夢じゃなかった！？

エスリアール王城 出会い

ランチは天空の庭スカイガーデンで1

草花の手入れがゆき届いた庭はいわばヘリポートなのかもしれない。歩いた先にはかわいらしいバラのゲートがあり、二人で通り抜けてから小道こみちを進む。

ここが、空に浮いているなんて、見たけど信じられないというか実感が沸かないな。不思議だけど、寒くもない。これだけ上空にあるなら寒くて凍える筈だけどきっと魔法で何か幕でも張るか、外気を調整する魔法でもしているのかもしれない。

石造りの建物の入り口まで誰ともすれ違わなかった。扉の前にはドアマンのような制服の男性が頭を下げ、扉を開けた。

「いらっしゃいませ。どうぞ、お入りくださいませ。」


中に入ると、執事服のような出で立ちの渋い男性が声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ。サリアン様。ようこそお越しくださいました。」
「暫しばらくぶり。エリオット。突然だけど、何時いつも通してもらう場所とまでは言わないから落ち着いて話もできる静かな所、空いてる？」

「はい、ご案内できます。サリアン様が女性をお連れになるとはとても珍しいですな。」

「そうだろう。初めてだからね。食事がてら大事な話もしたいんだ。人払いを頼みたい。」

「承知致しました。そのように取り図り致しましょう。」
「アーヤさん、彼はこの店の支配人オーナーで、エリオット・クラーク。私の元執事長で幼少の頃からの厳しい教育係だよ。転職して今はこの店の最高責任者。」


「エリオット、彼女は私が勤めてる例の学院へ今度編入して来ることになったエスリアールで保護された迷客のアーヤ・サトーさん。」
「やはり！？迷客様でございましたか。失礼ながらその異国にもない黒髪と瞳を拝見した時からもしやと思っておりましたが…。

アーヤ・サトー様ようこそお越しくださいました。この店を代表して心より歓迎致します。何でもお好きな物をご注文なさってくださいね。サリアン様とごゆっくりなさってください。」
「ありがとうございます。サリアンさんには最近お会いしたばかりなのですが、いつもお世話になっております。」


「私としたことが、申し訳ございません。このような場所に長々と。どうぞこちらへ。ご案内致します。」

石造りの建物の中はインテリアも趣味が良く、ランプの光も味があり中世にタイムスリップしたかのようだ。
石の床の上にペルシャ絨毯のような長い敷物が敷かれ、石畳を歩く負担はなく足元の靴音も吸収している。


移動しながら、綾子はエリオットと呼ばれる男性に何故サリアンが砕けた態度だったのか謎が解けて納得した。


なるほど、元執事長で教育係…ね。それが転職して飲食店の支配人オーナーになったんだ。

全く別の職種だけど、うん。それもありだよね。ありあり。すごいな～。本当にすごいと思う。