ある令嬢のスローじゃない人生

シュミー

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ここは乙女ゲーでした

5断罪?

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 なんか......注目されてる?いや。そんなはずはない。...多分。

「クロロフェル!」

 ちょっと視線を感じ、焦っているクロロフェルに声がかけられた。そう、第一王子から。

「何でしょう?」

 こいつが声をかけてきたってことはちゃんと認識阻害魔道具は働いているな。よしよし。

 ただ、第一王子が無能なだけである。普通でも少しは本来の姿をみることはできるはずだからだ。

「なにを今更!スミレに謝罪しろ!」

 取り巻きが囲み、私に怒鳴り散らかす。きたっ!断罪イベンツっ!第一王子ことバカは横にいるスミレの腰にうでを回し、自分に引き寄せている。豊富な胸がもろにバカにあたっている。

 そして、その怒鳴り散らかした内容に上級貴族はバカをみるようにーー実際にバカだがーー冷たい目で見ていた。下級貴族は私を非難するようにみている。ちゃんと情報が回っていないのだろう。

「何を言い出すと思えば。なんで私が謝罪しなければならないのでございますか?」
「そんなの決まっているだろう!スミレに嫉妬して、いじめたのだろう!時には階段の上から突き落としていた!私がみていたのだぞ!」
「それはたまたまです。そこにいるスミレ嬢が勝手に転んだだけですわ。私はたまたまそこに言い合わせただけ」
「白々しいぞ!」

 うるさい。耳が痛いんですけど。

「バッカス様~こわいですぅ。今私を睨んできましたぁ~」

 そう言って密着していた豊富な胸をさらに押し付ける。娼婦のような行動に周りは顔をしかめる。(上級貴族だけ)

「罪をさっさと認めろ!」

 取り巻きA(騎士団団長の息子)が横から入ってきた。

「認めるといっても何もしていないものをどうやって認めろというのですか」
「何だと!」

 これじゃあ拉致が開かないと思っていたところに威圧感がある声がパーティー会場に響き渡った。

「何事だ」
「「「ち、父上!」」」

 宰相と騎士団団長、そしてこの国の王様、国王だった。貴族たちは国王の登場に驚き、頭を垂れる。かく言う私もその一人だ。ヒロインたちは突っ立てる。それに宰相が顔をしかめるが、気づいていないらしい。

「何事かと聞いている」
「その、く、クロロフェルがスミレをいじめていたのです。それの謝罪をと…」

 戸惑いながらも言葉を発すバカ。その言葉に国王は目を細め、こちらを見る。今代の国王は賢王と呼ばれている。

「それはまことか?」
「いえ、そんなことはございません」
「だが、お前は姿を偽っているだろう?」
「!?」

 なんで…なんでわかったの?

「わからない顔をしているな。私には、あるスキルがあってな」
「……はぁ。見破られては仕方ありません。姿をお見せしましょう」

 相手は賢王と呼ばれている。うかつにかわそうとすればさらに状況が悪くなるだろう。私はセバスに貸してもらっていたブレスレットとベールを外し、効力を解除する。

 その瞬間、時が、

「美しい」

 誰かがつぶやいた

「……ほう。これほどとは」

 国王は感心したように吐息を漏らす。

「お褒めに預かり光栄です。ですが私は既に平民落ちが決まっている者。お気になさらずに」
「ルーカス公爵」
「は、はい」

 いきなり呼ばれ驚いているが、相手は国王。ちゃんと返事をした。お父様でもこんな態度取るんだ。ちょっと意外。

「お前がこんな隠し球を持っていたとわな。何故平民落ちに?」
「そ、それは、生まれた際にステータスをはかったのですが、ほかの者より著しく低かったためです。この私もこのパーティーの前まで娘がこんな容姿をしているとは思いもよらなかったのです。認識阻害魔道具はおそらく赤ん坊のときに父が持たせたものと思われます」
「そうか」

 沈黙が馬鹿でかい部屋を支配する。だけど、クロロフェルは空気を読まなかった。

「失礼ですが国王陛下。私は国王陛下にお褒めに預かるほどには美しいようです。ですのでバッカス様がおっしゃられた私が嫉妬でスミレ嬢をいじめると思い出ございますか?」
「む、それもそうだな。それにしてもおぬしは少し喋っただけでもわかるほど聡明だな。噂では簡単な計算すらできないと聞いているのだが…」
「噂ですので。それで私は今冤罪をかけられそうになったのですが」
「そうだったな。何か申してみせよ。わびとしてかなえてやろう」

 その言葉に周りはざわつく。

「父上!?」
「黙れ。私はお前をそんなに愚かに育てたつもりはない。王位は第二王子に継がせよう」
「私はもちろん長男に。お前は当主の座を狙っていたようだが」
「「父上??」」
「スミレ、とか言ったか。その者は牢にでも入れておけ。娼婦のような貴族など我が国にはいないわ」
「ちょっと!どういうこと!私はヒロインなのよ!こんなことしてただですむと思ってるの!バッカス様!助けて!」
「スミレ!」

 とんだ茶番をしている。叫びながらヒロインと取り巻き達はそのまま兵に連れ去られていった。因に、第一王子のフルネームは《バッカス・ギール》だ。出番少なかったなヒロイン。まぁどうせ馬鹿作者が面倒いからとか思って書かなかっただけだろう。好き勝手してるな作者。

「それで、何を望む?」
「そうでございますね…では、平民落ちを今すぐに実行してくださいませんか?」
「何だと?」

 私の答えにここにいるすべての人が驚いている。国王までも。お父様は固まってる。

「私は自由になりたいのです。貴族という物は私には合わなかったようです」
「...はははは!面白い!いいだろう!認めよう!今からお前は平民だ!」
「感謝します。お父様。今まで育ててくれてありがとうございます」

 少し遠くにいるお父様に別れを告げる。そしてシーラたちの方へ向く。

「シーラ、クリス、ローレン。頑張ってね」
「待ってください」

 泣きそうな顔でこちらをまっすぐと見据える。

「シーラ?」
「あのときの約束はどうなるのですか?」
「約束。覚えてるよ。大丈夫。16歳のとき、改めて答えを聞こう」

 私はシーラの手を握り、ある物を持たせる。シーラは少し驚いていたが、それをちゃんと受けっとってくれた。

「セバス」

 指を鳴らし、セバスを呼ぶ。バッとクロロフェルの隣に現れる。

「準備は?」
「既に」
「そう。では、皆様さようなら」

 こうして、まだ固まっている貴族たちを残し一例して、消えた。

「な!消えた…」
「転移魔法。実力を隠していたと思えるな。本当に面白いやつよの。惜しいことをしたかもしれぬ。」

 その言葉が異様に響いた。

ーーーーーー
終わった!次は冒険だ!主人公もある程度育ったので時間が進むのが遅くなります。ここからがメインということで!こちらもメインですが。
  少し心配なのがちょっと無理矢理終わらせたかんがあって、皆様の想像する物と違っていなくなっていないかです。前の作品もそうなってしまった記憶が少し...。


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