夢じゃなかった!?

Rin’

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マジェストーラ国立魔法学院 編入

水の都セルリアン~湧水と水稀4

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ようはアーヤの意思で影からの出入りをしているのだから難しく考える必要はないのか。

アーヤが水稀へ影を通じて水を届けたたいと意識すれば済むような気がする。

ありがたいことにさっきの水汲み場では、岩壁の影が横広がりでアーヤがたたずんで湧水を飲んでいた時も足元の影と繋がっていた。水稀のいる影が拡張され、岩壁から流れる水が影にも自然に取り込めるだろう。)



「私が思うに、水稀と特別な召喚術をほどこしたその影…。」

「はい。」

エルシオンがアーヤの足元を指差し示し、アーヤも自身の影を見る。


「その影は、実に複雑な術式が組み込まれているが、いつも呼び掛けだけで現れるということは声が届いているということだ。単純な話、声が届くなら水も届くと思ったんだが、どう思う?」

「なるほど。言われてみれば、そんな気がしてきました。」

「きっと今まで通り意識して、実際に言葉を水稀に掛けてやるだけで空間は繋がる。」

流石さすがシオンさん。じゃあ、人のいない湧水の流れてる所に行って試してみましょう。」



(私、難しく考えすぎていたのかな。シオンさんの説明をきいて、魔法云々うんぬんじゃなく、今してることの延長というか、何となくだけどわかった。)

「じゃあ…この辺かな。シオンさん、ちょうど今他に人がいないし、やってみますね。」

「ああ。」


(一応小さめの声にしよう。影も…よし、岩壁の影の中と同化してる。)

アーヤは自分の足元の影に向けて小声で語りかけた。

「水稀、人目を忍んでるから返事は鳴き声で小さめにして。」


“…にゃん。”


「今、湧水のある場所にいて、そっちに送れるか試してみるから、できたら水浴びしてみてね。」


“にゃん。”



「うん、ここなら湧水も影に届いてる。」

トポトポトポトポ

チョロチョロチョロチョロ


(水稀に水が届きますように。冷たくてびっくりするかな。)


アーヤの後ろでことの成り行きを静かに見守るエルシオン。

(自分の推察が果たして合っているのか100%の自信があったわけではなかったが、どうやら間違いではなかったようだ。

アーヤの周囲に流れている数本の湧水が、地面を跳ねずに影に注がれている。影の範囲が拡張されたお陰で影に届く水は4本もある。)

トポトポトポポポポ

チョロチョロチョロチョロ


“…グルグゥグ…ルグゥ… グルグゥ……ふにゃ~♪”



チャポチャポポポポポ

チョロチョロチョロチョロ


心地よい水流の音に紛れてエルシオンの耳が拾った何とも気の抜けた鳴き声。

(おや?水の音に紛れたこのかすかに聞こえるうなりは…。喜んでもらえているようだ。)


「う~ん、近くで見れば見る程、影に水が吸い込まれてるっていう異様いような光景けど…。大丈夫かな、水稀。」

屈んで黒い影をまじまじと見つめ、若干じゃっかん戸惑とまどいの表情でいるアーヤ。


「安心おし。ちゃんと届いているし、喜んでいる声が聴こえてる。グルグルうめうめいたり、喜んでいそうな声がしたよ。」

「良かった…。」


“きゃははっ、待てよ!”

“競争だぞっ!”


(さっきの子供達がこっちに来る?!ヤバい。)

「水稀、そろそろ人が来ちゃうから水浴び終わるからね?」


“にゃ~。”


(え~と、どうやって水浴びを終わらせる?!とりあえず口に出して意識する?!)
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