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4月
学園の王子様 1
しおりを挟む「お邪魔しまーす」
さてさて、in千香ちゃんのお宅である。
「何ケーキ焼くの?」
私はワクワクを抑えきれず千香ちゃんに聞く。
ああ、千香ちゃんがエプロンつけてる。可愛いよぉ。
「チーズケーキよ」
「わーい!」
大好物である。
ま、千香ちゃんのケーキならなんでも好物なんだけど。
「作るから、テレビでも付けて待っててね」
「うん」
千香ちゃんが作ってる最中は大人しく待つ。
え、手伝えって?
手伝おうとすると、邪魔すんな、と怒られる。
昔手伝おうとしたら、一人でお菓子作りに没頭したいから邪魔だ、と言われた。
面白そうなテレビがなかったから、ただただボーッとしてケーキの完成を待つ。
と、そこへ
「ただいま」
「おかえりなさい。お邪魔してまーす、葵先輩」
ちょうど帰ってきてリビングの扉から入って来た葵先輩。
人当たりの良い柔らかな笑顔が眩しい。
千香ちゃんのお兄さんにして、ゲームでは攻略対象の葵先輩。
黒髪で、スラリとした長身。千香ちゃんとよく似た瞳は、優しげな色をしていて、常に笑顔を絶やさない。
物腰柔らかで、整った容姿と甘い笑顔から、一部女子の間では学園の王子様と呼ばれてたりする。
ゲームの中での葵先輩については全く覚えてないから、ゲームと現実では何か変化があるのかは分からない。
てか、葵先輩だけじゃなくて他の攻略対象の男子についてもほぼ覚えてない。
前世ではライバルキャラが出てくるまでの春から夏にかけては攻略サイトを見て、イベント類は全部スキップで進めていた。
だから、どんな性格でどんなイベントがあったかなんて知らん。
だって、ゲームの中で男になんて興味なかったんだもん。
その代わりといっちゃなんだが、ライバルキャラのルート内容は詳しく覚えている。
女の子同士の友情ルートが至上なり。
「未希、高校生活はどう?楽しみにしてたでしょ?」
葵先輩が私の隣に座りながら尋ねてきた。
「楽しいですよー!可愛い子がいるんです」
あんなに待っていたヒロイン、美鈴ちゃんが存在してるんですよ。
可愛さ爆発して、私爆死しちゃうよ。
美鈴ちゃんは、ちょこちょこ動いててまるでハムスターみたいだなって今日見ながら思っていたのだ。
「あっ、でも、別に浮気じゃないんですよ?!千香ちゃんのこと、ちゃんと好きですからね。千香ちゃんが一番です!結婚したいです」
現実世界では、千香ちゃんの方がヒロインよりも好きなのである。とびっきり可愛いと思うのだ、本当に。
千香ちゃんとはもう長い付き合いの友達だから、今世でポッとでてきたヒロインを一番だと思うことはできない。
そこは一緒にいた年月が違うのだ。
それなら美鈴ちゃんと友達にならなくていいじゃないか、って?
それはだめだ、絶対ダメ。
可愛いは正義、可愛いものは愛でる。
これが私のポリシーです。
美鈴ちゃんは二番目。限りなく一番に近い二番目なのだ。てか、ほとんど同着一位!
だから愛でる!
「変な宣言を兄さんにするな!迷惑よっ!」
キッチンからひょこっと顔を出して千香ちゃんが叫んだ。
迷惑って、ひどい……。
「千香と仲が良いのはいいんだけど、結婚はダメだよ?」
非常に複雑そうな顔をしている。
葵先輩は私が千香ちゃんと付き合いたいとか結婚したいと言うとよくこの表情を浮かべる。
女の子同士だからかな?
ま、私自身はノーマルだから、冗談のつもりなのだが。
え、なに?疑わしい目でこっちを見ないでよ。
あれ、葵先輩もこっちをみる視線がなんだか厳しくない?
私は可愛いものを愛ではするけど、ちゃんとノーマルなんだからっ!
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