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伝説の女勇者、ユーフィリア
しおりを挟む昔むかし。
世界は暗黒の時代を迎えていました。
それは、満たされない心のせいで不安定で危険な魔王が君臨したせいです。
魔王の心を補うものが見つからず、魔王は鬱憤を晴らすように悪逆を尽くしました。ずっとずっと不安定な魔王のその悪行は、長く過激に続くこととなりました。
世には魔物が溢れ、空は暗く閉ざされました。
人々は毎日恐怖と戦いました。
そんな時に、たった一人の女性が立ち上がったのです。
それが伝説の女勇者、ユーフィリアです。
彼女は誰よりも強く、誰も彼女に追随することは出来ませんでした。
彼女の強さの前では、誰もが皆等しく弱い存在でした。
彼女と肩を並べて戦うことは叶わず、足手まといにしかならなかったのです。
人々にとって、ユーフィリアだけが希望の光でした。
愛すべきユーフィリア。
彼女はとても強い人でした。
どこまでも優しい人でした。
非常に誠実な人でした。
高潔な精神を兼ね備えた人でした。
世界中の人間を元気を与え、誰もに愛されて応援された人だったのです。
ユーフィリアは世界の声援を背に、一人で戦い続けました。
戦い続けたユーフィリアは、最後に一人魔王に挑んで行きました。
人々は足手まといにならないよう、ユーフィリアの帰りを待つしかありません。
世界中で、ユーフィリアが勝てるよう、無事に戻るよう、祈りを捧げました。
ある時。
来る日も来る日も祈る人々を祝福するように、天から光が差しました。
魔王が登場して以来、重く厚い雲に覆われて光が差さなくなっていたのにです。
人々は狂喜乱舞しました。
なぜなら、ユーフィリアが魔王を打ち破った証拠に違いないからです。
世界は歓喜に沸きました。
そして、ユーフィリアを讃えるために様々な準備をして彼女の帰りを待ちました。
ユーフィリアのために、彼女を待ちました。
しかし。
ユーフィリアはいくら待っても帰っては来ませんでした。
そこで初めて世界中の人々は知ったのです。
ユーフィリアは魔王と相打ちしたのだと。
世界は悲しみました。
人々はユーフィリアが帰ってくると信じてやまなかったので、その事実が受け入れられませんでした。
彼女が死んでしまったのだと、思いたくはなかったのです。
皆が悲しみ、皆が涙し、彼女のことを想いました。
戻ってこないのが嘘であってほしいと信じたかったのです。
そんな時に、世界中の人々は考えました。
自分たちに力がなかったから、ユーフィリアは死んでしまったのではないかと。
もしも自分たちが強かったなら、ユーフィリアの隣で戦うことができたかもしれません。
ユーフィリアを救うことができたかもしれません。
そもそも、一人きりで彼女を戦わせることもありませんでした。
弱いばかりに、ユーフィリア一人に負担を押しつけてしまったことに人々は気がついたのです。
ただ祈って待つばかりの時間は、苦しいことをすでに世界中の人々は知っていました。
だから動き出さなくてはいけないと思ったのです。
未来で魔王が現れても、きっとユーフィリアの意志を継ぐ人々がその凶行を止められるように。
魔王が欲したものに手を伸ばせないように。
皆で彼女が愛した世界を守るべく。
人々は強くなる努力を始めました。
その努力は子に引き継いで、何年も絶やさない意志を決めたのです。
もしも次にユーフィリアに会えたなら、笑って隣を歩くために。
魔王を打ち倒した、勇猛果敢な勇者さま。
それが伝説の女勇者、ユーフィリア。
彼女の偉業は永遠に語り継がれ、彼女を愛する気持ちは永劫受け継がれるのです。
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