私はモブのはず

シュミー

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アルノドside  短かい。それと、急いで挟んだ話なので、乱文気味。
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「書類はできたか?」
「も、申し訳ありません?まだです!」
「早くしろ!明日に必要だぞ!」
「宰相!こちらの計算があっていません!」

 場所は王宮にある広い部屋。そこは資料の山が置かれ、同じ制服をきた者たちがある人物に話を持ちかけて、資料の束を置いていく。

 そうアルノドだ。今アルノドは東方面の砦で起きた魔獣襲撃で壊れた武器や砦などの予算や、報告書、対策のための会議の資料を作っていた。

「報告書が汚くて読めません!」
「気合いで読め!」
「予算が足りません!」
「知るか!!次の会議で聞く!!」
「魔獣の素材が届きました!」
「そのまま運んどけ!」

 怒鳴り声が飛び交う。外はもう日が落ちる寸前だ。

 ×  ×  ×

「ふう……」

 完全に日が落ちたとき、部屋からは怒鳴り声は消えた。

 今日は泊まりか。こんな時期に面倒ごとを持ってくるとは……魔獣も空気を読んで欲しいものだ。

「宰相」
「なんだ」

 今日はもう終わりのはずだが……早く家に帰って天使たちに癒されたい。

「第一王子様が頼みたいことがあると...」
「ジルドレッド殿下が?」
「はい」
「そうか今すぐ行く」
「それがもう応接室におつれしていて」
「わかった」

 殿下自らの頼み事とは珍しい。私は応接室のドアを開ける。そこには青みがかった白い流れるような髪をもつ殿下が座っていた。疲れているのだろうか、紫の目を閉じている。

 私の今までの人生で一番の美形だな。

「殿下。お待たせして申し訳ありません」
「アルノド」

 まぶたがあがり、見事なまでの紫の瞳でまっすぐとこっちらを見ている。いつからこんなに堂々となったのだろうか。勉強の方もそうだ。逃げてばかりと思えばいきなりテストを受けて、すべて全問正解でといた。いつから変わったのだろうか?

「いきなり呼んですまなかったな」
「いえいえ。お呼びとあらば」
「それで早速なんだが、鍵付きの破れにくい紙で出来ている手帳が欲しい」
「手帳、ですか?」
「ああ」

 そんな物であれば使用人などに頼めば良いのでは?

「本当に丈夫で、私の魔力で開くようなのがほしいんだ」
「なんでそんな物を?それは魔法道具でかなり値段が高いはずですが」
「だからお前に頼んでいる」

 よほど誰かに見られたくないのか?手帳というから日記なのだろう。ということは日記の内容を誰にも知られたくないと。

「なにかありそうですが、聞かないでおきましょう」
「すまない。感謝する」
「いえいえ。すぐに手配します」
「それともう一つあるんだが」

 殿下は言いにくそうにして、目をすこし泳がせる。久しぶりに弱気の殿下を見た気がする。

「なんでしょうか?」
「何も入っていないロケットを手配してくれないか?」
「ロケット?これまた何のために」
「すこしな...壊れにくい物にしてくれ。それと色は銀にしてくれないか?」
「わかりました一緒に手配しておきます」
「ありがとう」

 ホッとしたのか殿下は肩の力を抜いて紅茶を飲む。その仕草は優雅で、どこか気品を感じさせる。本当にどこで作法や礼儀などを学んできたのやら。逃げてばかりだったのに。

 そういえば...作法とかどことなくリナに似ているような.....

「わがままを言ってすまないな。これで失礼する」
「少しお話しませんか?娘が作ってくれたお菓子があるんですよ」

 私はこの時初めて殿下をお茶に誘った。なんとなく、リナが作ってくれたお菓子を食べさせた方が良いと思ったのだ。

「お菓子....いただこう。ところで娘というと弟の婚約者候補のフィーネ嬢のことか?」
「いえ。違います。親友から預かっているんですが、私も娘のようにおもっていまして」
「そうなのか。名前はなんと言うのだ?」
「名前はり...「失礼します。お茶のおかわりを」....ああ、すまない」

 空になっていたお茶をメイドが新しくついでいく。

「失礼いたしました」

 バタンっとメイドは出て行く。普通なら音を立てないでドアを閉めるはずなのだが、寝不足なのだろう。目の下に大きいクマがあった。

「ああ、申し訳ない。これが娘が用意してくれたお菓子だ」
「これが....前にもこれを作っている人がいたな」

 私が取り出したのは可愛いよくわからない生き物をかたどったクッキーだ。

「ウサギ.....」
「うさぎ?と言うのですか?」
「ああ、前に教えてもらった。うまいな」

 殿下は口にクッキーを含みそう言う。私も初めて食べたときはびっくりした。王室料理人よりおいしいと思ってしまったぐらいだ。だが、そんなに驚いていないな。

「また食べにきても良いだろうか?」
「きにいったのですか」
「ああ。もう夜も更けている。そろそろ寝なければな」
「それでは」

 殿下は部屋を後にした。その時入れ替わる夜に私の屋敷に仕えている執事が部屋に入ってきた。

「失礼します!」
「なんだ?どうかしたのか?」
「リナ様とフィーネ様が!!」

 そこまで聞いて、私は部屋を飛び出した。

 ×  ×  ×

 同じような味がした。あのクッキー。

 俺は唇を指でなぞり、先ほど食べたクッキーの味を思い出す。

 リナはたまに勉強の休憩と言って、お菓子や軽食を出すことはよくあった。リナの手作りクッキーは食べたことは無いが、似ていた。

 まだ分かれて一ヶ月も立っていないというのに、こんなにも寂しいのか。

 なくさないように早く髪をロケットにしまっておきたい。出会ってからのことを記したい。

 俺はベットに倒れ込んで、簪を見つめる。リナがくれたものだ。桜の真ん中には綺麗な銀の石。ここからリナの魔力が感じられる。魔力石だろう。

「ふふふ」

 俺は笑みをこぼした。端から見れば変態だろう。俺は優しくその簪にキスをしてから、布団に潜った。

ーーーーーー
因にジルはリナが作った物で食べたことがあるなら一発でわかります。
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