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マジェストーラ国立魔法学院 編入
寝る前にside***エルシオン&ルヴァニレット5
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「ああ、明後日がこの国で言う暦上、5月7日だが、その開院記念日は11日で、12と13日は春の恵みを祝う祝祭日になっているから3連休になる。」
「祭日と合わせてあるのか。だから泊まりで誘われたのか。」
「泊まりなのか?」
「そうだ。アーヤと同じ日本の迷客同士だからゆっくり話したいんだそうだ。」
「既に退位した国王が黒髪、黒目の迷客でまさかアーヤと同郷だったとはな。王都の祭にもともと連れて行くつもりだったから日帰りが泊まりになっただけだ。問題ない。」
「…ありがとう、ルヴァニレット殿は優しいな。」
「べ、別についでだ、ついで。僕も王都の祭が見たかっただけだ。」
そう言った後、お茶を入れ直してくると言い残しキッチンに行ってしまったルヴァニレット。その手にあるはずのポットはテーブルに残されたままである。
クスリ
(まったく、素直じゃないな。しかし自分もルヴァニレット殿のことを言える程、できた性格ではないか。)
「…………。」
キッチンから戻ったルヴァニレットの視線はポットに向けられ、チラッとエルシオンと目が合ってからばつが悪そうにフイッと反らされた。
「はいこれ。私も手伝おうか?」
「いい。待っている間、着替えでもしてくるといい。」
視線を合わせないように(ポットを受け取るルヴァニレットの横顔はほんのり赤く、エルシオンは素知らぬ態度で合わせることにした。
「じゃあ、そうするかな。」
ポットを預け、自分の寝室となる部屋で寝衣に着替える。
(アーヤに関する最近起きた重要なことは大体話したか。後は、これからの学院生活についてか。明日のこともあるから程々にして切り上げないと彼にも悪いな。)
着替えてから再びテーブル席へ戻ると湯気が漂う熱々の紅茶と、菓子が並んでいた。
「良かったら食べてくれ。アーヤの話が落ち着いたのなら、明日の予定を話さないか。」
「良かった。アーヤのことは大体話終えたし、私からも明日のことを聞きたかったんだ。」
その後は互いに聞いておきたいことをいくつか確認し合った。編入初日、講師室に呼ばれているので時間と案内を頼むと、はなからそのつもりだと即答された。
最後に教えるべきかほんの少しだけ逡巡したエルシオンであったが、知らないと知らないで面倒なことになるかもしれないと思い、アーヤが故郷の暦上、今日が誕生日だった事実を自分とブラム先生が知り得たことについて話すことにした。
すると、途端に難しい顔になり明日のこともあるので失礼すると彼の寝室に行ってしまった。素直じゃない言動もあるが、ある意味素直過ぎる一面も垣間見ることになった。
(何故あんなに深刻な顔をしたんだろうか。)
「祭日と合わせてあるのか。だから泊まりで誘われたのか。」
「泊まりなのか?」
「そうだ。アーヤと同じ日本の迷客同士だからゆっくり話したいんだそうだ。」
「既に退位した国王が黒髪、黒目の迷客でまさかアーヤと同郷だったとはな。王都の祭にもともと連れて行くつもりだったから日帰りが泊まりになっただけだ。問題ない。」
「…ありがとう、ルヴァニレット殿は優しいな。」
「べ、別についでだ、ついで。僕も王都の祭が見たかっただけだ。」
そう言った後、お茶を入れ直してくると言い残しキッチンに行ってしまったルヴァニレット。その手にあるはずのポットはテーブルに残されたままである。
クスリ
(まったく、素直じゃないな。しかし自分もルヴァニレット殿のことを言える程、できた性格ではないか。)
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「はいこれ。私も手伝おうか?」
「いい。待っている間、着替えでもしてくるといい。」
視線を合わせないように(ポットを受け取るルヴァニレットの横顔はほんのり赤く、エルシオンは素知らぬ態度で合わせることにした。
「じゃあ、そうするかな。」
ポットを預け、自分の寝室となる部屋で寝衣に着替える。
(アーヤに関する最近起きた重要なことは大体話したか。後は、これからの学院生活についてか。明日のこともあるから程々にして切り上げないと彼にも悪いな。)
着替えてから再びテーブル席へ戻ると湯気が漂う熱々の紅茶と、菓子が並んでいた。
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「良かった。アーヤのことは大体話終えたし、私からも明日のことを聞きたかったんだ。」
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すると、途端に難しい顔になり明日のこともあるので失礼すると彼の寝室に行ってしまった。素直じゃない言動もあるが、ある意味素直過ぎる一面も垣間見ることになった。
(何故あんなに深刻な顔をしたんだろうか。)
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