ある令嬢のスローじゃない人生

シュミー

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一章:転生しちゃった

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「入れ」

 ドアの向こうから低い声が聞こえた。うーむ。中々に渋い声。流石イケメン。というか父の年齢考えるとハンサムかダンディなのかな?因みに父は二ヶ月に3度くらいは会いにきてくれる。平民落ちも決まってるのに…娘に対する愛情かな?まぁ、全く話さないんだけどね!

「失礼します」

 私は侍女に開けてもらったドアをくぐる。そこには三人の子供がいた。二人が男で、一人が女の子。全員美形…

「そこに座れ」

 指定された椅子へ向かう。超高級そうなソファー。座ったらヤバイくらい柔らかかった。ぱねぇ。さすがお金持ち…
 私が座るのを見ると、父は私から目線を外す。そして、三人の子供に目線を移す。

「三家のご令嬢、子息殿。今回きてもらったのは他でもない次期当主候補になってもらいたい。14歳までにこの家で鍛え、誰が一番優れているかで決めたい。」
「ですがどうやって決めるのですか?」

 一人の黒髪黒目の背が一番高い子供が言った。この世界に取って珍しい色彩だ。前世では珍しくなかったけど。っていうか次期当主候補…いつかくると思ってたけど、無能でごめんなさい。

「確かにそうですね」

  金髪ピンク色の目の女の子が言った。女の子の中で一番可愛いと思う。私が見た中で一番。最後に。

「同感です」

 赤髪金目の少年が言った。

 なぜだ!!何故に皆美形なのだ!!顔面偏差値どんな感じなのかわからない!

 因みにおじいちゃんと違って父は魔法師らしい。結構強いそうだ。父は一応剣も使えるらしいから、魔法騎士らへんだと思う。

「そこでクロロフェルを使う」

 そうすると、お父様と子供達がこちらを向く。うわ、視線いたーい。

「クロロフェルに点数付けしてもらうのだ」

 点数付け?

「あの、点数付けとは?」
「その名の通り、クロロフェルに当主としての点数をつけてもらう。最後にその点数が多い者が当主となる」
「わかりました」

 なんで!?今のでわかったの?納得したの?

「失礼ですがルーカス様の娘だとしても何故平民落ちが決まったものを…」
「そうです。平民落ちが決まった者が適切な得点付けできるとは思いません」

 同感。というか皆んな本当に4歳なの?学校は5歳から15歳まである。つまり学校を卒業すると前に私は平民となる。それは置いておいて、その学校さへまだ始まっていないのに、こんな頭良さそうだなんて。それで何故に私?

「クロロフェルの見る目だけは一級品だ」

 だけ?だけってちょっと酷くない?

「それはどういうことですか」

 何度見ても美人さん。子供の割に相当な力持ってるんだろうな。女はこの世界で生きずらいらしい。力さえあれば、当主などになれるけど…

「昔一度クロロフェルが一人スラム街の子供を連れてきたのだ。一度きりのクロロフェルの頼みにより、その子を騎士団に入れたのだ。その子は今では最年少で隊長格にまでなっている」

 ああ、昔にあったな。お父様に平民になる前に一度だけ望みを叶えてやると言われたんだよね。そんでたまたま見つけた男の子を拾って、お父様に頼んだったんだっけ。あの子は剣に向いてたしね。意外と隊長格になったのは早かったな。私より5歳しか上じゃないのに。

 あ、心当たりあった。おじいちゃんに教育頼んだったんだ。これだ。これで間違いない。スパルタ教育の賜物だな。申しわけない。次会える機会があればなんかあげよう。

「偶然ではないですか?」
「それも考えた。だから見習い騎士達をクロロフェルに見せて、誰を騎士にあげるかを聞いた。クロロフェルの指定したものは全員驚くべき成長を遂げている。それで点数係に任命した」

 あの時か。一度だけお父様と出かけた時、「この中でめぼしい人物はいるか?」と聞かれたことがあった。そういえばあれがはじめての会話だったりする。

 それで、何人か指名して、合わない武器を使ってたら、合う武器に変えろって言ったっけ。

「訓練をしてもらうと同時に、一応点数係のクロロフェルを守れ。それが当主となる条件だ」
「それはクロロフェル様の護衛をするということですか?」
「だいたいはそうだが、訓練をしながらだ。クロロフェルはお前達の後をついていき、点数を図る」
「わかりました」

 えー。マジで?私の自由時間を!一応この国に貢献してるのに!平民になった時に生きてけるように冒険者にもなったのに!遊べないし、お金稼げない!というかそれ護衛じゃなーい!

 でも何言っても変わらないか。父は一瞬私をチラ見してから、は部屋を出て行った。

 静かだ。なんで誰も喋らな……

「疲れたー。でもこいつを守っとけば当主になれる。お得な話だな」

 ……やっぱり。赤髪は俺様系で猫かぶってるって相場だ。

「失礼ですよ。一応これでも点数係。下手な態度をとったら点数がマイナスになるぞ」
「そうですよ!」

 皆んな何気にひでぇな。すると黒髪黒目の人がこちらを向き、頭を下げた。

「初めましてクロロフェル様。私は《ローレン》と申します。少しの間だけですが一応主人になるお方。様は入りません」

 格下相手でも礼儀正しい。でも少しお腹が黒い。女の子もこちらを向き頭を下げた。

「初めまして。私は《シーラ》と申します。これからよろしくお願いします」

 うんうん。最後に赤髪の少年が、悪態つきながら、

「俺は《クリス》だ。せいぜいいい点つけろよ」

 クリス……似合わねぇ!マジで似合わねぇ!ははは!

 私は心の中で笑う。そして、手で侍女を呼ぶ。そうするとある表を持ってきてくれた。ペンも同様に。そこに書き込む。

「ローレンプラス1、シーラプラス1、クリスマイナス1」

と。父に頼まれたんだ。初めて頼まれたこと。やる気が出ないわけではない。

「「「え?」」」
「お父様に言われたことですので、厳しくつけさせていただきます。私はクロロフェル・F・ユリウスと申します。どうぞよろしく」

 私は頭を下げる。みんなは息を少し飲むが動揺はしないらしい。当たり前か。これで動揺してたら笑いもんだ。

 そうだ。言い忘れてたけど、私の髪は銀色で、目は淡い紫。封印解けば、色変わるけど。

 因みに私は未来に超がつく美人になります。それは、転生する前にちょっとありまして。今も十分可愛いんですが、おじいちゃんがくれた認識阻害で、普通に見える。形はブレスレットだね。柄も可愛いから、誰もこれが魔法道具なんて知らないし気楽にいこうか。

 これで問題なく点数をつけられる。

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