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Op.1 Overture ーその始まりー

第二楽章(中編)

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 『改めまして山城桜音羽です!よろしく!』
 
 可愛らしいペンギンがペコリとお辞儀するスタンプとともに例の彼女、山城桜音羽からLINEが来たのはその日の午後八時過ぎ。一人暮らしの俺は丁度食事を終えて風呂の準備をしようとしていた。

『黒木です。よろしく。』

 一旦そこでフリック入力する手を風呂の掃除に回した。両親が遺していった家は一応オール電化で、家事の負担が少ないのは有難いことだ。沸かしている間に再びスマホに目を向けると、通知が四件。

『今朝は一気に遠慮なく聞いちゃってごめんね。』

『改めて確認したいんだけど、』

『黒木君ってチューバ奏者?』

 最後の一件はさっきのペンギンが首を傾げているところだった。

 いやそこじゃなくて、待て。今朝より突っ込んだこと聞かれてんじゃねーか。そこまでバレてたのか。今朝のはまだ控えめだったと?まああの時半分自白(無意識だが)していたらしいし、隠すとまた面倒だから黙っててもらうしかないか。

『そうだった。でも誰にも言わないでほしい。』

『代わりに他に何か聞いていいから。』

 既読は一分足らずで付き、返信までの時間もあっという間だった。

『そっか!合ってた!ありがとう!』

 感謝されてもなあ…

『じゃあ、もう一つだけ!』

 さあ何が飛んでくるか。

『黒木君ってさ、去年何組だった?それとも転校生?』

 何でこうも一々ピンポイントで急所ばかり突かれるのだろう。

『これは明日言わざるを得ないから仕方ないんだけど…』

『一年半、病気で休学してた。』

『これでいいか?』

『…何か色々地雷だったみたいでごめんね…ありがとう。』

 色々?過去の経歴も地雷と見られていたか。まあ地雷は地雷だが。

『気にしてない。んじゃ。』

 返信は三度目のペンギン。深々と頭を下げていた。


 この日のことを、後悔することにも喜ぶことにもなる。
 

 まず訪れたのは後悔だった。それもずらずらと自己嫌悪を引き連れて。
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