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Op.1 Overture ーその始まりー
第四楽章(前編)
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ある一つの要素を除いて至ってごく普通の日常生活だった。
…山城が居なかった。ただそれだけだった。今日は当然誘ってくる人もいないわけで、帰ろうとしたその時、遠めに聞こえてきた会話に悪くはない、寧ろ良い方な耳を疑った。
「桜音…………昨日じ…にあ………ま入院…てるら………。」
「あーそうそう。何かかん……………とし………られて、…や……うと……追いか………って話らしいね。」
冗談じゃない。山城が事故にあったとでも言うのか。しかも…
俺のせいで。
走った。学校を出た。昨日の救急病院はどこだ。
「…………遅え。」
普段は気にも留めない回線の遅さに腹が立つ。いや、こんな状況を生んだ自分に、か。
楢橋中央病院が昨日の救急だった。場所は分かる。自転車なら25分……いや、15分で行く。
駐輪場に自転車を停め、入り口までは走った。鍵を抜き忘れていたことは後で気付いた。
「すみません。昨日救急で来た山城桜音羽の知人なのですが…」
友人、というのは憚られた。
「ああ、昨日の患者さんですね。231号になります。こちら右手側の階段を一つ上がっていただいて、通路左手側5番目の…」
「ありがとうございます。」
最低限の情報があれば良い。走り出そうとしてここが病院だと思い出し、歩き始めた。
【231 山城 桜音羽 様】
あった。
数分躊躇った。何からどう言えばいいのか。どんな反応を見せるだろうか。無理させてしまわないだろうか。そもそも意識はあるのか。見舞いに家族が来ているのだろうか。何と言えば良いだろうか。何と言われるだろうか………
比计划更容易打算 だ。行くしかない。
三度、ノックする。「どうぞ。」と声が聞こえた。山城の声だった。安堵しつつドアを開けた。
「え!?ちょっ………くr」
「ごめん。俺のせいで事故ってしまって、部活にも……」
「黒木君?」
不思議そうな顔で見られた。何か変なことでも言っただろうか。
「私、事故ったの夜だよ?」
………………………え?
「いや、でも今日…」
ここに来るまでの経緯を話した。
「あー、なるほどね。黒木君を追いかけようとしたのは本当だよ?でも速すぎてすぐ見失っちゃったし、ちゃんと部活に戻ったんだよ?だから…黒木君のせいじゃない。」
それに怪我は足だけだし、楽器吹くにはそんなに支障ないよ。と山城は笑って言った。
「そっか…でもごめん。急に振りほどいたりして。」
「全っ然!むしろこっちこそ無理矢理誘ってごめんね。」
「いやいや。説明してなさすぎたのは間違いなく原因の一つだし…」
「本当に?じゃあ教えてもらおっかなー。何があったのか。」
そう得意げに、勝ち誇るように言う山城は、至っていつも通りの山城だった。
またLINEででも話す、といって病室を後にした。
………さて、と。
多分八割以上嘘だ。完っ全に俺のせいだ。
…山城が居なかった。ただそれだけだった。今日は当然誘ってくる人もいないわけで、帰ろうとしたその時、遠めに聞こえてきた会話に悪くはない、寧ろ良い方な耳を疑った。
「桜音…………昨日じ…にあ………ま入院…てるら………。」
「あーそうそう。何かかん……………とし………られて、…や……うと……追いか………って話らしいね。」
冗談じゃない。山城が事故にあったとでも言うのか。しかも…
俺のせいで。
走った。学校を出た。昨日の救急病院はどこだ。
「…………遅え。」
普段は気にも留めない回線の遅さに腹が立つ。いや、こんな状況を生んだ自分に、か。
楢橋中央病院が昨日の救急だった。場所は分かる。自転車なら25分……いや、15分で行く。
駐輪場に自転車を停め、入り口までは走った。鍵を抜き忘れていたことは後で気付いた。
「すみません。昨日救急で来た山城桜音羽の知人なのですが…」
友人、というのは憚られた。
「ああ、昨日の患者さんですね。231号になります。こちら右手側の階段を一つ上がっていただいて、通路左手側5番目の…」
「ありがとうございます。」
最低限の情報があれば良い。走り出そうとしてここが病院だと思い出し、歩き始めた。
【231 山城 桜音羽 様】
あった。
数分躊躇った。何からどう言えばいいのか。どんな反応を見せるだろうか。無理させてしまわないだろうか。そもそも意識はあるのか。見舞いに家族が来ているのだろうか。何と言えば良いだろうか。何と言われるだろうか………
比计划更容易打算 だ。行くしかない。
三度、ノックする。「どうぞ。」と声が聞こえた。山城の声だった。安堵しつつドアを開けた。
「え!?ちょっ………くr」
「ごめん。俺のせいで事故ってしまって、部活にも……」
「黒木君?」
不思議そうな顔で見られた。何か変なことでも言っただろうか。
「私、事故ったの夜だよ?」
………………………え?
「いや、でも今日…」
ここに来るまでの経緯を話した。
「あー、なるほどね。黒木君を追いかけようとしたのは本当だよ?でも速すぎてすぐ見失っちゃったし、ちゃんと部活に戻ったんだよ?だから…黒木君のせいじゃない。」
それに怪我は足だけだし、楽器吹くにはそんなに支障ないよ。と山城は笑って言った。
「そっか…でもごめん。急に振りほどいたりして。」
「全っ然!むしろこっちこそ無理矢理誘ってごめんね。」
「いやいや。説明してなさすぎたのは間違いなく原因の一つだし…」
「本当に?じゃあ教えてもらおっかなー。何があったのか。」
そう得意げに、勝ち誇るように言う山城は、至っていつも通りの山城だった。
またLINEででも話す、といって病室を後にした。
………さて、と。
多分八割以上嘘だ。完っ全に俺のせいだ。
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