ある令嬢のスローじゃない人生

シュミー

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再会

4おじいちゃんside3

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「クロロフェル!」

 力を使い切ったクロロフェルがゆっくりと倒れていく。わしはそれを支えようと手を伸ばすが、先に老執事のセバスチャンがクロロフェルは支えた。

「全く…無茶をしなさる」

 セバスチャンはクロロフェルの顔を見て、安心したように一息つく。そしてこちらに向き直り、

「申し遅れました。私は一年ほど前にユリウス家に使えていた執事。ゼバスチャンと申します。今の主人はクロロフェル様ですのでそこはご了承ください」
「セバスチャン。クロロフェルは…」
「心配しなくても気絶しているだけです。状況は後に話すのでまずはベットを貸してはもらえませんか?ジークレット様」
「わかった。すぐ用意させよう」

 わしは指を一度鳴らし、執事を読んだ。すると後ろにザッと現れた。昔これをクロロフェルが見た時『NINJAだ!リアルNINJAだ!』と言ってたな。

「お呼びでしょうか?」
「クロロフェルに部屋を用意しろ」
「!…かしこまりました」

 因みにこいつの名前はシノらしい。らしいというのはこいつが元暗殺者。もう40後半となるのに力は衰えていない。それともちろんクロロフェルのことは知っている。さらにシノはクロロフェルにこっそり暗殺術とか暗器を教えてたしの。

「セバスチャン。皆には少しじゃが説明しておく。クロロフェルを連れて行ってやれ」
「感謝します」

 そう言い、セバスチャンはシノのあとをついて行った。

「父上……これはどういうことですか?」
「そうだ。娘を治してくれたのは感謝するがあれはルーカス公爵の娘ではないのか?それにあの翼…」
「落ち着くんじゃ、ルーカス、陛下。他の者も少し説明するので落ち着くんじゃ」

 少し興奮気味だったが、段々と落ち着いてきた。そして少し散らかった机の上は無視して、椅子を拾い上げ、座り直す。

「さて、何処から話したものか…」
「まず最初に知りたいのはあの娘の正体だ」

 何から言おうと考えていたら陛下が早く聴きたくて仕方がないように、問いかけた。さっきよりは落ち着いたようじゃがまだ混乱してるの。クロロフェルの邪魔にならないぐらいには教えるかの。

「そうじゃの。クロロフェルは確かにルーカスの娘であり、わしの孫じゃ。だが、血は繋がっていない」
「どういうことですか!父上!」
「これだけで取り乱すとは、本当に感情豊かになったの。ルーカス」
「…それとこれとは関係ないです」
「そうか…。わしがさっき「もう」と言ったのは、あの卒業パーティーの時に、が変わったからじゃ」
「種族が!?」
「そんなこと!」
「あるんじゃ。そもそもクロロフェルはこうなることを知っていた」
「知っていた…?」
「そうじゃ。ルーカス。おんしクロロフェルのフルネームを知っているか?」
「いきなり何を…当たり前だ。《クロロフェル・F・ユリウス》でしょう?」
「そう。昔、わの。今は《クロロフェル・F・シエル・ノーレシアス》。あの神話の人物じゃ」

 ふぉ。みんな見事に固まったの。それもそうかのいきなり「さっきの人は神話上の人物だよ☆」なんて言われたら、固まるか、「お前バカじゃねぇの?頭大丈夫ですか?」と言われるだろう。今は真面目な空気なので冗談とは誰も思っていない。

「言うなら魂がそうなんじゃ。力もそのまま受け継いでいると聞いた。人間の体では魂られないのじゃろう。あとさっきの力は衰えてわし知らん。後で本人に聞くんじゃの。今知っておくべきことはこれだけじゃ。わしは帰る」
「え、まっ…!」

 わしは自分の屋敷に転移魔法を使い、帰ってきた。最後になんか言ってたが気にしない。それにしてもルーカスと後ろの三人、陛下は特に驚いてたの。

 ……クロロフェルに見舞いの品でも持っていくかの。でもくるか。わしは、剣を装備し、再び転移した。

 あ、屋敷の皆んなに説明するの忘れてた。…ま、いいじゃろう。

-----その後の会議の間にて

「陛下!国王陛下!」
「次は何ごとだ!」

 ジークレットが去ってすぐ、行き違うように神官が息を切らして部屋に飛び込んできた。

「神託が降ろされました!」
「何!?どんな内容じゃ!」

 もう混乱しすぎて普通の会話が叫んでいるように聞こえる。

「ク、クロロフェルに手ェ出したらお前の国を滅ぼしてやる。…とのことです…」
「へ?」

 ついに、思わぬ神からの脅しにそこにいる全員から一瞬魂が抜けた。あくまで一瞬だが…


-------------------

1章終わった~~!因みに一番最初のサブタイトルにちゃんと一章ってついてますよ。これからは第2章!ここまで読んでくださりありがとうございます。次はクロロフェル視点で、一週間程経ってます。

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