話す。

「大丈夫じゃない? 叔父さんの聖なる杖を尻の孔で受け止める事ができるんだから」

 天照大御神がゆっくりと腰を振り始めると、夜鬼丸は激しく悶える。

「あぁぁ!……っ」

 二人の腰の動きは次第に激しさを増していった。

 パンパンという肌同士がぶつかる音が部屋中に響く。

 動きに合わせて揺れるベッドもギシギシと音を立てた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あやかし骨董店きさら堂の仮の主人

緋川真望
BL
骨董店『きさら堂』には、守らなければならない三つの約束がある。 「ひとつ、大階段を登る途中で立ち止まらないこと。」 「ふたつ、中庭にある地下への階段はひとりで降りないこと。」 「みっつ、きさら堂の使用人を外へ連れ出さないこと。」 ある日、『きさら堂』にガリガリに痩せた子供が迷い込んでくる。 仮の主人である翡翠はその子供を一目見て思わず「かわいい」と呟いてしまう。 ひどく怯える子供に、翡翠は四つめの約束を提案する。 「よっつ、朝と晩、必ず翡翠とハグして挨拶すること。」 子供は咲夜と名付けられ、咲夜と翡翠は互いにどんどん惹かれあっていくようになる。 『きさら堂』の仮の主人である翡翠は、絵から生まれたあやかしだった。 描いたのは天才絵師、時津彦。 時津彦を愛し、時津彦を癒し、時津彦に仕えるために生まれてきた翡翠は、時津彦が姿を見せなくなってからも友人である蓮次郎に支えられて『きさら堂』を守り続けてきた。 月に一度発情してしまう翡翠を慰めてくれていた蓮次郎と、翡翠の主であり翡翠の命を握っている時津彦、やがて時津彦をしのぐ絵師に成長していく咲夜との四角関係です。 翡翠と咲夜はちゃんとハッピーエンドになります。 咲夜がちゃんと現れるのは第6話からです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【BL】僕の恋人1

樺純
BL
エニシ&ヒュウのほのぼのラブストーリー♡エニ&ヒュウの日常ラブストーリーをお楽しみください。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

処理中です...