14 / 100
5月
買い物係、拝命
しおりを挟む
「未希ー」
千香ちゃんがエプロン姿でやって来た。
家庭的な姿、いいねっ。お嫁さんに欲しい!結婚したいよ。毎日その恰好で私にご飯を作って!
「あれ、兄さんもいたんだ。今日未希が来ること教えなかったのに」
「ああ、やっぱりわざとか」
すぐに二人の目線がはずれたけど、一瞬兄妹の間に火花が散った気がする。
なんで?
「未希、買い物行ってくれないかしら?最後のトッピングの材料が足りないのよ……」
悲しそうに目を伏せる千香ちゃん。
この姿を見て断れるはずがない!千香ちゃんを喜ばすのだ!
「いいよ。何買ってくればいいの?」
「ありがとう!このメモに書いといたわ。すぐそこのスーパーに売ってるはずよ」
「ラジャー!」
千香ちゃんからメモを受け取る。
スーパーは、西川家から歩いて五分くらいのところにあるからすぐに帰って来れるだろう。
って、メモに書いてきたってことは私に行かせる気満々だったんだね、千香ちゃん。
この小悪魔め。
「行ってきますっ」
千香ちゃんに敬礼し、いざスーパーへ。
けど、なんでか知らないけど葵先輩も一緒に来てくれるって。
……先輩、勉強しなくていいんですか?
「買えて良かったですね」
これで千香ちゃんに喜んでもらえる!
目的のものはすぐに見つかり、精算も済ませた。
レジ袋は自然な流れで葵先輩が持ってくれた。さすが、学園の王子。
二人で並んでスーパーの自動ドアをくぐり外へ出ると、小さな男の子が私の目に入った。
駐車場に立ち尽くす五歳くらいのその子の周りに、親らしき人は見当たらない。
泣き出してはいないが、大きな目には涙が溜まっている。
私は駆け寄って、しゃがみ込み目線を合わせる。
「大丈夫?」
「ママ、いないー」
男の子の目に溜まった水が決壊しそうだ。
「その子、迷子?」
後ろから葵先輩の声。
あ、さっきこの子に駆け寄った時に先輩置いて来ちゃってた。すみませーん。
「そうみたいです。よし、お姉ちゃん達と一緒にママ探そうか」
前半は先輩に、後半は男の子に向けて言う。
男の子と手を繋いで駐車場を一回りしてから、スーパーの中を探しに行く。
スーパーの中に入った直後、血相を変えて探していた母親に遭遇した。
母親は中に入ってから子供がいないことに気づいて、探していたらしい。
「お母さん、見つかって安心しましたー」
「本当に良かったね」
千香ちゃんの家への帰路、当然のように葵先輩が道路側を歩いてくれる。
そう言えば、行きも道路側を歩いてくれてたかも。
「スーパーを出た時、未希が突然走り出すから何かと思ったよ」
何も言わずに、体が動いちゃったからね。
言えばよかったですね。
「すみません」
「どうして、謝るの?未希がしたことは立派なことだよ」
立派……。言われ慣れない言葉だ。
呆れられることとかはよくあるんだけど。
その言葉を噛み締め、幸せな気持ちに浸っていると、
「よくできました」
フワリと先輩が私の頭を撫でてきた。
葵先輩の顔を見上げると、優しい表情で笑っている。
思わず笑い返す。
えへへ。すごく嬉しいです。
これから千香ちゃんのお菓子も食べられるし、今日はいい日ですね!
千香ちゃんがエプロン姿でやって来た。
家庭的な姿、いいねっ。お嫁さんに欲しい!結婚したいよ。毎日その恰好で私にご飯を作って!
「あれ、兄さんもいたんだ。今日未希が来ること教えなかったのに」
「ああ、やっぱりわざとか」
すぐに二人の目線がはずれたけど、一瞬兄妹の間に火花が散った気がする。
なんで?
「未希、買い物行ってくれないかしら?最後のトッピングの材料が足りないのよ……」
悲しそうに目を伏せる千香ちゃん。
この姿を見て断れるはずがない!千香ちゃんを喜ばすのだ!
「いいよ。何買ってくればいいの?」
「ありがとう!このメモに書いといたわ。すぐそこのスーパーに売ってるはずよ」
「ラジャー!」
千香ちゃんからメモを受け取る。
スーパーは、西川家から歩いて五分くらいのところにあるからすぐに帰って来れるだろう。
って、メモに書いてきたってことは私に行かせる気満々だったんだね、千香ちゃん。
この小悪魔め。
「行ってきますっ」
千香ちゃんに敬礼し、いざスーパーへ。
けど、なんでか知らないけど葵先輩も一緒に来てくれるって。
……先輩、勉強しなくていいんですか?
「買えて良かったですね」
これで千香ちゃんに喜んでもらえる!
目的のものはすぐに見つかり、精算も済ませた。
レジ袋は自然な流れで葵先輩が持ってくれた。さすが、学園の王子。
二人で並んでスーパーの自動ドアをくぐり外へ出ると、小さな男の子が私の目に入った。
駐車場に立ち尽くす五歳くらいのその子の周りに、親らしき人は見当たらない。
泣き出してはいないが、大きな目には涙が溜まっている。
私は駆け寄って、しゃがみ込み目線を合わせる。
「大丈夫?」
「ママ、いないー」
男の子の目に溜まった水が決壊しそうだ。
「その子、迷子?」
後ろから葵先輩の声。
あ、さっきこの子に駆け寄った時に先輩置いて来ちゃってた。すみませーん。
「そうみたいです。よし、お姉ちゃん達と一緒にママ探そうか」
前半は先輩に、後半は男の子に向けて言う。
男の子と手を繋いで駐車場を一回りしてから、スーパーの中を探しに行く。
スーパーの中に入った直後、血相を変えて探していた母親に遭遇した。
母親は中に入ってから子供がいないことに気づいて、探していたらしい。
「お母さん、見つかって安心しましたー」
「本当に良かったね」
千香ちゃんの家への帰路、当然のように葵先輩が道路側を歩いてくれる。
そう言えば、行きも道路側を歩いてくれてたかも。
「スーパーを出た時、未希が突然走り出すから何かと思ったよ」
何も言わずに、体が動いちゃったからね。
言えばよかったですね。
「すみません」
「どうして、謝るの?未希がしたことは立派なことだよ」
立派……。言われ慣れない言葉だ。
呆れられることとかはよくあるんだけど。
その言葉を噛み締め、幸せな気持ちに浸っていると、
「よくできました」
フワリと先輩が私の頭を撫でてきた。
葵先輩の顔を見上げると、優しい表情で笑っている。
思わず笑い返す。
えへへ。すごく嬉しいです。
これから千香ちゃんのお菓子も食べられるし、今日はいい日ですね!
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる