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八話
待っててやる
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今までモテた事のない颯太が、羅瑠璃にキスや頬舐めをされているのだ。
嬉しくないわけがない。
でも、これは普通の愛情表現とは違うと、自分に言い聞かせて心を落ち着かせる──。
(羅瑠璃の好きと、俺の好きは違うのに……」
そんなことを考えているとは露知らず、羅瑠璃は颯太に抱きついて嬉しそうに言う。
「やっぱり、あの女より僕の方が可愛いだろ?」
「どんだけ自分に自信あるんだよ。と、とにかく落ち着けって!」
颯太は、羅瑠璃を優しく引き剥がそうとするが羅瑠璃は離れない。
「落ち着けない! 僕はいつも冷静だ」
そんな言葉を言いながらも、羅瑠璃の目はどこか悲しげだった。
(あれ? ちょっと言い過ぎたか?)と、颯太は心配になる。
「あのな、別に小林さんの方が好きとか言ってないだろ? そもそも羅瑠璃と小林さんへ対しての感情は全然違う」
「だって颯太、あの女より可愛いって言わない」
シュンとしている羅瑠璃を見て、颯太は思う──。
(こいつの情緒は、どうなってるんだ?)
どうにか羅瑠璃を引き離し、颯太は冷静に言う。
「いいか、羅瑠璃。ちゃんと聞けよ?」
「うん……」
そして、言い聞かせるように言葉を紡いでいく──。
「俺はな、お前と出会う前から小林さんに片思いしてるんだ。それで、直ぐに羅瑠璃を好きとはならない。出会ったとき、仔猫の姿だったろう? そういう意味では……守ってやりたいし、なんだかんだ可愛いとは思ってる」
羅瑠璃は驚いた表情で、颯太を見た。
「それって、僕のことも好きってことじゃん。颯太は、あっちもこっちもセックスしたいってことか?」
「だから、違うって!」
「じゃあ、僕だけ好きになればいい。好きになった方がいっぱいセックスできるだろ」
颯太は耳まで真っ赤に。
「お前はな、そういう事を軽々しく口に……」
とにかく颯太に「可愛い。羅瑠璃だけ好き」と言わせたい。
「どっちの方が可愛い?」か尋ねる羅瑠璃に対して、この質問にウンザリしていた颯太は即答。
「断然、小林さんの方だな」
たちまち羅瑠璃は不機嫌になり頬を膨らませ、スッとソファから立ち上がると寝室へ入って行ってしまった。
(あいつ……そんなに俺のことを?)
羅瑠璃の予想外の行動に、颯太も慌てて寝室のドアの前へ。
「おい、拗ねたのか?」
声をかけるが返事が無いので、ドアを開けようとした瞬間──。
羅瑠璃が怒りながらドアを開け、驚いて前のめりになった颯太はベッドに倒れ込む。
そんな颯太に構わず、羅瑠璃は怒鳴り声を上げる。
「ぼっ、僕だけを好きって言え!」
颯太は羅瑠璃の勢いに圧されたが、起き上がりながら言う。
「だから、可愛いと思うのと好きとは……」
「違う! 僕は男だから可愛くないのか? 好きになれないのか?」
しつこい羅瑠璃に、颯太は面倒くさそうに頭を掻く。
「あーっ……もぉ……あ~わかった、わかった。羅瑠璃は可愛い、好きだ」
「本当に?」
「あぁ、本当だ」
羅瑠璃は嬉しそうに笑うと、颯太に飛びついた。
「僕も大好き!」
(なんだよこれ?)
そして、しばらく抱きついていたかと思うと突然、顔を上げて聞いてきた──。
「じゃあ、さっきの続きしよう」
「えっ? 続きって何のことだ?」
……二人の間に沈黙が流れる。
暫くして、沈黙を破るように羅瑠璃は急に立ち上がる。
「お、おい……はっ?」
颯太が訳もわからず戸惑っていると、羅瑠璃は服を脱ぎ捨て全裸になりベッドへと横になった。
上目遣いで颯太に言う。
「ほらっ! 早く抱いていいぞ」
(えっ? なんで服脱いでんだよ?)
「頼むから服を着てくれ……」
頭の中で疑問符だらけになったが、颯太はとにかく服を着てくれと懇願する。
しかし羅瑠璃は聞く耳を持たずに、両手を広げて言う。
「抱っこして」
颯太は羅瑠璃に抱きつかれながらも、言い聞かせるように言う。
「いいか? 俺たちは男同士だ。セックスはできない」
(こればっかりは何度、言っても理解できないだろうけど……)
そんな颯太の気持ちも知らずに、羅瑠璃はきょとん顔。
「できないの?」
「あぁ」
「う~ん。颯太は注文が多いな。よし、颯太が女になればいい!」
「はぁ⁉︎ なんでそうなる?」
「ベッドの上で四つ這いになれ」
「何で俺がっ?」
羅瑠璃の暴走が止まらず、颯太は更に呆れる。
強引に四つ這いにされ、ズボンを下ろされそうになった颯太は慌てた。
「わっ! ちょっ……やめっ!」
慌ててズボンを押さえながら颯太は言う。
「お、落ち着いて話し合おう」
四つ這いの颯太を、羅瑠璃は見下ろす。
「男でも、お尻に穴があるから心配するな」
(尻の穴だと⁉︎ 冗談じゃない。こいつの頭の中はそれしかないのか)
このまま流されるのはマズいと思った颯太は宥める。
「まあまあ。一旦、落ち着こうか。羅瑠璃、とりあえず服を着てくれるか?」
「まだ、そんなこと言うのか!」
「あのな、そういうのは好きな人とすることだ。少なくとも俺は、羅瑠璃とはしない」
(……セックスだけなら俺だってしたいよ)
自分の矛盾に蓋をして、颯太は羅瑠璃と距離を置こうとするが、羅瑠璃は自信満々に言った。
「僕は颯太のこと好きだ。問題ない!」
その言葉に嘘偽りが無いことは既に伝わっているが、それでも颯太は答えた。
「ありがとう。ただな、やっぱりそれは好きって言わないぞ。むしろ嫌われる行為だ」
「なんでだ?」
「そうだな……例えば、羅瑠璃がいつも遊んでる大事な友達に無理矢理、抱かれたらどう思う?」
フンと鼻を鳴らし羅瑠璃は即答。
「友達なんていない。冥界では、いつもパパとママとしか遊ばない。たまに、赤鬼や死者たちを揶揄うぐらいだ」
「なら、例えばだ。友達じゃなく赤鬼に無理やり抱かれたらどう思う? しかも、嫌だって言ってるのに強引に。そんな奴を好きと言えるか?」
「赤鬼と? 八つ裂きにして永遠に拷問する……颯太は、僕が嫌いか?」
「拷問か……ハハ。羅瑠璃のこと嫌いじゃないけど、恋愛感情の好きではない気が……」
(あれ? どうして迷うんだ俺……)
自分でもよくわからないまま颯太は、羅瑠璃を説き伏せようとする。
「とにかく服を着てくれ。じゃないと寝室から追い出すぞ」
羅瑠璃は不服そうに服を着始めた──が、着終わると同時に口を開いた。
「わかった。僕が女の代わりをすればいいか」
「なんでそうなる? どうして、そこまで俺とセックスしたいんだ?」
「パパとママが言ってた。僕みたいな可愛い子が産まれたのは、パパとママが好き好きだからって」
「な、なるほど。まぁ、間違ってはいないけど好きにも種類があるんだ。羅瑠璃のパパとママは恋愛感情の好き。俺は……俺は……?」
羅瑠璃は、颯太の言葉を遮って話を続ける。
「それなら問題ない! 僕は颯太を愛してる。好き以上だ、愛してるだぞ。どうだ、すごいだろう?」
褒めてと言わんばかりに瞳を輝かせる。
(すごい。確かに、すごいんだけど……)
颯太は溜息をついた。
「ハァ、もういいよ。わかった。俺に時間をくれないか? 今まで小林さんが好きで気持ちは伝えてはないけど。このまま、羅瑠璃を抱くのは不誠実な気がするんだ」
「それは、この僕よりも小林とかいう女が大事だということか?」
「呼び捨てにするな、小林さんだ……でも、そういう意味じゃない。逆だ。羅瑠璃と愛し合う為には、小林さんを諦める時間が欲しいんだ」
羅瑠璃が本気だということは理解している、颯太はしつこいほど誰かに「好きだ愛してる」なんて、言われたのは初めてで──本心を言えば、男でも羅瑠璃の容姿は見惚れしまうほどの美貌、それに加えて純粋で真っ直ぐな愛情表現は、颯太が羅瑠璃に対して好意を抱くには十分に魅力的だ。
だけど颯太は「好き」と言ってくれる、羅瑠璃に誠実でありたかった。
颯太は、羅瑠璃の頭を撫でながら話を続ける。
「羅瑠璃のこと可愛いと思ってる。男でも羅瑠璃がどの姿に変身しても綺麗だし正直、見惚れたよ。抱けと言われたら今すぐにでも抱ける。でもな、大切なことだから焦ってしたくないんだ。羅瑠璃には待ってて欲しい」
「わかった。僕、待っててやる!」
(プッ! 『待っててやる』か。こんな時も上から目線……可愛いな)
颯太は、羅瑠璃を優しく抱きしめる。
「ありがとう。羅瑠璃……」
それは紛れもなく颯太の気持ちで、それを聞いた羅瑠璃も嬉しそうに尻尾を立てていた。
嬉しくないわけがない。
でも、これは普通の愛情表現とは違うと、自分に言い聞かせて心を落ち着かせる──。
(羅瑠璃の好きと、俺の好きは違うのに……」
そんなことを考えているとは露知らず、羅瑠璃は颯太に抱きついて嬉しそうに言う。
「やっぱり、あの女より僕の方が可愛いだろ?」
「どんだけ自分に自信あるんだよ。と、とにかく落ち着けって!」
颯太は、羅瑠璃を優しく引き剥がそうとするが羅瑠璃は離れない。
「落ち着けない! 僕はいつも冷静だ」
そんな言葉を言いながらも、羅瑠璃の目はどこか悲しげだった。
(あれ? ちょっと言い過ぎたか?)と、颯太は心配になる。
「あのな、別に小林さんの方が好きとか言ってないだろ? そもそも羅瑠璃と小林さんへ対しての感情は全然違う」
「だって颯太、あの女より可愛いって言わない」
シュンとしている羅瑠璃を見て、颯太は思う──。
(こいつの情緒は、どうなってるんだ?)
どうにか羅瑠璃を引き離し、颯太は冷静に言う。
「いいか、羅瑠璃。ちゃんと聞けよ?」
「うん……」
そして、言い聞かせるように言葉を紡いでいく──。
「俺はな、お前と出会う前から小林さんに片思いしてるんだ。それで、直ぐに羅瑠璃を好きとはならない。出会ったとき、仔猫の姿だったろう? そういう意味では……守ってやりたいし、なんだかんだ可愛いとは思ってる」
羅瑠璃は驚いた表情で、颯太を見た。
「それって、僕のことも好きってことじゃん。颯太は、あっちもこっちもセックスしたいってことか?」
「だから、違うって!」
「じゃあ、僕だけ好きになればいい。好きになった方がいっぱいセックスできるだろ」
颯太は耳まで真っ赤に。
「お前はな、そういう事を軽々しく口に……」
とにかく颯太に「可愛い。羅瑠璃だけ好き」と言わせたい。
「どっちの方が可愛い?」か尋ねる羅瑠璃に対して、この質問にウンザリしていた颯太は即答。
「断然、小林さんの方だな」
たちまち羅瑠璃は不機嫌になり頬を膨らませ、スッとソファから立ち上がると寝室へ入って行ってしまった。
(あいつ……そんなに俺のことを?)
羅瑠璃の予想外の行動に、颯太も慌てて寝室のドアの前へ。
「おい、拗ねたのか?」
声をかけるが返事が無いので、ドアを開けようとした瞬間──。
羅瑠璃が怒りながらドアを開け、驚いて前のめりになった颯太はベッドに倒れ込む。
そんな颯太に構わず、羅瑠璃は怒鳴り声を上げる。
「ぼっ、僕だけを好きって言え!」
颯太は羅瑠璃の勢いに圧されたが、起き上がりながら言う。
「だから、可愛いと思うのと好きとは……」
「違う! 僕は男だから可愛くないのか? 好きになれないのか?」
しつこい羅瑠璃に、颯太は面倒くさそうに頭を掻く。
「あーっ……もぉ……あ~わかった、わかった。羅瑠璃は可愛い、好きだ」
「本当に?」
「あぁ、本当だ」
羅瑠璃は嬉しそうに笑うと、颯太に飛びついた。
「僕も大好き!」
(なんだよこれ?)
そして、しばらく抱きついていたかと思うと突然、顔を上げて聞いてきた──。
「じゃあ、さっきの続きしよう」
「えっ? 続きって何のことだ?」
……二人の間に沈黙が流れる。
暫くして、沈黙を破るように羅瑠璃は急に立ち上がる。
「お、おい……はっ?」
颯太が訳もわからず戸惑っていると、羅瑠璃は服を脱ぎ捨て全裸になりベッドへと横になった。
上目遣いで颯太に言う。
「ほらっ! 早く抱いていいぞ」
(えっ? なんで服脱いでんだよ?)
「頼むから服を着てくれ……」
頭の中で疑問符だらけになったが、颯太はとにかく服を着てくれと懇願する。
しかし羅瑠璃は聞く耳を持たずに、両手を広げて言う。
「抱っこして」
颯太は羅瑠璃に抱きつかれながらも、言い聞かせるように言う。
「いいか? 俺たちは男同士だ。セックスはできない」
(こればっかりは何度、言っても理解できないだろうけど……)
そんな颯太の気持ちも知らずに、羅瑠璃はきょとん顔。
「できないの?」
「あぁ」
「う~ん。颯太は注文が多いな。よし、颯太が女になればいい!」
「はぁ⁉︎ なんでそうなる?」
「ベッドの上で四つ這いになれ」
「何で俺がっ?」
羅瑠璃の暴走が止まらず、颯太は更に呆れる。
強引に四つ這いにされ、ズボンを下ろされそうになった颯太は慌てた。
「わっ! ちょっ……やめっ!」
慌ててズボンを押さえながら颯太は言う。
「お、落ち着いて話し合おう」
四つ這いの颯太を、羅瑠璃は見下ろす。
「男でも、お尻に穴があるから心配するな」
(尻の穴だと⁉︎ 冗談じゃない。こいつの頭の中はそれしかないのか)
このまま流されるのはマズいと思った颯太は宥める。
「まあまあ。一旦、落ち着こうか。羅瑠璃、とりあえず服を着てくれるか?」
「まだ、そんなこと言うのか!」
「あのな、そういうのは好きな人とすることだ。少なくとも俺は、羅瑠璃とはしない」
(……セックスだけなら俺だってしたいよ)
自分の矛盾に蓋をして、颯太は羅瑠璃と距離を置こうとするが、羅瑠璃は自信満々に言った。
「僕は颯太のこと好きだ。問題ない!」
その言葉に嘘偽りが無いことは既に伝わっているが、それでも颯太は答えた。
「ありがとう。ただな、やっぱりそれは好きって言わないぞ。むしろ嫌われる行為だ」
「なんでだ?」
「そうだな……例えば、羅瑠璃がいつも遊んでる大事な友達に無理矢理、抱かれたらどう思う?」
フンと鼻を鳴らし羅瑠璃は即答。
「友達なんていない。冥界では、いつもパパとママとしか遊ばない。たまに、赤鬼や死者たちを揶揄うぐらいだ」
「なら、例えばだ。友達じゃなく赤鬼に無理やり抱かれたらどう思う? しかも、嫌だって言ってるのに強引に。そんな奴を好きと言えるか?」
「赤鬼と? 八つ裂きにして永遠に拷問する……颯太は、僕が嫌いか?」
「拷問か……ハハ。羅瑠璃のこと嫌いじゃないけど、恋愛感情の好きではない気が……」
(あれ? どうして迷うんだ俺……)
自分でもよくわからないまま颯太は、羅瑠璃を説き伏せようとする。
「とにかく服を着てくれ。じゃないと寝室から追い出すぞ」
羅瑠璃は不服そうに服を着始めた──が、着終わると同時に口を開いた。
「わかった。僕が女の代わりをすればいいか」
「なんでそうなる? どうして、そこまで俺とセックスしたいんだ?」
「パパとママが言ってた。僕みたいな可愛い子が産まれたのは、パパとママが好き好きだからって」
「な、なるほど。まぁ、間違ってはいないけど好きにも種類があるんだ。羅瑠璃のパパとママは恋愛感情の好き。俺は……俺は……?」
羅瑠璃は、颯太の言葉を遮って話を続ける。
「それなら問題ない! 僕は颯太を愛してる。好き以上だ、愛してるだぞ。どうだ、すごいだろう?」
褒めてと言わんばかりに瞳を輝かせる。
(すごい。確かに、すごいんだけど……)
颯太は溜息をついた。
「ハァ、もういいよ。わかった。俺に時間をくれないか? 今まで小林さんが好きで気持ちは伝えてはないけど。このまま、羅瑠璃を抱くのは不誠実な気がするんだ」
「それは、この僕よりも小林とかいう女が大事だということか?」
「呼び捨てにするな、小林さんだ……でも、そういう意味じゃない。逆だ。羅瑠璃と愛し合う為には、小林さんを諦める時間が欲しいんだ」
羅瑠璃が本気だということは理解している、颯太はしつこいほど誰かに「好きだ愛してる」なんて、言われたのは初めてで──本心を言えば、男でも羅瑠璃の容姿は見惚れしまうほどの美貌、それに加えて純粋で真っ直ぐな愛情表現は、颯太が羅瑠璃に対して好意を抱くには十分に魅力的だ。
だけど颯太は「好き」と言ってくれる、羅瑠璃に誠実でありたかった。
颯太は、羅瑠璃の頭を撫でながら話を続ける。
「羅瑠璃のこと可愛いと思ってる。男でも羅瑠璃がどの姿に変身しても綺麗だし正直、見惚れたよ。抱けと言われたら今すぐにでも抱ける。でもな、大切なことだから焦ってしたくないんだ。羅瑠璃には待ってて欲しい」
「わかった。僕、待っててやる!」
(プッ! 『待っててやる』か。こんな時も上から目線……可愛いな)
颯太は、羅瑠璃を優しく抱きしめる。
「ありがとう。羅瑠璃……」
それは紛れもなく颯太の気持ちで、それを聞いた羅瑠璃も嬉しそうに尻尾を立てていた。
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